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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

セイヤさんへの手紙  政治家の役割(してはいけないこと、しなければならないこと)

 日米間の密約に関する考察の続きです。

 以下は、昨日のasahi.com からの引用です。


 衆院外務委員会(鈴木宗男委員長)は10日の理事懇談会で、日米間の密約問題を調査するため、19日に参考人質疑を行うことを決めた。外務省元事務次官の斉藤邦彦氏と元条約局長の東郷和彦氏、元運輸相の森田一氏、元毎日新聞記者の西山太吉氏の4人から3時間にわたって話を聞く。

 また、民主、社民、国民新党の与党3党の国対委員長は10日、国会内で会談し、密約問題で、歴代の首相、外相経験者を衆院外務委員会などに参考人招致することで一致した。

 斉藤氏は1987年から2年間、密約を知り得る立場である条約局長を務めた。東郷氏も98年から1年間の条約局長時代、持ち込み密約関連の資料を整理したと朝日新聞の取材に証言している。

 森田氏は旧大蔵省の課長補佐時代に、沖縄返還に際して米側が本来支払うはずの土地の原状回復費400万ドルの負担にかかわったと証言。西山氏は、この沖縄返還時の密約に関する機密電文を特報した記者だ。

 歴代首相、外相経験者の参考人招致を決めた民主党の山岡賢次国対委員長は「真相を究明して国民にもお知らせしていく」と述べた。必要があれば元職の首相、外相経験者も参考人として呼ぶ考えも示した。また、国対委員長会談では、外交文書の保存や公表のルールについて国会で議論していくことも決めた。

http://www.asahi.com/politics/update/0310/TKY201003100331.html


 長くなって恐縮ですが、もうひとつ引用します。こちらは本日のasahi.com からの引用です。


 外務省の政務三役が与党議員から意見を聞く外務省政策会議が11日開かれ、日米間の密約問題が議論された。岡田克也外相は、19日に衆院外務委員会の参考人質疑に立つ元外務官僚の守秘義務の解除について、「委員会として要請された時点で考えたい」と述べ、検討する意向を示した。

 外務委は斉藤邦彦・元事務次官、東郷和彦・元条約局長への質疑を予定しているが、公務員は退職後も、職務で知り得た秘密を明らかにしてはならない守秘義務が課せられている。ただ、国家公務員法は大臣が許可した場合は公表できると規定しており、外務委員長の鈴木宗男氏が「国民に真実を明らかにするため」として許可を求めた。

 また岡田氏は、密約が政権交代後も効力があるかどうかを問われ、「政府と政府の約束なので直ちに失効するわけではない」と述べ、政権交代が密約の効力を失わせるわけではないとの認識を示した。

 核を搭載する米艦船や航空機の日本への寄港・領海通過の可能性についても取り上げられた。岡田氏の「90年代の米国の政策変更で(核が)持ち込まれることはなくなった」との説明に対し、出席議員からは「納得がいかない」との意見も出された。

 さらに、「自民党政権下でうその政府答弁の起案にかかわった外務官僚を処分すべきだ」との指摘も出たが、岡田氏は「悪いのは外務大臣や総理大臣だ」として、処分しない考えを示した。

http://www.asahi.com/politics/update/0311/TKY201003110256.html


 最初のニュースと後のニュースを続けて読むと、参考人質疑に呼ぶ外務省OBに関しては守秘義務を解除し、さらに、密約があったという事実を認めたとしても免責するつもりでおり、「だから、本当のことを言ってもいいんだよ。」というメッセージを送っていることがわかります。
今回招致が決まった四人は出席の意向を示しているそうですから、密約の存在が事実であったと証言するつもりでいるものと思われます。
 これは推測ですが、外務省OBの三人は、密約がありながら嘘をつかなければならなかった状況の方がおかしいと考えており、事実をはっきり証言することによって、この国の姿を正常なものにするきっかけにしたいと考えているように思います。
 また、元毎日新聞記者である西山氏を招致する理由はどこにあるのかを考えると、西山氏を被害者としてクローズアップさせたいのかな、とも思います。外務省機密漏洩事件として裁判になったこの事件は、西山氏が不倫関係を利用して機密文書のコピーを入手したことが暴露されたことによって、密約の存在から取材方法が不適切であったというところに問題がすり替わってしまい、密約の追求がうやむやになったという経緯があります。その点西山氏は政府と検察の陰謀の被害者となったわけですから、外務委員会はそのことを取り上げるつもりなのかな、とも思います。

与党の狙いはその後に予定している歴代総理大臣と外務大臣経験者の参考人招致です。これは「お前、嘘をついていただろう! けしからんじゃないか!」という図式をつくりあげるためのイベントであって、参議院の選挙前に自民党を叩いておくことが真意でしょう。

外務省OBが密約の存在を認め、過去の核持ち込みに関する政府の答弁が嘘であったことを認める。
西山氏は政府による隠蔽工作の被害者である。

こういうお膳立てをしておいて、歴代総理と外務大臣経験者を呼びつけるわけですから、これは魔女裁判と同じです。というのは、彼らを有罪にするつもりで呼びつけるからです。

しかし、情報公開の趣旨からいって、こういうことを政治家がしてはいけません。なぜなら、外交文書の公開とは、政府には国民に明らかにできない機密があるという前提で設けられる制度だからです。今は明らかにすることができないけれども、時間が経ってその機密が過去のものになったときに公開してその評価を後世に委ねるというのがこの制度の趣旨です。そのときに評価するのは政治家の役割ではありません。第三者が公平な目で評価し、議論する中で、しだいに一定の方向に評価が固まっていくだろうというものです。政治家は、それを参考に以後の政策立案に活かしていくというのが筋であって、政治家が評価する作業に荷担したのでは党利党略に利用されるからです。

機密というのは存在そのものを明かすことはできないわけですから、「こういう機密があるということですが間違いありませんか?」と質問されたら「お答えできません」と回答するわけにはいきません。「答えられない」と言った瞬間に機密があることを認めたことになるからです。したがって、「そのようなものはございません」としらを切るのが唯一許された回答になります。
それを後になって、「お前、あのとき嘘をついていたじゃないか! けしからん!」ということを許したのでは、機密など維持できないことになります。

既に密約があることが有識者委員会の報告書で明らかになっているのですから、これ以上「真相を究明して」何をするつもりなのでしょうか?
それよりも、当時密約を結んだことが妥当であったかどうかを議論すべきでしょう。それによって、日米同盟を維持するのか、それとも強化するのか、あるいは解消に向けて舵を切るのか議論するきっかけにすべきです。
岡田外相は「90年代のアメリカの政策変更で核が持ち込まれることはなくなった」と述べていますが、それは単なる憶測に基づく詭弁です。
歴代総理大臣と外務大臣を嘘つき呼ばわりするのであれば、その前に、アメリカ政府に対し「日本は今後も非核三原則を堅持していくので、かつての約定(密約のこと)は破棄する。いかなる理由があろうと日本に核を持ち込んでもらっては困る。」と通告すればいいのに、そういう気配はありません。
つまり、アメリカの手前今更密約を破棄することもできないので、時代が変わってもはや実効性を失っているということにしてこのままうやむやにしてしまおうというのが民主党政府の考え(有識者委員会の結論もそうでした)であると想像できるのです。ところが、せっかくの機会だからこの際徹底的に自民党を叩いておこうということから、今まで自民党は嘘をついていた、という一点に問題を絞ろうとしているようです。

他人がついた嘘には容赦しないけれども身内の嘘には見て見ぬふりをするというのがこの政党の特徴です。こういうのを欧米人はダブル・スタンダード(二枚舌)と呼ぶのではありませんか?

「アメリカによる事前通告がない以上、核の持ち込みはなかったものと考えられる」という答弁を行ってきた自民党は、(ほかにも理由がありますが)最終的に国民から信用されなくなりました。
民主党も、票目当ての工作にうつつを抜かしているといずれ信用されなくなってしまいます。すでにその兆候があらわれていることは世論調査から伺えるのですから、とっとと「今やるべきこと」に取り組んだらどうかと思うのですが、そういうことには気が回らないようです。
by T_am | 2010-03-12 01:04 | セイヤさんへの手紙

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