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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

小学校のかけ算の順序について

 昨日(平成25年1月25日)の朝日新聞デジタルにこんな記事が載っていました。「(ニュースQ3)小学校のかけ算 えっ?順序が違うと『バツ』」

http://news.asahi.com/c/abpCcrjjfmi8gmax

 8人のこどもに6本ずつ鉛筆をあげると全部で鉛筆は何本いるでしょう? というテストの問題があって、答えに「8×6=48」と書いたところ、バツになったという話が紹介されていました。小学2年算数の教科書には、かけ算は「『一つ分の数』×『いくつ分』」と書かれてあって、教科書会社に尋ねたところ、冒頭の問題に当てはめれば「1人あたり6本」×「8人分」、つまり「6×8=48」と書くのが正しい順序なのだと説明されたとのことです。逆に、「『8×6』では1人あたり8本、6人にあげることになる」のだそうで、読んでいて、「へえ、そんなものか」と思いました。
 朝日新聞のたいしたところは、それではそういう指導をしている根拠はどこにあるのかという疑問を持って、文科省に問い合わせをしたことです。念には念を入れてという姿勢ですね。
 ところが、意外なことに、「国として、『正しい順序』を決めてはいない」という回答があり、学習指導要領自体にも「順序」の記述はないとのことだそうです。
 そのうえで、かけ算の順序を教えることについての反対意見も集めているのですから、マスコミの中立性というのはこういうところで発揮されているのですね。反対意見として北海道大学東北大学の数学科の先生(黒木玄助教)は、「冒頭の問題は、鉛筆をトランプのように配れば『1巡あたり8本』×『6巡分』とも説明でき、『8×6=48』をバツにする根拠はない」と述べたうえで、「算数には様々な解き方がある。先生は児童とのコミュニケーションを大事にしてほしい」という意見を述べています。また、「『正しい順序』は分かりやすく教える手段のはずが、目的になってしまっている」という作家の川端裕人さんの指摘も紹介されています。
 たしかに、かけ算にはxy=yxという交換法則が成り立つのですから、順序にこだわりすぎる必要はないといえば、その通りだと思います。そんなことを考えながら読んでいたら、なんとこの問題は41年前の朝日新聞でも取り上げていたのでそうで、当時、同じようにバツをもらってきた小学生の保護者が学校に抗議したという話を紹介した後で、京大の先生による「(こどもの)思考の飛躍、冒険は大切なことで、どんどん生かす指導をしてやらなくてはいけない。親が学校に対し、学習内容などについて発言するのは大いにけっこう。まず担任の先生と率直に話し合って」という意見が掲載されていたのだそうです。
 朝日新聞の記者の結論は、この京大の先生の意見に軍配をあげており、要は、かけ算の順序にこだわる必要はないのではないかということなのでしょう。

 長々と、新聞記事について書いてきたのは、私だったら冒頭の問題をこう解くと思ったからです。

 6本/人 × 8人 = 48本

 あるいは、

 8人 × 6本/人 = 48本 と書いても同じことです。(分母と分子にある「人」が互いに打消し合うから)
 
 6本/人 というのは、1人あたり(鉛筆を)6本という意味で、時速40kmというのを、40km/時 と書くのといっしょです。
 時速40kmで2時間走り続けたときの計算式は、下記の通りとなり、分母と分子にある「時間」が互いに打ち消されるので、最後には「km」という距離の単位だけが残ります。

 40km/時 × 2時間 = 80km

 また、

 2時間 × 40km/時 = 80km と書いても同じです。


 大切なのは、その数字が持っている意味なのであって、単位をつけることで数字の意味をはっきりさせることができるのです。したがって、上の例のように、数字の意味が明らかにすることで、かけ算の順序にこだわる意味はなくなるということがおわかりいただけるとおもいます。

 にもかかわらず、教科書会社がかけ算の順序を指導したがるのはなぜかというと、(これは想像ですが)小学校2年生では分数を習わないので上の例のような考えかたを教えるわけにはいかないという事情もあるのかもしれませんね。

 6×8=48 に意味があるとすれば、つぎのような教え方をする場合です。

  6×8
=6本+6本+6本+6本+6本+6本+6本+6本
=48本

 つまり、かけ算というのは、左側の数(ここでは6)を右側の数の回数(ここでは8回)分足したのと同じだということす。そういえば、小学校のときに、そんな習い方をしたような記憶があります。(定かではありませんが…)
6本の鉛筆を8回足すということであれば、上のように6×8という書き方をすべきでしょうが、その場合「6本」というふうに単位をつけてやった方が親切です。さらにいえば、単位さえつけてやれば、8×6本でも間違いではなくなるのです。
 冒頭のテストでは単位をつけることまで求めていないのですから、6×8でも8×6でも、生徒が「1人あたり6本の鉛筆を8人分用意する」ということを理解して式を組み立てている限り、どちらも正解とすべきでしょう。わかっていないのは、教科書ガイドに書かれてあることを鵜呑みにする先生の方かもしれません。
 

付記
 1人あたり6本の鉛筆というのが、なぜ 6本/人 となるのかについては、次のように考えるとわかりやすいと思います。

 48本の鉛筆を8人のこどもで平等に分けると、1人何本の鉛筆をもらえることになるか?

(答え)
 48本 ÷ 8人 = 48本/8人 = 6本/人


付記2
 積分定数さんから頂戴したコメントにより、黒木玄助教を北海道大学の先生と書いたのは間違いで、東北大学にいらっしゃるというのが正しいということをご教示いただきました。私の不注意により、黒木先生には大変失礼なことをしてしまいました。訂正してお詫び申し上げます。
 なお、積分定数さんが示してくださったリンクには、教師用指導書(教科書ガイドのこと)の見本写真が掲載されています。どういう教育が行われているのかを知る材料になるので、興味のある方はぜひご覧ください。
 指導書の執筆者には申し訳ないのですが、執筆者が意図しているようなことに気づく小学生はたぶんいないと思います。仮に気づいた生徒がいたとして、「だから何なの?」と思ってしまいます。
 学校の先生が全部「指導書」に忠実な授業をしているのではないと思いますが、このような「正しいのは常にひとつ」という考えかたには正直言ってついていけません。ご苦労なことです。
by t_am | 2013-01-26 09:06 | 科学もどき