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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

民主党政権の矛盾

 民主党の公約概要をご覧になりましたか?

・中学を卒業するまで子ども一人当たり年間31.2万円の手当を支給する。
・公立高校の授業料を無料化する。
・年金の課税を見直して年金減税を実施する。
・高速道路を無料化する。
・中小企業の法人税率を11%に引き下げる。
・すべての労働者に雇用保険を適用する。
・職業訓練期間中、月10万円の生活手当てを支給する。
・医師や看護師の不足を解消する。
・介護従事者の賃金を引き上げる。
・学校や病院の耐震化を加速する。
・住宅用の太陽光パネルを設置すると半額を助成する。
・環境に優しい自動車に買い換えると最大で30万円の補助金を支給する。
・農業、林業、畜産業、水産業に所得保障制度を導入する。

http://www.dpj.or.jp/flyer/flyer200906/index.html


 こうしてみると、麻生政権以上の大盤振る舞いをすると民主党は約束していることがわかります。しかし、本当にそんなことができるの?と疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。今年早々と決まった補正予算を執行するためにおよそ三十兆円という赤字国債の発酵が必要であるといわれていました。それ以上の大盤振る舞いを、単年度ではなく数年間に渡って行うにしても、しようという以上、最大の課題はその財源をどうするかということに尽きるのですが、民主党は官僚主導の政治をやめ、予算をゼロベースで見直すことで可能になると説明しています。
 なるほど、理屈は確かにその通りであり、特に官僚主導はやめなければならないということには同意するのですが、民主党の目指す政府のあり方と矛盾があるように思えてなりません。
 これらの政策をみてわかるように、民主党のが目指すのはいわゆる「大きな政府」です。「大きな政府」というのは、「小さな政府」(自由主義に基づき政府が市場に介入するのを最小限に抑えて、個人の自己責任を重視する。したがって、公共サービスを提供する機関であっても民営化しようとすることがある。小泉改革はこの「小さな政府」を目指したものであるといえます。)に対する反対概念です。簡単にいうと、政府が市場に介入することで総需要をコントロールして経済成長を持続させ、同時に国民生活の隅々まで面倒を見るというものです。国民に対し高福祉を実現しようするものですが、その代わり国民は高負担を強いられることになります。
 民主党の財源確保の主張の根底にあるのは、現在の官僚制度という予算の執行制度は無駄が多いという認識です。このことにも異論はないのですが、官僚制度の改革に手をつけるには、少なくとも各省庁の局長以上の役職者は政治家が自由に任命できるようにしなければなりません。ということは罷免することも自由にできるということになるので、議院内閣制度の下では政権党による行政府の支配が徹底することになり、プラス面も大きい代わりにマイナス面も大きくなります。
 その次に、国が行っていることを財源とともに大幅に地方に移譲することです。たとえば教育行政は国がやらなければならないというものではなく、地方に任せた方がかえって国益に叶うと思っています。
 こういったことをやろうとするには、政党の中に相当の調査企画能力が備わっていなければなりません。長年にわたった自民党政権によって、そのような機能は官僚に依存するという体制になってしまっています。それを政治家がやろうとするには、それなりの経費と人材を確保しなければならないのです。
 前々回、国会改革の方が先であるということを申し上げたのはこのことがあるからです。すなわち、議員の定員を大幅に減らすことは、一人当たりの議員が使える経費と人材を大幅に増強することにつながります。それだけ大きな権限を議員に与えるわけですから、きちんと仕事をしない議員は選挙によって退場していただくという意識を国民も持たなければなりません。

 民主党がそこまで考えているのであればともかく、すくなくとも官僚と五分以上に渡り合っていける議員がどれだけいるかといえば、非常に心許ないのではないかと思えます。そのような状態で、民主党が掲げる公約を実現していこうとするには、どうしても官僚に依存しなければなりません。すなわち「官僚主導」に歯止めがかからないのではないかという疑念が生じてくるのです。
 そうなると、これだけの大盤振る舞いをした後に残るのは巨額の財政赤字となり、いずれ大幅な増税が避けられないということになります。
 国民の高負担によって高福祉が実現されるのであれば、北欧諸国の国民のように諾々と従うのでしょうが、日本の官僚たちがつくりあげきた制度では、100億円の税金を注ぎ込んでも100億円分の効果を上げることが期待できません。調査費などの名目で関連団体にお金が注ぎ込まれるからです。漢字検定教会の理事長は逮捕されましたが、官僚たちがつくった制度は法の裏付けがあるので司法によるチェックも働きません。
 大勢的には民主党が主張することに間違いはないと思うのですが、それを実現するだけの能力がこのとうにあるかどうかがネックとなります。自民党が長期間政権を担当できたのは官僚という協力者がいたからですが、民主党はそれを選択することはできません。
 さて、今後日本はどの方向に進んでいくのでしょうか?
by T_am | 2009-07-23 06:58 | その他

by T_am