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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

自由主義経済の蹉跌

 資本主義は人間の欲望が無限であるということを前提にした制度です。既に洋服ダンスがいっぱいであるにもかかわらず今年流行の服と聞けば買ってしまう女性、新しい携帯が出ると機種変更してしまう人、乗りもしない高級車を何台も所有する金持ちなどは資本主義のサポーターのような存在です。すべての人間が、新しい商品が発売されるたびに旧型を惜しげもなく廃棄してそれに飛びついてくれれば資本主義は安泰ですが、現実はそうではありません。人間の欲望は無限ではありませんし、そもそも財布のキャパシティははるかに小さいからです(自分の財布のキャパシティを超えた支出をやめられない人を待っているのは破産宣告です)。



 それでも資本主義制度のもとで経済が成長してきたのは、人口がずっと増加基調にあったからです。大きな戦争がなかったことも人口増加に寄与しました。一人一人の購買力は有限でも、人口が増えればそれだけ全体の需要が増えることになります。経済が成長すると所得が増加すると同時に技術も進歩し、新しい製品の登場を促します。それが人々の購買意欲を刺激して新しい需要を創造するので、経済はさらに成長します。日本ではこの循環がずっと行われてきたわけです。
 したがって資本主義にとって少子化による人口の減少というのは、その根本を揺るがしかねない現象ということになります。
 日本では少子化が進行しつつありますので、資本主義経済は退潮局面に入ったといってもよいかと思います。つまり日本経済はこれからずっと景気が悪い状態が続くということです。

 アメリカでは人口が増え続けているのに、なぜ景気がよくならないのでしょうか。1967年に人口は2億人になり、先月17日には人口が3億人を突破したと報じられました。

(ウィキニュース)
http://ja.wikinews.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E7%B7%8F%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E3%80%813%E5%84%84%E4%BA%BA%E3%82%92%E7%AA%81%E7%A0%B4

 人口が増えればそれだけ需要が増えるので経済は成長するはずですが、現実にはそうではありません。その理由として考えられるのは、アメリカ社会では富の偏在化が進行したことで貧困層が増えているのではないかということです。充分な購買力を持たない人がどれだけ増えても経済成長に寄与することはありません。
 以下は、貧困層が増えているという仮定のもとで話を進めます。
 そこで問題となるのは、なぜ貧困層が増える結果になったのか? ということです。
 直接の原因としてブッシュ政権による政策を指摘することができます。より効率的に予算が使われる仕組みをつくるという名目で、教育・医療・福祉の予算が削られました。これらの施策は、イラク戦争を遂行するための戦費を捻出するという狙いもあったかもしれませんが、予算が削られたことでアメリカ国民の自己負担が増えたことは間違いありません。
 政治の役割は、富の再分配にあります。これは、豊かなところから吸い上げた税金を貧しいところに配分するということを意味します。乱暴ないい方をすれば、東京都で集めた税金を地方に持っていって公共事業に使うというようなものです(それだけではありませんが)。
 ブッシュ政権がやったことは、富の再分配ではなく、富の偏在化を促すというものです。本来は再分配するための仕組みである教育・医療・福祉の分野に民間企業を導入することにより、利益を確保するためにサービスが低下するという事態が起こったのです。サービスが低下した分は、国民が自分で負担しなければならなくなりました。こうして、国の中で富が偏って集中するという事態が進行していったのです。
 こうした政策が許されたというのは、アメリカ社会においても、手っ取り早く金儲けをすることはいいことだというコンセンサスが形成されていたことに由来すると思われます。企業に業績を四半期ごとに公表することを義務づけるというのもそうです。業績が好調であれば誰も文句をいいませんが、減益であればとたんに株価が下がるという現象を引き起こしました。これでは、長期的視野に立った経営をしようという経営者はクビになるのがオチです。それよりもコストをカットし効率化を進めることで目先の利益を上げることができる経営者が評価され、高額の報酬を手にすることができるわけですから、世の中全体がどうしてもそういう方向に流れてしまいます。投資よりも投機が好まれるようになったのです。
 アメリカ国民が次期大統領にオバマ氏を選んだという事実は、このような社会のあり方がおかしいという合意がアメリカ人の間に広がっているということになると思います。したがって、オバマ大統領が取り組むべき課題は、短期間で収益をあげるのがよいという風潮を払拭し、ものづくりを行っていくことで経済を立て直すということになると思います。そうしたことが可能になって、政治の役割である富の再分配が実現されると思います。そのためには、財産の浪費に過ぎない戦争を一刻も早くやめることが必要でしょう。

 アメリカで起こった現象は何年か遅れて日本にも出現するという法則があります。現に、政府がことあるごとに主張しているのは、国民の負担の増加を求めるというものです。これは、少子化で人口が減っていっても、現行の制度・機構を維持するためには、それしか方法がないという理由によるものです。
 私などは、子どもが多いうちは間取りが広い家に住むのはやむを得ないと思いますが、子どもが独立していき、家族が減っていったら、それに合わせて狭い家に住む方が合理的であると思います。日本も人口が減っていくのですから、それに合わせた制度設計をした方がいいと思うのですが、政治家や官僚のみなさんはそうは思わないようです。
 一方、額に汗を流して地道にお金を稼ぐよりも、手っ取り早く金儲けをする方がカッコイイという風潮は日本もアメリカと一緒です。20代で財をなした経営者がマスコミに取り上げられるというのは、これに憧れる人が後を絶たないということでもあります。そして、この風潮がある限り、個人の意識が変わるということは難しいと思います。
 富の再分配とは、政治家がそれを立案し、官僚が遂行するという役割分担となっています。行政府とは本来そのためにある実行部隊なのです。
 政治家と官僚が富の再分配を怠り、逆に富の集中を促すようであれば、国民の彼らに対する不信感は募っていきます。ところが、手っ取り早く金儲けをする方がよい、という風潮は政治家や官僚の間にも浸透しており、このことは、費用対効果とか効率化という言葉を纏って表面化していきます。こうして、ビジネスマインドで決定してはいけない分野にまで「効率化」ということが行われるようになると、日本はアメリカと同じ道をたどることになります。
by T_am | 2008-11-21 22:59 | あいまいな国のあいまいな人々