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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

マスメディアが主張する「文民統制」

 田母神俊雄前航空幕僚長が参議院に参考人招致されました。12日の新聞はそのことを一面トップで伝えています。これに関する私の意見は以前も書いたので、繰り返すようですが、今回は「文民統制」ということについて考えてみました。



 メディアの論調は、要約すると「制服組のトップが政府見解に反する意見を公表するのは間違っている。これを看過してきた政府は文民統制に禍根を残した。」というものです。
 私は、「文民統制」というのは、軍人は作戦行動にあたり政治の決定に従う、ということだと思っていましたが、メディアの理解はそうではないようです。たぶん、「軍人は政府見解と異なる意見を表明してはならない。政府はそのような意見の持ち主を要職に就けてはならない。」ということも文民統制であると考えているのだと思います。
 へえ、そうなんだ。

 今回の一連の騒動に感じる政府与党のいかがわしさと野党・マスコミの胡散臭さについて考えてみると、先の戦争に対する評価と日本における軍のあり方について、誰もまともに議論しようというつもりがないことに由来していることに気がつきました。
 以下は建前になりますが、国の主権者は国民です。したがって、日本のとる道(政略)は選挙というチェックを経て政治家が決定します。軍人はそれに基づいた戦略と戦術を立案し、承認を受けて実行するというのが文民統制という用語の意味です。つまり、根本のところにある日本のとる道についての議論がろくにされていないのに、文民統制を持ち出しても仕方ないだろうと思うのです(かつて「日本は神の国である」と発言して物議を醸した総理大臣がいました。その人は別に辞任もせず更迭もされませんでした。それどころか、未だに国会議員をやっています)。
 
 村山談話が政府見解であるということですが、どういう手続きを経て国民の意思が村山談話に盛り込まれたのか、誰か知っている人がいたら教えていただきたいと思います。案外、こういうふうにいっておけば中国や韓国がやかましいことをいってこないだろうという、臭いものにはとりあえず蓋をしておこう、というレベルなのではないか? と思われるのです。
 まともに議論したことがないので、時々そそっかしい政治家が思い出したように、失言問題を引き起こすわけです。今回も自民党の中で、田母神氏を擁護する声があがっているということです。メディアはそのことを危惧しているようですが、思い込みという点では田母神氏を擁護する政治家もメディアもたいして変わりません。
 メディアや野党が、田母神論文は間違っているというのならば、反証をあげてそれを指摘すべきです。政府見解と異なっているからけしからん、というロジックはファシストのものです。このようなロジックの展開が自殺行為であると考えないわが国のメディアには、状況によってはいつでも挙国一致体制の一員となる遺伝子が備わっていると思います。
 また、アパグループの会長個人とのつながりをほのめかす報道のやり方はネガティブ・キャンペーンであり、クォリティ・ペーパーのすることではありません。むしろ品位を疑われるぞ。

 「軍人は政府見解と異なる意見を表明してはならない。政府はそのような意見の持ち主を要職に就けてはならない。」ということまで文民統制であるとするメディアと一部の識者の考えは行き過ぎであると思います。どうも批判するための材料として「文民統制」という用語を持ち出してきたのではないかと疑いたくなるのです。
 確かに、文民統制の考え方の中には、軍人による政治的行為の禁止(政治的行為を行う場合は職を辞めなければならない)があります。しかし、政治的行為についての規定(下記参照)をみると、懸賞論文に応募したという今回の田母神氏の行為が政治的行為に該当するとは考えにくいのです。

人事院規則第6項(政治的行為の定義)第13号
「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。」

人事院規則第5項(政治目的の定義)第5号
「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること」

 今回の騒動は、田母神論文の精度の問題と文民統制とを混同しているように思えます。そこには、先の戦争に侵略戦争というレッテルを貼ることで他の側面に目を向けようとしない姿勢の持ち主がわが国では強い発言力を持っていることが伺えます。そして他方ではそれに反発する人たちがいて、この騒動は両者の対立がもたらしたものであると総括してもいいように思います。すなわち、お互いが自分の立場に固執する(お前の方が間違っていると主張する)限り、このことはいつまでも繰り返される、と。
by T_am | 2008-11-13 01:53 | あいまいな国のあいまいな人々

by T_am