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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

知事たちのそれぞれの行動

 宮崎県の東国原知事が次の衆議院議員選挙への意欲を示しています。これに対して、まだ任期の途中なのだからと訝しく思う人も多いようですが、出馬の条件としてつきつけた総裁候補になれること、知事会の決定を一字一句修正することなく自民党のマニュフェストに盛り込み4年以内に実行すること、の2つがあまりにも高いハードルであり、果たして知事の思惑通りいくかどうかはわかりません。
 私には、東国原知事が重大なことを見落としているように思えます。それは知事と国会議員との違いについて、ひと言でいってしまうと「自分で決められるかどうか」ということに尽きます。
 亡くなった今東光さんが、参議院議員になったにもかかわらず1期で辞めてしまったときに、その理由として「一人では何もできないから」ということをおっしゃっていました。
 国会というところは、多数決で決定するところですから、どんな名論卓説を展開したとしても、しょせんは数の論理に屈してしまいます。だから、力のある政治家ほど派閥やグループをつくり、そのボスになろうとします。一方、それほど力がない政治家は、いわゆる「陳笠」となってボスのために尽くす代わりにボスの援助を受けるという道を選択します。すなわち、一年生議員はどこかの派閥に属さないとやっていけないのです。したがって、自民党といっても一枚岩の組織ではなく、色々な派閥やグループが水面下で絶えず主導権争いをしている政党であると理解すべきです。
 知事は自分で決めることができますが、国会議員はそうではありません。東国原知事が目指そうとしているのは、そういう世界です。
 同氏がこれだけマスコミに露出してこれたのは、彼が現職の知事だからであって、国会議員になってしまえば、その瞬間に「タレント議員」といういささか手垢のついた分類に括られてしまうことになります。したがって、国会議員になった場合、政治バラエティ番組か日曜日の朝にやっているような政治家を集めた討論番組の準レギュラーとなることはできるでしょう(テレビ局も彼が出演すれば視聴率がとれると計算するから)が、そういう国会議員は既に何人も存在しています。
 その中での最大の出世株は桝添厚生労働大臣でしょう。ただし、この人は人気だけで大臣になったわけではありません。こつこつと積み重ねてきた実績が自民党幹部たちに評価されて、政策審議会長に就任しました。桝添氏は当時の安倍内閣を批判することが多かったのですが、内閣の改造の際に年金問題を抱える厚生労働大臣に抜擢されました。これは年金問題などに安倍内閣が本気で取り組むという姿勢をアピールするための人事であったと思います。以後、福田内閣を経て、現在の麻生内閣でも厚生労働大臣を務めているのですから、その点は流石であると認めなければなりません。
 東国原知事の言動を好意的に解釈すれば、地方の要求を国に実行させるには、国の中枢に入り込まなければならないと考えたのだろういう判断もできますが、それにしてもずいぶん思い切ったことをするものだというのが私の感想です。

 そうこうしているうちに、大阪府の橋本知事が横浜市の中田市長と会談し、次期衆議院議員選挙で支持政党を表明するために、自治体首長のグループを立ち上げる方針を決めた、というニュースが25日になって伝わりました。
 これは非常に賢いやり方だと思います。
 知事や市長といった地方自治体の首長たちがグループをつくり、選挙のたびに支持する政党を表明するという動きは、自民党や民主党にとっては無視できないものとなります。昔と違って、自治体首長の知名度は高くなっていますから、その人たちが自分たちの政党を支持してくれるのか、あるいは対立する党の支持に回るのかで選挙に与える影響は大きく変わってきます。
 自民党にせよ民主党にせよ、自分たちの政党を支持してもらえればそれだけ選挙が有利になるわけですが、その代わり見返りを用意しなければなりません。首長のグループが、支持する代償として政党に要求するのは、地方に対して権限と財源を委譲せよというものです。政党の側も選挙で勝つためには、この要求をある程度受け入れないわけにはいきません。
 したがって、この構想が橋下知事の思うとおり実現するならば、地方から国が変わることにつながっていく可能性が開けて来ると思います。
 ただし、自治体の首長の中には自分の支援団体とのしがらみを抱えている人もおり、自由に支持政党を表明できるという人(完全に無所属でなければなりません)がどれだけいるかというと疑問です。また、政党の側も首長のグループという院外勢力にキャスティングボートを握られるのは好まないはずなので、グループの切り崩しなどいろいろな工作をしかけていくものと予想されます。
 そうすると橋下知事の構想は、その実現までに様々な紆余曲折が生じるものと思われますが、近々衆議院議員選挙があるとされているこのタイミングにおいては絶好のチャンスであるといえます。その効果は橋下知事がどれだけの首長をグループ化できるかにかかっています。まさに時間との勝負といってもいいでしょう。
by T_am | 2009-06-26 03:20 | その他

by T_am