セイヤさんへの手紙 Re:次は水
セイヤさんからもらったメールの中にあった次の一節は目から鱗が落ちる思いがしました。
>言ってはいけないということで誰もが言わないで避けているが、
>「水が 原油とかと同じ先物商品市場になる」日が来るだろう。
>微妙な言い回しで、水危機を言い始めている機関がいくつかある。
>記事もマニアックな情報から、少しずつ一般紙へ進出増えている。
そうか、水が金儲けになるのか。思わず感心してしまいました。
実は、今日読んでいた養老孟司さんの「こまった人」(中央公論新書)には、次のような記述がありました。
ちょっと長いけど、引用しますね。
日本で女性の平均寿命が延びだしたのは、大正十年頃からだという。前建設省河川局長だった竹村公太郎氏のデータである。それまでは男性の寿命の方が長かった。その後は女性の寿命は延びっぱなし。新生児の死亡率は下がる一方である。
大正十年になにが起こったか。水道水の塩素消毒である。水場の衛生管理が始まったら、女性はたちまち救われた。
最近の日本では、水が商品になっている現象をみることができますが、今の日本の繁栄をもたらしたものに、タダみたいな水と燃料が果たした役割は大きかったと思います。
このことは、日本だけにいえることではありません。
水と燃料の調達コストが低いということは、モノの生産が低コストでできるようになり、結果として消費が拡大することにつながります。消費が拡大すると供給する側も設備投資を行って、より多量で多様なモノづくりが行われるようになります。
こうして社会全体で蓄えられた富が増えることで、インフラも整備され、国民の生活は豊かなものになっていった、というのが産業革命以降の先進国の趨勢です。
ですから、今日の日本社会は、安い水と燃料を前提に成り立っているといえると思います。
現在の、NY原油先物市場の高騰は、オイルマネーがここに流れ込んでいることが原因であると誰かが指摘していました。そこで儲かった金を更に先物市場に突っ込むことで、さらに儲けることができるわけですから、当分原油の値段は下がらないと思います。(ブッシュ大統領はセブン・シスターズの味方なので、この人の在任中は石油の値段が下がるということは考えにくい)。
過去の文明(エジプト、メソポタミア、ギリシアなど)が衰退したのはなぜかというと、燃料である薪の調達ができなくなったからです。正確にいうと増えすぎた人口を支えるだけの燃料が調達できなくなったからなのです。
燃料の供給が減れば、当然その価格は上昇します。
僕には、今日の世界の状況が、いずれ燃料が調達できなくなる時代の前触れのような気がしてなりません。
地球温暖化は降水量の増加をもたらしますが、森林破壊が同時進行するとどうなるかというと、大雨による洪水が表土を流出させ、土地を砂漠化させます。(現実に砂漠の面積が広がっているという報告があります。)
セイヤさんが指摘するように、水が先物商品市場になる日もいずれやってくると思います。
なぜかというと、人間の社会にも「力のあるものが勝つ」というシンプルなルールが存在するからで、その「力」というのは、現代ではマネーにほかなりません。
マネーの争奪戦というのは、ゼロサム・ゲームにほかならないので、富めるものはますます裕福になり、貧乏人は徹底的に貧乏になるということを意味します。
貧乏人が増えすぎると、消費が減ってしまうので、社会全体の生産量も減少していくことになり、負のスパイラルが生まれます。
こうして世界は衰退に向かいます。
地球上に暮らす以上、人間も地球に養ってもらっているという事実を忘れてはならないと思います。どういうことかというと、地球上で人類が調達できる食料と水の量が、今いる人口を養えなくなるくらいに減少してしまうような時代がやってくるように思えるのです。
そうすると、どうなるかというと、調達可能な水と食料とバランスがとれるところまで人口が減っていくという現象が起こります。パンが10個しかないのに20人の人間がいる、という状態を想像していただいたらいいと思います。20人が仲良くパンを分け合って食べるのが理想的ですが、実際にはそんなことはあり得ません。飢えを満たす10人がいる一方で、10人の人間が餓死するということになるのです。
マネーの信奉者たちよ、お金を集めることもいいけれども、ほどほどにしておかないと、いずれお金で買えるものが何もない世の中になってしまうよ。お金だけあっても、お腹もふくれないし、喉の渇きもいやせないのだから。
こういうことをいっても、お金持ちの皆さんからは、貧乏人の負け惜しみと思われるのがオチでしょう。まあ、いいや。