オーケストラ!
ロシア・ボリショイ交響楽団の主席指揮者であり天才と呼ばれながら三十年前の事件によって解雇され、今は劇場の清掃員として働くアンドレイ・フィリポフ。ある日清掃中のアンドレイは1枚のFAXを目にします。
それは、演奏をキャンセルしたサンフランシスコ交響楽団の代わりに、パリのプレイエルに出演するオーケストラを2週間以内に見つけたいという内容でした。それを見たアンドレイはとんでもないことを企てます。それは、三十年前の事件によって解雇された同じボリショイ交響楽団のメンバーを集め、「ボリショイ交響楽団」としてパリで演奏することでした・・・。
なんとも秀逸な設定ではありませんか。
ボリショイ交響楽団を騙る詐欺といえば詐欺なのですが、この詐欺が成立するには、実際にパリに行って聴衆の面前で演奏しなければならないのです。
かつての一流音楽家たちとはいえ、三十年間のブランクは大きなものがあるはずです。本当にうまく演奏できるのか?
しかも主人公のアンドレイがそうであるように、社会の底辺で暮らしているかつての仲間たちがパリに行くには高いハードルをいくつもクリアしなければなりません。ビザは? パスポートは? そもそもパリまで行く飛行機代はどうするの?
こういう設定でつくられた映画が面白くならないはずがありません。
アンドレイがパリに行かなければならない理由(それがこの物語の核心になっているので、ここでは触れません)もちゃんと設けられており、笑いがあって涙があり、しかもクラシックの名曲の数々が劇中で使われているので、娯楽作品としては実に贅沢な仕上がりになっています(実は、まだ観ていないのですが)。
観てもいないのになんでこんなことがいえるのかというと、おせっかいな放送局があって、この映画のストーリーを面白おかしく紹介してくれたからです。
観てよかったと思える映画は少ないのですが、この「オーケストラ!」は(たぶん)その一つであろうと思います。
ただ、残念なことに上映予定の映画館が少ないのです。非常に少ない、というよりもこれは極めて少ないといってよい状態です。
ハリウッド映画が偏重されているというのは聞いていましたが、こういう「いい映画」をみせるという努力をしないと、映画産業はますます斜陽化していくことになると思います。
ちなみに、私が住んでいる新潟市では「オーケストラ!」の上映予定は今のところありません。しくしく。
オーケストラ! 公式サイト