マンガの効用
私は割と本を読む方だと思います。年間およそ100冊程度、といってもそのうち半分近くはマンガです。(それでわかったことは、読書によって知識は増えても、その人の賢さや人格は読書量とは比例しないということです。)
親が子供を叱るときに「マンガばっかり読んで、少しは勉強しなさい!」といういい方をするときがあります。それでもマンガを読んで啓発されるということもあるので、マンガを侮ることはできません。
物語を視覚化するという点で、マンガと映画(あるいは舞台)には似通ったものがあります。最近はマンガは下らないといって決めつける人は流石に見かけなくなりましたし、逆に、麻生太郎さんや養老孟司さんのようにマンガ好きであることを公言して憚らないオジサンが登場するようになりました。
小説とマンガの違いは、ごく大雑把に言えば、読者の想像力に訴えるか視覚に訴えるかの違いであろうと思います。
マンガであれば、登場人物の台詞には、そのときの感情がどのようなものであるかが一緒に描き込まれます。それは表情や身振り、擬音などによって表現されます。つまり、映画における役者よりは表現方法が多彩であるといえますが、そのことは作者に対して工夫する余地を与え、読者に対してはわかりやすさをもたらします。
実は、マンガがこれだけ普及した理由は、わかりやすさと値段の安さ(子供の小遣いでも買える)、マンガ雑誌に掲載されるコンテンツの豊富さにあると思っています。
マンガ雑誌(週刊誌や月刊誌)に掲載されるマンガは、ある程度物語が進んだところでコミック化され、単行本として販売され、ファンがそれを買い求めるというビジネスモデルが確立しています。
現に、発行部数がシリーズ累計1億冊という作品は「DRAGON BALL」や「名探偵コナン」など、いくつもあります。
(ジャンプ作品売り上げ推移)
http://www.geocities.jp/wj_log/rank/
また、連載が10年以上続いている作品も多くあります。たぶん最も連載期間が長いマンガ(現在も連載中のもの)は、1968年から始まった「ゴルゴ13」であろうと思います。少女マンガでは1976年に始まった「ガラスの仮面」ではないでしょうか。少年マンガでは「こちら亀有公園前派出所」が最長でしょう。どちらも同じ年に連載開始となりました。
日本のストーリーマンガの歴史は既に60年を超えています。この間の作家の技量は格段の進歩を遂げており、それだけ絵も複雑になりました。(このことは「ガラスの仮面」の初期と現在の線の細さを比べるとわかります。)
マンガの本質は娯楽です。だからといって小説よりも劣るというものではありません(小説の本質も娯楽だから)。
世の中には、マンガがなくなったら(小説や音楽がなくなると同じように)人生がそれだけつまらなくなったと思う人がいるのであり、私もその一人であることは間違いありません。
ただし、歳のせいか、最近は文字の多いマンガを読むのがちょっと辛くなってきたことも事実です。(小説ならばどうってことはないのですが。)
by t_am
| 2008-05-28 21:17