変わる生態系
1.それまでみられなかった南方の動物が住み着くようになった。
2.これは平均気温が上がっているからである。
3.平均気温が上がる原因のひとつに温室効果がある。
4.温室効果をもたらすのは二酸化炭素であり、その大気中濃度が増えている。
5.したがって人類は二酸化炭素の排出量を削減しなければならない。
このうち、1と5はずいぶんと恣意的な論法だなと思うことがあります。そこで、今回はこのことについて考えてみたいと思います。
温暖化の証拠として、それまで日本では越冬できないといわれていた動物セアカゴケグモ(毒グモの一種)が日本の各地で見つかっているという事実があります。
また、ナガサキアゲハのように生育地域が北上しているという指摘もあります。
さらに沖縄のサンゴが海水温の上昇により白化しているという現象や関東の海でもサンゴがみられるようになったという報道もあります。
これらの現象が、温暖化の証拠であるというのは疑問の余地がありません。むしろ問題は、エコの推進者たちが、このような生態系の変化を聞かされることで一般大衆が感じる不安を利用しているところにあります。
セアカゴケグモという毒グモが大阪で見つかった。群馬でも見つかった。岡山でも見つかった。このように聞かされれば誰だって怖いと思います。
また、沖縄のサンゴといえば、美しい海の象徴のような存在ですから、これが白化しているといわれれば環境破壊が進んでいるのかなと心配になります。
これらの現象は温暖化の結果であるといわれれば、どうしたって温暖化が悪いことのように思ってしまいます。そのロジックが恣意的であると思うのです。
生態系が変化する原因は、何も温暖化だけではありません。人間が原因をつくることもあるのです。
そのひとつに、人間が持ち込んだ外来種の繁殖があります。アメリカザリガニ、ブラックバス、カミツキガメなどは、人間が日本に持ち込んだ外来種です。これらが逃亡・意図的放流・遺棄されることにより、地域の生態系に割り込んでは在来種を駆逐して繁殖していくことが知られています。
ブラックバスは流石に問題になりましたが、アメリカザリガニは日本に来たのが古いこともあって、日本のあちこちで見かけます。カミツキガメは千葉県の印旛沼で繁殖が確認されています。
次に、人間による品種改良があります。現在みられる馬は、実は日本の在来種ではありません。明治以降外来種との混血により品種改良されたものです。家畜や野菜は人間が品種改良してできた生き物なのです。当然、それまでは地球上に存在しませんでした。
第三に、人間による環境のつくりかえがあります。圃場整備に伴いあぜ道や水路をコンクリートで固め、農薬を撒くことで、田んぼに住む水棲生物は激減してしまいました。唯一佐渡に生息していた日本の在来種であるトキが死に絶えた(現在飼育されているのは中国から来たトキです)のは記憶に新しいところです。
もっと歴史を遡れば、日本人は弥生時代から灌漑を行い水田をつくることで、自然をつくりかえてきました。縄文時代には、水田というのは存在しませんでした。また、現在平野部となっているところの大部分は人間が住めるところではなかったのです。
こうしてみると、人間は自然に手を加えて自分たちが住みやすい環境につくりかえてきたということがわかります。また、そうでなければこれだけ人口が増えることもなかったのです。
もう一ついっておかなければならないことは、自然現象に本来有益有害はないということです。地球の歴史上絶命した生物種は数え切れないくらいあります。(別に数えた分けじゃないけど)。
そのうち、人間が滅ぼした種というのはほんのわずかです。この割合は、今後(多少は変わるかもしれませんが)ともそう大きな変化がないまま推移するものと思われます。すなわち、これからも絶滅する動物や植物があるでしょうし、それをいいとか悪いというのは人間の勝手であるということです。
自然現象は、人間の感傷とは無縁のところで起こっていきます。
現在の、身の回りの自然環境は人間がつくりあげてきたものです。けれども、長い目で見れば地震や洪水によって、それらは容赦なく破壊されていきます。それは人間の想像を超えたところなので、実際にそれを目の当たりにすると、人間が不安を感じるのは当然といえるでしょう。
見逃せないのは、自分に都合のいい事実だけを取り上げ、そのことで生じる不安につけ込んで議論を誘導しようとする手口です。
エコの推進者たちの結論はいつも同じです。「だから二酸化炭素の排出を減らさなければなりません。」というものです。その次に来るのは、たとえば、身の回りでできることとして、テレビやエアコンの主電源をオフにして待機電力を節約すれば、その分の電気を発電するための二酸化炭素が削減できます、というものです。現に使用電力量を二酸化炭素の排出量に換算する装置というのあります。
でも、本当にそうなのでしょうか?
我が家でテレビの主電源を切ったり、エアコンの設定温度を上げると、リアルタイムで火力発電所で燃やされる燃料がそれだけ減るということが本当に起こるのでしょうか?
まだ考えられるのは、エコによって社会全体の電力需要が減って、その実績に基づいて電力会社が発電計画を組み直すことで、燃料の消費量が減る、というものです。ただし、これにはタイムラグが存在しますし、個人のエコの努力がどれだけの成果に結びついたのか正確なところは分かりません。
本当に二酸化炭素の排出量を減らしたいなら、エアコンの設定温度を上げるなどというケチなことをするよりも、いっそのことエアコンを使わないという方がずっと効果があります。でも、エコの推進者たちはそうはいいません。それを口にしたとたんに消費者とスポンサーからそっぽを向かれるからです。
結局、ビジネスのための気休めをいっているに過ぎないのです。
エコの重要性を訴えるテレビ局が、日中と深夜の何時間ずつでも、「わがテレビ局ではエコのため放映中止時間帯を設けます。」と宣言するようであれば、信用してもいいと思いますが、残念ながらそのような動きは全くないようです。