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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

大言壮語

 鳩山首相が環境サミットで、日本のCO2の削減目標を1990年対比で25%減とすることを表明しました。ただし、日本だけでが高い目標を掲げても効果は低いので中国やインドの参加も促し、それらが前提であるといういい方もしています。
 京都議定書では、日本の削減目標は90年対比マイナス8%でしたから、またずいぶんと思い切った目標を掲げたものだと思います。これを気宇壮大とみるか、あるいは大言壮語とみるか、はたまた荒唐無稽とみるかは人によって異なりますが、鳩山総理をはじめとする民主党の皆さんは大真面目であることに間違いありません。
 何度も書いてきたように、CO2には温室効果があることがわかっていますが、それが地球温暖化の原因であると言い切るほどに人類の科学はまだ進歩していません。過去に何度も地球をおそった寒冷化(氷河期)の原因だってよくわかっていないのです。
 ですからCO2を何パーセント削減するかというのは、もはや科学の議論というよりも各国の政治の問題であると理解した方がいいと思います。

 CO2削減を唱える人というのは、実はそれぞれ様々な思惑を持っているといってもよいでしょう。一番多いのは、地球温暖化防止の為にはCO2を削減しなければならないと善意で考えている人たちです。それ以外に、CO2削減は金(ビジネス)になると考えている人たちもいますし、石油資源確保の材料にしようとしている人たちもいるようです。
 そんな中で、政治がこの問題をあつかうということは、政治家(そして官僚)達は純粋な善意で物をいっているのではないということを知っておいて損はありません。もしも、純粋な善意で動いている政治家がいるとすれば、失礼ですが政治家としては無能であると申し上げざるを得ません。もっと優先順位の高い課題がいくらでもあるからです。

 CO2削減が金(というと見も蓋もないのでビジネスということにします)になるとはどういうことかというと、まず考えられるのが排出権取引です。これはCO2を排出する権利というのを認定して、それを売買できるようにするというものです。いってみれば架空の権利ですから、そういうものが長続きするはずがありません。排出量を削減できなかった国に対する懲罰的制度だといっても、あれは前政権が勝手に決めたことでありわが国はCO2削減の枠組みから離脱する、といってしまえばそれで終わりです。
 CO2削減をビジネスとして捉える考え方は、むしろ、新しい技術の開発と設備の導入による経済効果を期待するものです。
 新しく開発された技術と設備を導入して(つまりお金を払って)も、それが今まで以上の利益をもたらすのであれば全体での経済効果はプラスとなります。ソーラーパネルを屋根に取り付けて家庭でも太陽光発電をとりいれたら、電気料が大幅に安くなったというのであれば効果はあると思います。このときに、得をした電気代の何年分でソーラーパネル設置費用が回収できるかということも大事です。運が悪ければ、回収に20年かかってその間にソーラーパネルが壊れてしまったということもあるかもしれません。この場合、その人にとってはマイナスの効果をもたらすことになります。
 現在、改正省エネ法によって、小売業などの事業所でも設備の入れ替えが検討されるようになりました。特に使用電力に大きな割合を占める照明と冷蔵庫、空調などが対象となるようです。
 電球型蛍光灯は白熱電球に対して寿命は4~8倍、消費電力量は4分の⒈以下ということから、世界的に切換が進みつつあります。現在では安い東南アジア製のものも出回っています。これに対し、最近注目されつつあるLED照明は蛍光灯よりもさらに寿命が長く(およそ5倍)、消費電力量も少ない(白熱電球対比5分の⒈)というものです。難点はまだ値段が高いというところにあり、今後量産が進むにつれて安くなっていくものと思われます。
 また、火力発電所もつくられた年代によってエネルギー効率にばらつきがあります。古くなっている火力発電所に最新鋭の設備を導入すればそれだけ効率は高まり、CO2の排出量はそれだけ減ることになります。
 このように、新しい技術を開発して、それを各企業や家庭に導入してもらえれば、開発した企業は利益を上げることができますし、購入した企業や家庭にもメリットがあるならばみんながハッピーでいられるということになります。したがって、CO2削減策を進めることは経済活動にとってプラスになるという期待も成り立つのです。だから、政治問題となるのでしょう。
 鳩山総理が90年対比25%削減を打ち出したのは、「日本もやるのだからあなたの国でもやりなさい。そのための技術と設備は日本が売ってあげますよ。」という深慮遠謀に基づくものであれば、政治家としてたいしたものだといわざるを得ません。

 断っておきますが、これらの動きによってCO2の削減ができたとしても、それが地球の気候にどのような影響を与えるかは誰にもわからないということを忘れてはなりません。地球の気候には長期的な傾向(温暖化と寒冷化)と短期的な現象(冷夏、猛暑、暖冬、豪雪、干ばつ、集中豪雨、颱風、竜巻など)があり、私たちの生活に被害をもたらすのはもっぱら短期的な現象の方です。現に、温暖化といわれていながら今年のように冷夏となる年だってあるわけですが、それを回避することは今のところ人類には不可能です。仮に、CO2の削減が温暖化阻止につながったとしても、相変わらず異常気象は発生するでしょうし、そのたびに何らかの被害が発生するのは避けられないのです。

 ちょっと意地悪ないい方になりますが、自分が稼いだお金を人間はどうするかというと、貯金をしておくか使ってしまうかの二者択一となります。エコを推進して経費を節減しても同じことです。
 節約して得たお金を使ってしまえば、それだけ新たなCO2が発生することになります。ドライブに行けばその分の燃料を消費するわけですし、買い物をしても、その製品を作ったり運んでくるためにCO2が発生しているのですから、消費が拡大すればその分CO2が増えるという道理です。
 では、使わずに貯金しておけばいいのではないかというと、そのお金は国債という形で国に吸い上げられるので、何らかの公共事業に使われることになりそこでもCO2が発生します。
 これは企業においても同じことがいえます。 
 新しく開発された技術に基づく設備を導入してCO2と経費を節減できたとしても、その分の利益が労働者に配分されたり投資にまわされることによって新しい経済活動に費やされれば、その分CO2が新たに発生することになります。もっとも、日本企業は自己資本比率が低いといわれているので、利益が増えても労働者に配分せずに内部留保にまわす可能性があるのですが・・・。
 このようにみてくると、CO2の排出量は経済活動の規模に比例するということがわかります。CO2の排出量を減らそうと思うならば、経済活動を縮小する以外に方法はありませんが、そんなことをいう政治家はいません。経済活動が拡大し続けなければ繁栄はないというのが資本主義の前提だからです。

 以上のことから、鳩山総理の大言壮語が日本国民をハッピーにしてくれるのかどうかは今後の成り行きを見なければわかりませんが、もしかすると私たちを不幸のどん底に突き落とす可能性があることも否定できません。最悪のシナリオとしては、削減目標が達成できなかったために、途上国から排出権を購入する羽目になり、その財源として炭素税を国民が負担するというものです。家計レベルでは可処分所得が減ることになるので、それだけ貧乏になるということでもあります。

 それにしても、その国のCO2の排出量というのはどうやって計算するのでしょうね。本来測りようのないものなので、何らかの計算式に基づいて決めるのだと思いますが、計算結果が不確かなものであることは間違いありません。そういう曖昧なものに一喜一憂するというのもバカげたことだと思います。
by T_am | 2009-09-25 12:44 | その他

by T_am