民衆は裸の王様
しかし、オバマ大統領は今までこれといったミスを犯したわけではなく、ブッシュ時代のツケを清算することに追われているというのが実際のところですから、今回の選挙結果はいささか気の毒な気がします。
アメリカでこれほどまでに格差が拡大したのはブッシュ前大統領のときの政策に起因しています。それを一言でいってしまうと、「何事も市場に委ねればうまくいく」というものでした。
しかし、実際には市場に委ねてはいけない分野があるということがわかり、そのために高い授業料をアメリカ国民は支払うことになったのです。
医療保険に入っていながら、病気になってもなんだかんだと難癖をつけられて保険が下りない(その方が利益が増えるので保険会社の評価が高くなる)ために、破産状態に陥った人が激増しました。(入院費が払えないために、アメリカでは日帰り出産ということも行われているそうです。)
そういう状況を招いた責任は誰にあるのかについては口を拭って、アメリカでは「ティーパーティ」という保守派による運動が行われてきました。民主党が目指す大きな政府は増税につながるというキャンペーンは一定の効果を上げているようです。
また、大統領選挙でオバマ氏の支持に回った女性層が今回は動かなかったということですから、回復しない景気・高いままの失業率に対する不満の矛先がオバマ大統領に向けられたのだと考えられます。
オバマ大統領は有能で誠実な政治家であると私は思っています。どこかの国の総理大臣経験者のように、自分の理想のために現実を無視するようなことはありませんし、どこかの国の現職総理のように深く考えないまま発言するということもありません。
ブッシュが8年かけてダメにした国を2年かそこらで回復させるというのはどう考えても無理な話です。にもかかわらず、アメリカ国民はオバマ大統領を責め、そういう状況を招いた共和党に投票したのですから、まことに無知でお人好しの国民性を持った国であると思います。
では日本はどうかというと、無知でお人好しの集団が民主党であるといえます。中には無知でもなくお人好しでもないという政治家もいますが、大半はそうではありません。
本日のニュースで、総務省は、地方税と国税に分かれている自動車税を一本化し、新たに環境自動車税を創設する考えであることを発表しました。「環境」という枕詞をつければ国民はおとなしく金を払うというふうに官とマスコミがいっしょになって国民を煽動しているのが今の日本の姿です。その仕上げが排出権取引であったり、環境税や環境自動車税のような新たな税負担です。
これらは、いってみれば幻に対してお金を払うようなものですから、何のプラスにもなりません。排出権をどれだけ購入しても、また環境税を払っても世界全体でのCO2の排出量の増加は止まりません。人類が化石燃料に依存している限り、経済が成長すればそれだけCO2は増加するのです。
そういう単純な理屈を隠して、CO2を減らすことが崇高な行為であると吹き込んでいるのが官僚であり、マスコミです。正しい情報を知らされずに偏った情報だけ与えられたのでは,人は誰でも判断を誤ります。裸の王様という寓話の主人公は、現代では民衆なのかもしれません。