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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

借金時計

 インターネットのあちこちで「借金時計」というのが掲載されています。借金が増えていく様子が目で見て分かるというので、非常にインパクトがあります。財務省でも平成19年8月1日、ホームページに掲載したとのことですが、現在は掲載が中断されているようです。
 今回は、この「借金時計」について私見を述べてみたいと思います。



 「借金時計」の仕組みを解説しているサイトがあったので、まずそれをご紹介します。

「日本の借金時計」  http://www.takarabe-hrj.co.jp/clock.htm

 勝手に引用させていただくと、
「平成19年度末に772兆円だった長期債務が、平成20年度末には778兆円にまで膨れあがっていくことがわかります。

平成20年3月31日    平成21年3月31日  
約772兆円   → → → 約778兆円
     <約6兆円の増加>

 1年間で6兆円、日本の借金が増えるということです。
 つまり平成20年3月31日を借金時計の起点とし、そこに772兆円の数字をインプットします。そして一年後の平成21年3月31日には借金時計のカウンターが778兆円になるように時計のスピードを調整するのです。」


 つまり、過去1年間に増えた国と地方の長期債務残高の合計額を、1日あたりの増加額、1時間あたりの増加額、1分間あたりの増加額、1秒あたりの増加額を計算により求め、その分だけ毎秒増えていくという仕組みです。
 ちなみに、1秒あたりの増加額は約190,259円となるそうです。
 同じ考え方で、昨年に2千万円の住宅ローンを組んだ人の場合、1秒あたりの借金額を計算すると、約0.634円となります。
 この数字に何か意味があるかというと(せっかくのアイデアに水を差すようで申し訳ありませんが)1年間に新たにつくった借金の額を秒数で割り返したもの、という以外に何も意味はありません。借金の額が大きければ、1秒あたりの金額も大きくなります。逆に借金の額が少なければ、1秒あたりの金額も少なくなります。
 だから借金時計の見方としては、日本の借金というのは桁が違うんだなあ、くらいに思って眺めているのが無難なのです。
 他の考え方としては、借金には利息がついてまわるので、1秒あたりどれだけ利息が憑いているかを示す方法もあるかと思います。(1秒あたりの金額の増え方としてはこちらの方がずっと大きくなります。)
 ずいぶんと利息を払っているんだなと思いますが、それは金額の桁が大きいことからそう思うのであって、そのことは、2千万円の住宅ローンの利息を1秒あたりで割り返してみるとよくわかります。
 
 2千万の住宅ローンを抱えている人が、自分の借金の大きさに絶望しているかというとそんなことはありません。年収の数倍の借金でも、いつかは返せると信じているからです。
 その理由は、一括ではなく、分割返済が可能だからです。毎月何とか払える範囲内で返済すればいい、とうことになっているのが大きいわけです。
 日本の場合はどうかというと、778兆円の長期債務を一括して返済しなければならないというのではありません。一週間後に全額返済しなければならないとなったら大変ですが、実際には返済期限はバラバラなので、経済成長が今後も持続するという条件下ではそれほど悲観する必要はないのです。

 今からおよそ30年前の国鉄の初乗り運賃は80円でした。現在は130円(地方では140円)です。その伸び率は、1.625倍(地方では1.75倍)となります。

「戦後昭和史」  http://shouwashi.com/transition-fare.html

 その分、庶民の生活が苦しくなったかというと、個人の収入も伸びているので一概にはいえません。(確か30年前の大卒初任給の平均額は10万円以下ではなかったかと思います。)
 住宅ローンの例で説明すると、月収25万円の人が毎月7万円ずつ返済しているとすると、それは28%の割合となるので、ちょっと苦しいかもしれません。けれども、何年か経って給料が上がり、月収が30万円になると同じ7万円を毎月返済しても、その割合は約23.3%となり、少しは楽になっていることが分かります。
 つまり、借金というのは未来に返済するお金であって、その返済額が変わることはありません。けれどもその間に、収入が増えればその分だけ実質負担率は低減することになるのです。
 このように、経済成長が緩やかに続く限りは、借金は次第に目減りしていきます。(借金時計は、このことには触れていません。)したがって、あるべき政策目標は経済成長を揺るかに持続させることなのです。それが実現していれば、別に悲観することはありません。
 財政再建のポイントは、借金をできるだけ長期にわたって返済すること(その間の利息は低利であることが望ましい)。次に、その間の経済成長を促す施策を行うこと、なのです。(江戸時代に疲弊した財政の立て直しに成功した藩がとった手法がこれです。決して倹約が成功したのではありません。)大阪府もこれができるのであれば、橋下知事も楽なのでしょうが。

 ですから、個人が借金時計を作成して自分のホームページに掲載するのは自由ですが、財務省が同じものを掲載するというのは、人心を惑わし社会に害を与えるばかりです。にもかかわらずそれを行うというのは、財政が大変な状況に陥っているというイメージづくりによって、国民に対して、増税や社会保険料の増額はやむを得ないと諦めてもらおうという意図があるのではないかと勘ぐってしまいます。
 マスコミも、政府の発表を鵜呑みにして一緒になって大変だと騒ぐのでなく、もう少し冷静に考えるべきでしょう。新聞やテレビをみていると、政府と一緒になって、国民に対して増税や社会保険料・医療費の負担増は仕方ないんですよ、だから諦めてください、と呼びかけているように思います。マスコミも私企業である以上は利益を追求するのは当然です。そのために資本主義の健全な発展を願うのであれば、報道の視点は自ずと異なってくるはずです。
 今必要なことは、個人が安心して手持ちのお金を消費につぎ込むことができる社会にすることです。
 でも行われてきたことは逆のことです。
1.
 過去に政府が行ってきた恒久減税の廃止、医療費の自己負担割合の増加、社会保険料の増額、年金の掛け金の増額、消費税率のアップはいずれも個人消費に冷水を浴びせるものでした。
2.
 景気を刺激するという目的で行われてきた公共投資の中には、インフラとして価値のない事業もあります。また、グリーンピアのように大金をはたいて建設した施設を捨て値で民間に売却したという事例もあります。
3.
 その後トーンダウンこそしましたが、福田総理は消費税率引き上げについて「決断しなければならない大事な時期だ。」という発言を6月17日に行いました。
4.
 人材派遣を合法化したことで企業にとっては人件費を削るというメリットもあったでしょうが、その反面、大量の非正規雇用者を生み出し、ワーキングプアといわれる貧困層をつくり出す一因となりました。年収200万円以下では消費も限られますし、結婚もできませんし、子供もつくれないので少子化が一層進むことになります。このように、人材派遣制度が資本主義社会に与える影響は深刻なものがあります。
5.
 国民に負担を強いる一方で、二酸化炭素の排出権買い取りのために日本が支払う金額は数千億円が見込まれています。これははっきりいって環境省の責任です。

 やらなければいけないことがあるにもかかわらず、それに逆行することを次々と行ってきた政府と自民党というのは、よほどのバカか無責任な人の集合体であるように思います。

 借金時計は、それがどういうものであるかをきちんと説明したうえで掲載するのであれば、無害なものです。何の説明もなくカウンターが次々と増えていくのをみれば、数字の桁が桁だけに誰だってこれは大変だと思います。

 高級官僚は高学歴だけに、それを財務省のホームページに掲載するという悪知恵は働くのです。
by t_am | 2008-06-25 23:29 | 社会との関わり