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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

これから就活する人のための裏ハローワーク

 これから秋になると、大学3年生による就職活動が始まります。そこで今回は、就活に役立ててもらうための話なのですが、ハローワークといえば、こういう業界がありますよ、と勧めるのですが、本稿はその逆に、こういう業界を選ぶなら覚悟を決めていきましょう、ということを述べるものです。
 その業界とは、第三次産業のことです。




 農業(酪農や畜産も含みます)、林業、漁業といった自然から収穫する産業を第一次産業、原料や材料を加工・組み立てして製品を作るのが第二次産業、このどちらにも属さない業種を第三次産業といい、主だったところをあげると、運輸、金融・保険、情報・通信、電気・ガス・水道、卸・小売業、飲食業、宿泊業、医療・福祉、教育、その他のサービス業、公務などがあります。
 今日では第三次産業の就業者数が最も多く、日本経済のかなりの部分を占めるまでに発達しているのですが、これらの業種は遅かれ早かれ、また程度の差はあるにせよ今後斜陽産業となっていくものと思われます。
 それはなぜかというと、勘の鋭い方はお気づきでしょうが、日本の少子化の流れが止められないからです。

 少子化がこのまま進行すると日本の人口が減り、国内の総需要が減っていきます。
 国立社会保障・人口問題研究所が発表している日本の将来の人口推計によると、2030年の人口は11,522万人、2050年では9,515万人になると予測されています(2005年は12,777万人)。今後20年間でおよそ1,200万人減り(マイナス10%)、40年後には3,200万人減る(マイナス25%)ことになります。
 例を挙げると、日本のサラリーマンが1年間に買うスーツの数は合計すると数百万着となります(正確な数字はわかりません)。ところが、人口が減っていくと、サラリーマンの人数も減っていくので、スーツの年間販売数も減っていきます。景気の動向により多少左右されるということはあるでしょうが、全体のトレンドとしては減少することに間違いはありません。それだけスーツ販売店の売上高は減少していくのですが、この変化はゆっくりと進行していきます。その過程を通じて、赤字に陥った店から閉店しては消えていくことになります。
 こうして、いつの間にか店や企業が少しずつ減っていきます。
 このような現象が、日本のすべての産業において起こるのですが、その進行がゆっくりしていて遅いために、なかなか気づかないまま、「相変わらず景気が悪いねえ」などといっているうちに、気づいたときにはもう取り返しがつかない、という状況になっているような気がします。
 
 総需要の減少とは市場の縮小を意味します。
 ところが、幸いなことに、第一次産業と第二次産業は、輸出をするか生産拠点を海外に設けることによって、海外に市場を求めるということが可能です。国内で売上げを落としても海外で売上げをつくることが不可能ではありません。現に、海外進出している企業が多数あることはご存じでしょう。
 ですから、これらの産業は「まだまし」なほうなのです。

 問題は第三次産業です。ここは、(ジャパン・アニメのような成功例もありますが)海外に進出するということが難しい業種の集まりです。ということは、第三次産業というのは今後数十年かけて就業人口が減っていく業界であると理解しておいた方がいいと思います。
 こういっても、ぴんと来ない方のためにいっておくと、今年就活する人が就職するのは2010年になります。その人たちが定年に達する2050年頃は、人口が今より25%減って売上高も減るので、会社の規模も平均して25%縮小しているということです。すなわち従業員数が今よりも25%は減らないと(もしくは給料が25%以上下がらないと)会社を維持することはできません。
 それでも会社に残れる人は運がいいほうかもしれません。人員整理に遭う人もいるでしょうし、運が悪ければ会社が倒産しているかもしれません。
 自分は公務員になるから大丈夫、とタカをくくっている人もいるでしょうが、公務員も実は、例外ではありません。
 人口が減れば所得税の税収が減ります。総需要が減れば間接税(たとえば消費税)の税収も減ります。公務員の人件費は税金から出ているのですから、税収が減れば、今と同じ規模の役所を維持していくことはできなくなります。効率が悪いという理由で、出先機関が統廃合されていくことでしょう。
 各自治体とも、おそらく新卒の採用者数を減らして、税収の減少に対応していくと思いますが、職員数の削減が税収の減少に対応しきれるかどうかはわかりません。おそらく、途中で、公務員の雇用を確保するために給料を大幅に下げざるを得ないという自治体が多数登場することと思います。

 これから就職する人は、まだ選びようがあるので救われるのですが、気の毒なのは既に第三次産業に就職して何年も経っている(年齢でいえば30歳代の)人たちです。
 この人たちが、将来勝ち残っていたいと考えるのであれば、確実な方法としては、余人を持って代え難いと周囲から思われる人間となり、その状態を維持することです。そのためには、絶えず自己を研鑽していくか、ライバルとなりそうな人間を(部下や後輩といえども)蹴落としていくしかありません。
 ところが、幸か不幸か、未来は今よりも確実にひどくなる、ということをあまり真剣に考えたことのないのが、この世代なのです(もっとも、それよりも上の世代にも、このことを真剣に考えている人はいないと思います。もっとずっと上の、今の社会を牛耳っている世代であるおじいさんたちの中にも真剣に考えている人はいないようです。むしろこの人たちは、そうなった頃には自分は生きちゃいないから関係ないもんね、と考えているように感じられのです。)
 その結果、未来を考えるにあたって、現在の状態が継続するという前提でしか思考することができないようになっています。
 ですから、30歳代の人たちで、現在有能な人ほど将来ビジネスの世界で勝ち残っていられないのではないかという気がしています。

 このことは、これから就職していく人についてもいえることです。これから衰退していく業界を、自ら選んで就職していくならば、のんびりしているわけにはいきません。時間はいくらでもあるとタカをくくって、必要なことを先送りにする人ほど、後で後悔する可能性が高いのです。
 
 自分の人生を左右するかもしれない選択のとき、というのは少なくとも3つあります。
 最初のそれは、高校を卒業して進学(あるいは就職)する場合、どこに住むか? であり、2番目のそれは、どこに就職するか? です。(3番目は、誰と結婚するか? であることはいうまでもありません。これらのことについては、いずれ改めて述べたいと思います。)
 就職も結婚もリセットできないわけではありませんが、一度決定したことにより、その後の自分の人生の方向性がかなり絞られてくることになります。
 これは、言い換えると、以後の可能性(と選択肢)が大幅に限定される、ということになりますが、そこから逃れることはできません。それくらいなら何も選択したくない、と思われるかもしれませんが、選択しないことによって却って選択肢が失われていく(それも時間とともに)という、これらは典型的な例でもあります。
 有利に選択できるタイミングというのは、やはりあるので、それを逃さないことを強くおすすめします。
 ただし、ご安心ください。就活を通じて行う選択がグッドであるかあるいはバッドであるか、答えが簡単に出るほど人生は短くはありません。
by T_am | 2008-08-15 01:13 | 社会との関わり

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