ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

<   2016年 09月 ( 1 )   > この月の画像一覧

 今回は第十三条と第十四条について考えてみたいと思います。

1.わかりにくい13条の変更
(日本国憲法)
第十三条
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

(草案)
第十三条(人としての尊重)
  全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない

 ここで変更されているのは、「個人として」が「人として」になっていること、および「最大の尊重を必要とする」が「最大限に尊重されなければならない」に変わっていることです。
 これらの変更は、前回も申し上げたように、国民を上から見下ろすことによって人権を制限するという立場で書かれたものです。「個人」が「人」に変わるからといって、何が変わるんだと思われるかもしれませんが、それはこういうことです。
 「個人」というのは独立した人間のことですが、これを「人」と言い換えることによって、「家族の一員としての人」や「組織の一員としての人」というふうに扱い、これを憲法で規定することができるようになります。

 ポイントは、憲法を改正する内容によっては、それまで制定することができなかった法律が制定できるようになるということです。このことは、後に出てくる第二十四条(家族、婚姻等に関する基本原則)で明らかになっていきます。

 次に「最大」と「最大限」の違いですが、これは限度を設けるかどうかの違いになります。つまり、限度を設けた中でのぎりぎり目一杯が「最大限」ということになります。その場合、誰が限度を設けるかについては、法律を作る人たちであることはいうまでもありません。
 一方「最大」というのは限度がないのですから、理想を追求することも可能です。本来憲法は政治権力に対し制約を加える一方で、理想社会を実現するための道程標とでもいうべき役割を担っています。これは、今は実現されていないけれどもわたしたち国民の「不断の努力」によって実現するのだということを意味します。例を挙げるならば、貧困の解消や社会的弱者に対する偏見や差別の撤廃、女性の社会進出などがあります。
 けれども、「最大限に尊重」とすることによって、あらかじめ限度を設けてしまい、その範囲内で法律や政令・通達をつくることができるようになるわけです。たとえば、生活保護を受けている人が酒を飲んだりパチンコをした場合は生活保護の支給を打ち切るとか、エアコンのある建物に住んでいる人は生活保護の申請ができないようにする、といったことも可能になるわけです。

2.さりげない変更が怖い
(日本国憲法)
第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
②華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

(草案)
第十四条(法の下の平等)
全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2華族その他の貴族の制度は、認めない。
3栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 第十四条では、第一項に「障害の有無」という文言が追加されています。素直に読めば障害者を差別してはいけないということになるみたいですから、歓迎すべき変更なのかもしれませんが、はたしてそうでしょうか?
 この文言を追加することによって、障害を理由に国民の義務を免除もしくは軽減されるようなことはないのだ(それが法の下の平等なのだから)というふうにすることもできるということは覚えておいた方がいいと思います。

 もう一つの変更は、「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。」という文章を削除しているということです。これは、叙勲者には特権を与えることが可能になるということを意味します。そうなると、政府を支持することを条件に叙勲するということも行われるようになるわけですから、いったい誰のための国なのだということになってしまいます。まさに、時代と世界の趨勢に逆行する憲法草案であるといえるでしょう。
by t_am | 2016-09-04 23:18 | その他