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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

ネット選挙(3)   参院選挙候補者のホームページをみる(2)

 今回は、自民党候補者のホームページをみることにします。(読者も、ご自分の選挙区の候補者のホームページを一度チェックされるといいと思います。)
 今回取り上げるのは、県会議員を15年務め、このたびの参院選に立候補したという人です。ホームページに記載されているプロフィールは、経歴の他にどんな人柄なのかを知ってもらおうという努力の跡があり、その点前回取り上げた民主党候補者とは雲泥の差であるといえます。
 個人のブログが解説されていたのでそのリンクを辿ってみると、議員としての活動の記録といってよいものであり、今年の3月以降は写真付きでほぼ毎日更新されていることがわかります。選挙を意識したのかもしれませんが、かなりまめなひとなのだなと思います。しかしながら、その内容はどこそこの会合に出席したという事実が淡々と書かれているのみで、この人の考え方が伝わってこないのは残念に思います。
 前回取り上げた民主党候補者も含めて、現職議員というのはかなり多忙なのだろうと思いますが、それでも暇を見つけては自分の考えを発信していくということをしていかないと、ネット選挙の時代になったときに存在感がかすんでしまうのではないかと思います。この候補者はまだ若い(51歳)だけに、もったいないですね。

 次に、「政治活動」というリンクを辿ってみると、この人が過去にどんな役職についたかが記載されています。いわば経歴をすこし細かくかいただけのものであり、政治信条や過去にどんな条例の制定にかかわったとかいう記録がないのが残念です。
 選挙公報や政見放送というのは有権者にとっては受け身の情報であり、その機会を逃せば手に入れることはできません。ところがネットでの情報発信は、有権者がその気になればいつでもアクセスできるという点が決定的に異なります。つまり、ネットというのは、きちんと仕事をしている現職議員にとって自分の実績をアピールするうえでとても効果的なツールであるといえるのです。
 昨日取り上げた民主党候補者も、今回の自民党候補者もそのことに気づいていないのかもしれません。現職議員が自分の実績をネット上でアピールしないのは、その重要性に気づいていないか、あるいはもともとたいした仕事をしていないかどちらかです。会合に出席したり、人に会ったりするのは議員の仕事の中でも避けて通れない部分であると理解はしますが、それが議員の仕事の主流だと思われたのでは困ります。会合に出席したり人に会うというのは手段であって、目的ではないはずです。
 いろいろな会合に出席しているというアピールは精力的に仕事をしているというつもりなのかもしれませんが、私には本末転倒であるとしか思えないのです。

 さて、肝心の政策ですが、この候補者の場合、選挙運動用の個人ビラをPDF化しており、それを見てもらえばいいということなのでしょう。このあたりわざわざサイトをつくるということをしないだけコストをかけないという工夫のあとが伺えるようです。政党本部がおなじことをしたら手抜きといわれるでしょうが、個人なのですから事情を忖度してあげるべきなのかもしれません。
 そこで、このビラから「主な施策」というのを引用してみます。

・円高の是正とデフレ経済からの脱却
・必要な社会資本整備予算の確保
・地域を支える建設産業の経営改善
・物づくりへの支援策の充実強化
・産地ブランドの育成・強化
・北陸新幹線建設促進
・離島航路への支援
・佐渡航空路の機能強化
・子育てにかかる経済的支援の充実
・父子家庭支援策の充実
・地方の勤務医不足の解消
・福祉、介護人材の確保に向けた処遇政策
・県内情報の発信機能の強化
・トキの野生復帰に向けた生息環境整備の促進
・トキの安全な飼育環境の確保に向けた対策の推進
・国際観光推進のため、中国人の訪日手続きの緩和
・真の地方分権の推進
・拉致事件の解決
・北朝鮮の核やミサイルを各国と連携して阻止
・家族の絆、社会への奉仕の精神を育む施策の推進
・学校施設の耐震化に係る補助制度の弾力化
・警察官の増員
・非主食用米の生産に対する支援策の充実強化
・農林水産業が果たす多面的機能の評価と適切な支援
・国産農林水産物の消費と輸出を倍増し、競争力のある攻めの農林水産業を実現
・農山漁村の基盤整備に必要な財源の確保
・国産木材の利用促進による持続可能な森林経営の実現
・資源栽培漁業の推進


 なんと28項目もあり、書き写すだけで疲れました。どれもこれも言わんとするところはわかるような気がしますが、よく考えるとやっぱりわからないというのが正直な感想です。たとえば、「地域を支える建設産業の経営改善」とあるのは何をするつもりなのでしょうか。一企業の経営改善というのは経営トップの役割であり、決して不可能なことではありませんが、産業全体の経営改善というのはどうやれば可能になるのか、私には検討もつきません。
 さらに、「国産農林水産物の消費と輸出を倍増」とありますが、消費を倍増するには、原理的には人口を倍にする以外にありません。補助金を大量に投入すれば輸出量を増やすことはできますが、それによって価格を下げたからといって消費をアップさせることには限界があるからです。国民がおしなべて胃拡張にでもならない限り、食事の量が倍になるということはありません。したがって、この項目も意味不明な政策であるといえます。
 また、「北朝鮮の核やミサイルを各国と連携して阻止」とありますが、阻止するのは「核やミサイルの開発」なのか、それとも「核やミサイルの使用」なのかによって、対策はまるで異なったものになります。
 ついでに申し上げておきますと、「国産木材の利用促進」とありますが、これは補助金を導入するという意味でしょう。しかし、補助金を支給することによって持続可能になる経営というのは、既に経営として破綻していると思いませんか? 国産木材の利用を促進するというのならば、輸入木材に高率の関税をかけるという方法もあるはずです。しかし、それを行うと、報復として日本が輸出する工業製品に高率の関税がかけられる恐れがあるのでできないという事情があるのです。それならば、日本の国土を維持するために森林の保全は大事なのだから赤字覚悟で補助金を支給するという文脈で政策を展開する方がよほど誠実な物言いだと思います。それをしないのは、穿った見方をすれば、失礼ながらあまり深くものごとを考えていないのではないかと思われるのです。

 政治家とは言葉を操る職業なのですから、自分の政策を箇条書きにして終わりというのは自殺行為です。箇条書きの政策というのは、論文で言えば見出しのようなものであり、本文が別にあって然るべきでしょう。スペースの都合上、選挙用ビラや選挙公報、政見放送では簡略化した表現しかできないかもしれません。しかし、ネットではそのような制約は一切ないのですから、そういう努力をすべきでしょう。それをしないのは、必要性を感じていないか、そこまで深く考えていないかのどちらかであると私は思います。

 さらに、ざっとみて、ローカルな課題が多いということに気づきます。そのことを否定するものではありませんが、国政の場で取り上げる問題なのかというと、やはり疑問が残ります。この候補者が主張する「真の地方分権」が実現した暁には、いずれも地方の役割となるものばかりです。
 そういう視点でこれらの政策をみると、この候補者が当選した際には、地元への利益誘導を第一義に活動する国会議員になるのだろうなという気がします。かつて、そういう国会議員が多かったために、各地で赤字のローカル線や高速道路、箱物がつくられたわけです。
 この候補者は、それと同じことをやろうとしているのだろう。そんな感想を持たざるを得ないホームページです。

 次回は、無所属で出馬する現職参議院議員のホームページを取り上げたいと思います。

 
  
by T_am | 2010-06-28 23:23 | その他

by T_am