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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

なぜ失敗が続くのか

北朝鮮の「ロケット」打ち上げが失敗したとのことです。国力というのはこういうところに現れるのかもしれません。国民の飢えを解消できない国にとって「ロケット」(弾道ミサイルでもいっしょ)というのは、やはり高い買い物なのでしょう。

 北朝鮮は既に核兵器を持っていますが、持っているだけでは意味がありません。核兵器は敵国で爆発させなければならないのですから、どうやって核兵器をそこまで運ぶかということが課題となります。宅配便で送るわけにはいきません。そうなると空輸(?)しかないのですが、飛行機で運ぼうとしても、制空権を握っていなければ途中で撃墜されるだけなので、どうしてもミサイル(それも大陸間弾道弾)を持つ必要があるのです。

極東アジアに関係するすべての国は北朝鮮の「ロケット」の打ち上げに反対しており、なんとか思いとどまらせようとしてきました。けれども、北朝鮮は、ロケットの開発は国の主権に属することであるから他国の干渉を受けるいわれはないと主張し、実際に打ち上げを強行したわけです。

 興味深いのは、今回の打ち上げがなぜ失敗したかではなく、北朝鮮のミサイル発射実験はなぜ失敗が続くのか(2009年に続き、今回も失敗しました)、ということです。北朝鮮の技術力が低いのはわかっています。それよりも、なぜ技術力が低い水準に留まっているのか、というところに興味を引かれるのです。

 技術力とひと言でかたづけてしまうのは乱暴かもしれません。思うに、弾道ミサイルというのは(自動車と同じように)技術の裾野が広いのではないでしょうか。自動車を国内で生産するということは、そこで使われる全ての部品を国内で調達するということですから、製鉄業・機械工業・ガラス工業・電気工業・繊維工業などが発達していなければできません。どの国でも生産できるというものではないのです。同様に弾道ミサイルも国内生産するならば、そこで用いられる部品を高い精度で加工できる工場が国内に多数なければなりません。いいかえれば、それらの工場が喰っていけるだけの仕事(需要といってもよい)が国内になければ、産業として成り立たないのです。

 無理を重ねれば、試験的に1基の弾道ミサイルを製造することはできるかもしれませんが、ある程度量産できる体制を整えないと、アメリカの武力に対する抑止力にはなりません。ところが、それを実現させるには産業のインフラが整っていないのだろうと推測するのです。

 どこに飛んでいくか分からないミサイルならばすぐにでも配備できるのでしょうが、アメリカが脅威を感じる弾道ミサイルが実戦配備されるまでには、まだ相当高いハードルがあるように思われます。
by t_am | 2012-04-14 06:55 | その他

by T_am