ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

<   2011年 03月 ( 19 )   > この月の画像一覧

 今回ここに書くことは推測に過ぎません。断片的に発表されている事実を組み合わせ、欠けている部分を推測で補うとこうなったというものです。こういうときに推測でものをいうというのはよくないことなのですが、自分の考えを整理するという目的もあるので、この文章をお読みになる方はそのつもりでご覧いただきたいと思います。


・燃料棒はウラン燃料の崩壊熱により、そのままにしておくと高温となって燃料被覆菅の損傷が進む。
・燃料被覆菅の損傷が進行すると、燃料棒ないのウラン燃料が圧力容器内に落下し、それが一定量を超えると再臨界が起こる危険性が否定できない。
・燃料被覆菅の損傷を食い止めるためには燃料棒の温度を下げることを行わなければならない。しかし、電源がないために冷却水を循環させる装置を作動させることができない。
・したがって外部から水を大量に注入して燃料棒の温度を下げることを行わなければならない。これは冷却水を循環させる装置が機能を回復するまで続ける必要がある。
・原子炉から漏れ出した放射性物質が水蒸気に乗って空気中に飛散する状態が続いている。これらは風によって遠くまで運ばれ、地上に降ってきている。
・一方、圧力容器から高濃度で汚染された水が漏れている。漏れている経路は複数あるものと推測され、一部はタービン建屋内に溜まると同時に、他の一部は地下配管トンネル内に侵入している。
・放射性物質が外部に漏出する経路は主に2種類ある。一つは水蒸気によって放射性物質が空中に飛散することであり、もうひとつは原子炉から漏れている水に混じって外部に流れ出す経路である。
・これらの漏出は、原子炉に水を注入する作業が続く限り止まらない。したがって福島原発の周辺(20km~30km)への立ち入り禁止措置はその間解除されることはない。また、福島原発から離れた地域でも、食品の安全のための暫定基準を超える放射性物質が検出される状態が続くことになる。
・かといって、水を注入する作業を中断すれば燃料棒が高温となり、いあゆる「空だき」状態が続けば最悪の場合再臨界が起こる可能性がある。したがって、水の注入作業は原子炉内の温度を見ながら断続的に行われることになる。
・原子炉施設(建屋)内の放射線量は日増しに増えているので、復旧のための作業の障害となってきている。冷却水の循環装置の復旧が遅れれば、それだけ外部に漏出する放射性物質の量が増えていき、汚染が進行することにつながりかねない。


 以上が推測に基づく現在の福島原発が置かれている状況です。放射性物質を今まで以上に飛散させるとわかっていながら、水の注入をやめるわけにはいかないという深刻なジレンマに陥っているものと思われます。それによって施設内の放射線量も上昇しており、復旧作業の障害となっています。

 この事態を沈静化するためのプロセスとして推測されるのは次のとおりです。

1.冷却水の循環装置を復旧(配管の漏れの修繕も含む)させ、燃料棒の温度を下げる。
2.燃料棒を1本ずつ原子炉から抜き取り、全部を別な場所に移動させる。
3.高濃度に汚染された水をいったん集め、何かに吸収させてそのまま固めてしまう。
4.原子炉施設には放射性物質の残留物が高濃度で残っているので、コンクリートで施設ごと固めてしまう。(福島原発1~4号機の廃炉。跡地は立入禁止区域となる。)
5.空中に飛散した放射性物質を回収する手段はないので、時間の経過とともに放射線量が減少していくのを待つか、放射性物質が最終的に海に流れていくのを待つ以外に方法はない。これによって海がどれくらい汚染されるのかは不明である。

 問題はこれだけのプロセス(しかも難易度は相当高い)をクリアするのにどれだけの時間がかかるのかということです。幸いなことに、1のプロセスが完了すれば、放射性物質による周囲の汚染は一応ストップしますから、あとは施設内に存在している高濃度の放射性物質で海を汚染しないかとを考えなければなりません。そのためのプロセスが2~4になります。また、5については、要するに打つ手がないということですから、政府や東電も口を拭うものと予想されます。おそらく、出荷停止となった農作物の金銭補償をしてそれで終わりということになるような気がします。けれども、土壌や海の汚染がただちに解消されるわけではないということをきちんと国民に伝えて、理解してもらわなければなりません。今後測定される放射線量というのは、半減期が8日と短いヨウ素を除けばだいたい30年以上のものばかりなので、(半減期を経過したヨウ素の分だけ)いったん下がるものの、その後その状態がいつまでも続くことになるからです。それを国民に理解しておいてもらう必要があると思います。一番まずいのは、事故処理がこれで終わり、中途半端な安全宣言がなされる(政治家が好みそうなイベントです)ことです。しかし、土壌でも海でも放射性物質による汚染がゼロになるわけではありませんから、中途半端な安全宣言は国民の間に不信感を植え付けるだけになると思われます。もちろん、対策もいっしょに説明しなければらないことはいうまでもありません。


 今回のような現在進行中の巨大事故の場合、危機管理がそのときそのときで適切に行われているかどうかが被害状況を大きく左右することになります。
 この場合、事故処理の完了に向けてどのようなプロセスが必要となるのかを整理し、それぞれの段階で何が課題として発生するのかという予測と、あらかじめ推測される問題およびうまくいかなかった場合にどのような対策を講じなければならないかを洗い出しておく必要があります。
 危機管理においては「想定外の事故が起こりました」という弁解は通用しません。そういうことを言う人間がいれば誰であろうとただちに罷免されるべきです。これは、自分には責任がないという意味の言葉に過ぎず、問題の解決に何ら寄与しないからです。この期に及んで責任逃れをしようという輩は必要でないばかりか、かえって有害となります。(人ごとみたいな顔をして人前に出てくる監督官庁の役人も同様に有害無益です。)
 事故による国民の動揺、さらにはパニックを予防するためには、あらかじめ全体のプランをきちんと説明すること、要所要所で適切な情報開示をしていくことです。
 その際には、「ただちに健康に影響を与えるものではない」などと根拠のない気休めを言うと、国民はかえって「何か隠しているのではないか」と疑いをもつようになりますから、それが不安を煽ってパニックを起こす要因となります。したがって、正確な事実を伝えることとそれが意味するところを丁寧に説明していく(途中を省いてはいけません)意外にありません。
 そういう意味では、これまでの東電、政府、保安院による記者会見は全部落第です。なぜなら、彼らが伝える事実が断片的で何が起きているかよくわからないからパニックが起こるのであり、私のような専門家でもない人間が推測でこのような文章を書くことになるからです。
by T_am | 2011-03-29 22:46 | その他
 知人から下記のメールが送られてきました。内容は福島原発10基の原子炉の廃炉を求めるというものです。
 さらに、これを読んだ別の人が、今回の原発事故に関するいろいろなリンクを提示してくれましたので、それも掲載します。

 こういう動きに対して、「既に日本の電力の4割は原発でまかなわれているのだから、これをやめるわけにはいかない。やめれば日本は大変なことになる。」という反論があることは私も知っています。私は、基本的に原発は必要だと思っているのですが、それでも福島原発(というよりも現在の国内の原発のすべて)の廃炉に賛成するものです。その理由は最後に述べます。

(最初に届いたメール)
日本の友人から送られてきました。少しでも原発を見直すきっかけになればと思い転送します。
宜しくお願いします。

多くの方に署名していただきたいと思い、転送します。

もし、以下福島原発廃炉に賛同いただければ、署名にご協力よろしくお願いします。
あと、以下もオンライン署名できます!


http://www.antinuke.net/kaminoseki/


皆様へ
転載します。今市民が声を出せば、伝わり行動になると
意図しております。郡山市長の声明文を是非ご覧ください。
周りの方への情報の拡散をどうぞよろしくお願いいたします。

郡山市HP


http://www.city.koriyama.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=22874


福島原発の「廃炉」を求める有志の会(要請書ダウンロード)

http://fukushimahairo.web.fc2.com/

呼びかけ

緊急署名を呼びかけます。

郡山市長の要請を積極的に受けとめ、ただちに福島原発10基の
「廃炉」を決めてください。
3月19日の午後、原正夫郡山市長が「廃炉」を訴えたことを、重
要な契機として生かさなければ、と思います。 もう一つは、
刻々、ヒバクの恐怖が、私たち市民にも襲ってくるかもしれないとき、
今までヒバクを前提として動かされていた原発に、多くの関心を寄せな
ければ、と思います。

ぜひぜひ、この署名を広めるために、ご協力下さい。

★署名用紙
⇒ダウンロード(PDF)
送付先は署名用紙をご参照ください

★メール署名
送り先: fukushima.hairo [at-mark] gmail.com ([at-mark] の
部分を @ に置き換えてください)
署名方法:上記アドレスに氏名(ハンドルネームは不可)、住所を書い
て送信して下さい。識別のためメールのタイトルを「署名賛同」として
下さい。

署名での個人情報の取り扱い
本署名、メール署名での個人情報は本署名行動のため以外には使用しな
いことを約束いたします。メール署名でのメールアドレス等個人情報は
署名行動終了後廃棄します。
提出日も提出方法もこれから検討します。

追って、ここにお知らせします。

取り急ぎ。

福島原発の「廃炉」を求める有志の会
連絡先:fukushima.hairo [at-mark] gmail.com


とりわけ首都圏に住む私達は、ある意味で加害者です。

福島で作られる電気は福島では消費されず、首都圏で使われます。

深刻な事故の恐怖、放射能汚染を前に、地元が「そばに原発はゴメンだ!」という声をあげたことを、私達は重大に受け止めなければなりません。

放射能汚染の恐怖が、自分の身にも降りかかるかもしれないこの深刻な事態になって初めて、地元の人たちの気持ちを共有できる状況が生まれました。

いま、私達には「政府は地元の声を聞け!」という責任があると思いました。

-------------
郡山市災害対策本部 本部長 原 正夫 郡山市長より のメッセージを転載(一
部)

郡山市災害対策本部 本部長 原 正夫 郡山市長より
 今回の災害にあたりましては、全国各地から温かいご支援をいただき、心から感謝と御礼を申し上げます。
郡山市民の避難状況につきましては、懸命な復旧活動の結果、当初の約1万人から約3千人に減少をしております。
しかし、原発の事故に伴い、県内各地からの本市への避難者数は、5,000人以上となっており、避難されてきた方々は、大変不便をしております。
特に、病気の方々に対しましても、本市の医療関係機関に懸命な対応をしていただいておりますが、医療品等に不足が生じつつある状況にあります。
大震災発生以来、私は、職員はじめ関係者の方々と市民の安全・安心の確保のため、全身全霊を持って対応してまいりました。
原発事故に関しましては、今日まで、国と東京電力の事故に対する対応のあり方について正確に情報を把握することができませんでしたが、本日の新聞報道を見て大変驚きました。

 国と東京電力は、郡山市民、福島県民の命を第一とし、原発「廃炉」を前提に対応しているものと考えておりましたが、国・東京電力は、今後の産業・経済を優先し、「廃炉」を前提としたアメリカ合衆国からの支援を断ったことは言語道断であります。
私は、郡山市民を代表して、さらには、福島県民として、今回の原発事故には、「廃炉」を前提として対応することとし、スリーマイル島の原発事故を経験しているアメリカ合衆国からの支援を早急に受け入れ、一刻も早く原発事故の沈静化を図るよう国及び東京電力に対し、強く要望すると同時に、この件に関し、海江田経済産業大臣に直接電話で要請いたしました。
また、佐藤県知事、佐藤県議会議長及び渡辺いわき市長などと電話連絡をとり、市民あげて、さらには県民の方々と一緒に国と東京電力に強く訴えたいと思います。

 お集まりの報道機関の皆さまにおかれましては、この趣旨をご理解いただき全国民の皆さまに、さらには、全世界の皆さまにこのメッセージを報道していただきますようよろしくお願いいたします。



(上記のメールを受信した人による補足のリンク)
 ありがとうございます。署名をします。多くのメールアドレスを見たので今いろいろ見ている現状のリンクを送ります。是非色んな人に見てもらいたいと思い送ります。砂入
みなさん、
 現在のの色んな情報源のリンクを送ります。私たちはお金を集めたりも出来ますが必要な情報を広めると言う仕事もできると思います。聞く話によると中国みたいに米国の原子力、放射能のサイトなどが日本から見れない事になったりしています。たぶん、メディアと政府がやってるのかもしれません。中には賛成できない情報もあると思いますが東京は情報が不足していると聞きました。出来るだけ数多くの人たちに現状をお知らせするのも大 切だと思います。色んな人に送ってあげてください。


福島原発で何が起きているのか: 放射線探知機を持って原発を調べに行ったジャーナリストのお話

http://www.ustream.tv/recorded/13509353#utm_campaign=twitter.com&utm_source=13509353&utm_medium=social


武田邦彦教授が緊急インタビューに応じる。未曾有の被害をもたらした東日本大震災と同時に発生した大津波によって冷却装置に致命的なダメージを受けた福島第一原子力発電所。想定外の放射性物質が大気中に漏れ出し、世界中から大きな注目を浴びている日本の原子力政策のウラ側を大暴露する武田教授。
http://www.youtube.com/watch?v=gW8pfbLzbas


震災被災者を支援するための寄付先に迷ったので、どこに寄付したら、最終的にどこにお金が行くのか 
http://irritantis.info/archives/652


【緊急生放送】 東北関東大震災 いま何が起きているのか PART1
http://www.ustream.tv/recorded/13397393


【緊急生放送】 東北関東大震災 いま何が起きているのか 
http://www.ustream.tv/recorded/13399132


体内被曝
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E4%BD%93%E5%86%85%E8%A2%AB%E6%9B%9D


【福島原発】放射能による内部被ばくを警告~緊急現地報告
http://www.youtube.com/watch?v=rMssj9rqXSQ

Chernobyl Cleanup Survivor's Message for Japan: 'Run Away as Quickly as Possible'
http://www.aolnews.com/2011/03/22/chernobyl-cleanup-survivors-message-for-japan-run-away-as-qui/?icid=maing|main5|dl3|sec1_lnk2|51283


放射能から身を守る為に
http://doraku.asahi.com/special/shinsai/110322_03.html


田中優さん、反原発の立場で活動を続ける文筆家のものすごくわかりやすい話での、現状からの未来の日本のビジョン。原発なしで主に電気をどうするか?
http://www.ustream.tv/recorded/13373990#utm_campaign=www.facebook.com&utm_source=13373990&utm_medium=social


昨夜のCS放送番組。「ニュースの深層」
http://www.youtube.com/watch?v=AjOMiQL6bQw

広瀬隆: 今夜3月17日、夜8時~、朝日ニュースター(CS朝日):一時間の生番組で福島原発事故についてマスコミ批判有料の衛星放送
1/3 http://www.youtube.com/watch?v=veFYCa9nbMY
2/3 http://www.youtube.com/watch?v=wlVlmyyNxlw
3/3 http://www.youtube.com/watch?v=rpcuM1v90XE
(引用終わり)


 福島原発の事故後、セイヤさんから教えてもらい、保安院のメール配信サービスに登録して、情報を直接もらうようにしたところ、呆れてしましました。理由は2つあります。

 1番目の理由は情報のスピードが遅いこと。配信されるメールの内容は既にテレビなどで報道されている内容と何も変わりません。
 2番目は事実を淡々と述べているに過ぎないこと。

 たとえば、本日送られて来たメールの内容(3月27日8時00分現在)は次のとおりです。

最新の状況は以下のとおりです。
○福島第一原子力発電所関係
<1から3号機>
・原子炉圧力容器へ淡水注入中

<使用済燃料共用プール>
・26日15:30時点でのプール水温度は43℃程度

(引用終わり)

 保安院について、広瀬隆さんは「バカ集団」といい、武田邦彦教授は「無責任」といっていますが、本当にその通りだと思います。このメールを読んだときの感想は「だからどーした?」というものです。原子炉圧力容器内への海水の注入は何日も前から行われており、現在はそれが真水に替わったのですが、保安院という立場の官庁が発信する情報であれば、なぜ原子炉に水を注入するのか、既に何日も水を注入してきて現在はどのような状況になってきているのか、ということも国民に伝える義務があるはずです。けれども、そういう意味のある情報は一切流さずに、起こっている事実だけ(しかも施設内で時々測定しているはずの放射線量については黙殺している)を淡々と伝えるにとどまっています。
 あとはマスコミや視聴者がその事実を勝手に解釈するということが続いているのです。
 一例をあげましょう。「外部から電源を引いてきた結果、中央制御室の照明が灯った(4基中3基)」という発表された事実に対し、「これで今後の作業がやりやすくなる」というのはマスコミの解釈です。それを聞いた視聴者は「とりあえず一安心」と勝手に思い込んでいるわけです。しかし、現実には原子炉圧力容器から漏れた放射性物質が施設内を高濃度で汚染している状況に代わりはなく、しかも今後まだ崩壊熱を出し続ける燃料棒をひらすための冷却水を循環させる設備を稼働させるという課題が残っています。その際に懸念されるのは、冷却水の循環系のどこかで水漏れが発生しているのではないかということであり、それが解消されない限り外部に放射性物質が拡散していくという事態は変わらないのです。
 保安院のメールにはこうした疑問に答える情報が一切含まれていません。「バカ集団」とか「無責任」といわれるのも当然であると思います。
 それよりも、このような連中が原子力発電所の監督官庁にいるという事実の方が無視できないのです。

 原子力発電所を建設するにあたって、国は周辺の自治体とそこに住む住民に対して「原発は絶対安全である」といい、さまざまな補助金を与え続けてきました。(これは米軍基地の問題と同種同根であるといえます。)
 今回の事故で、「絶対安全である」という説明は嘘だったことが明らかになったわけですし、さらに、約1100年前に起きた貞観地震を解析した結果この地域が大津波を伴う地震に襲われる可能性があるという指摘をされていながら、その対策を怠っていたという事実も明らかになりました。

(毎日新聞の記事)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110327k0000m040036000c.html


 私は、政策とは国と国民の間で交わされる契約のようなものだと思っています。政治家は選挙の公約を掲げ、それを有権者が選択するという形をとっていますが、これも合意の一種ですから契約とみなしてよいと思うのです。
 契約を持ちかける側(この場合は政治家や官僚)は、相手よりも深く専門的な知識を持っているのですから、国民に対して、その契約(政策決定)によってどのようなメリットがあるのか、またどのようなデメリットとリスクがあるのかをきちんと伝えた上で、自分たちの政策に対して合意するかどうかの判断を仰がなければなりません。そういうことをしないで契約を結ばせるのは悪徳業者という烙印を押されることになっています。
 商品の売買契約であれば、クーリングオフの制度もあれば消費者生活センターという相談窓口もありますが、政策決定の場合それがありません。まして、原発の建設にあたっては、本来きちんと周知しなければならないことに口をつぐんで進めてきた(悪徳業者のやり口といっしょ)のですから、郡山市長が怒るのは当然です。
 都合の悪いことも含めてすべての情報を説明した上で、原発の建設に合意するかどうかの判断を仰ぐ、というのが民主主義を標榜する国家のあり方でしょう。私が、福島原発10基の廃炉を求め署名に賛成するというのは、今この段階で市民が行動しないといつまで経っても政治家と官僚の目が覚めないと思うからです。
 原発の必要性は私も認めるところです。しかし、原発には大きなリスクが伴うのですから、それを回避するためにどのような対策を講じるのかという納得のいく説明が事前に行われない限り、新たな原発の建設には同意するわけにはいきません。
 これは現在稼働中のすべての原発に対してもいえること(特に危険なのは浜岡原発)であり、いったんすべての原発を止めてその安全審査を国民に仰ぐということをすべきだとも思います。
 こういうことをいうと、「電力の4割は原発に依存しているのだから、そんなことをすれば日本経済は大変な事になる」という反論が予想されます。
 それに対する私の反論はこうです。「そう思うのであれば、ただちに安全対策を講じて実行に移せ。それが嫌なら、浜岡原発の隣に引っ越してから言え。どちらも嫌だというのなら黙っていろ。」

 以上が、署名に賛成する理由です。読者がどうするかはご自分の判断に委ねたいと思います。
by T_am | 2011-03-27 18:40 | その他
 ここ数年、官民・官官で災害支援協定を結ぶ動きが活発になっています。災害からの復旧のためには大量の物資を集中的に集めなければならず、そのためには民間の協力を仰いだ方がよいというものです。また、民間企業にも積極的に応えようという動きが広がっているのは心強い限りです。
 今回のように複数の県にまたがって大きな被害が起きた地震では、そこに隣接する県にも流通面で大きな影響を及ぼすということがわかりました。その最大の理由は各地の精油所が被害に遭って生産が一時的にストップしたことによると思います。
 そのため、地震の翌日には、ガソリンの供給がされなくなったスタンドもありました。売り切れのため閉店したガソリンスタンドがある一方で、ガソリンが入って来たスタンドには給油を求める車が長蛇の列をつくり、交通渋滞の原因となっていました。これは山形県や秋田県での事例ですが、関東でも同じような光景がみられています。
 直接の被害があったわけではないこれらの地域でもこのような状況になったのですから、福島県・宮城県・岩手県ではもっと悲惨な状況に陥りました。住民はもとより復旧支援物資を運搬するはずの車両の経由が入手できず、道路の寸断もあって避難所に物資を満足に届けることができないという事例はテレビでさんざん紹介されています。

 被害がここまで拡大すると従来の災害支援協定の枠組みには限界があり、どうにも対応ができなくなるという局面が生じてしまいます。それというのも、今の災害支援協定の枠組みは官民や官官という一対一の関係だからです。
 たとえば、ある企業が宮城県の気仙沼市と災害支援協定を結んでいて、そこに物資を輸送しようとしても、その企業の地元でも軽油の入手が困難になれば、運びたくても運べないということになります。
 また、高速道路の通行できる区間は緊急支援車両専用となるので、許可証を持たないトラックは通行することができません。許可証を発行してもらうにも時間がかかるのですから、全体でみると大きな時間のロスが発生していることになります。

 今後も都道府県の境界を越えた大規模な災害が発生する可能性は誰にも否定できません。今回の地震の教訓として、災害支援協定を広域連合協定にアップスケールしていくことが必要ではないかと考えます。
 広域連合協定というのは、主に受け皿となる自治体間の結びつきを組織化するというものです。
 それには二種類あって、一つは各自治体が個別に遠隔地にある自治体と支援協定を締結するというものです。これは既に実施されているところもあり、災害が発生すると、協定を結んでいる自治体が被災した自治体に支援物資を送ったり、避難者を疎開させるという仕組みを普段からつくっておくものです。
 避難所の生活は食糧や医療が十分でなく、しかもトイレや風呂にも不自由するというものですから、避難者のストレスは相当なものとなります(プライバシーもありませんし)。各地の温泉旅館などの施設で避難者の受け入れを行ったところ、個室があるのが嬉しいと喜ばれているそうですから、十分なケアをするためには遠隔地の自治体と協定を結び、いざというときの受け皿となってもらうという仕組みが普段から整えられておいた方がいいのです。
 その際のポイントは、一時的な避難なのかそれとも疎開なのかを被災者が選択できるような柔軟性を持たせておくことになるでしょう。疎開ということになれば、疎開値での就業や教育にも配慮がされなければなりません。そうなると自治体間の一対一の協定では受け入れ能力に限界がありますから、複数の自治体が協定を結んでおくほうが実現性は高くなると思います。

 二番目の取り組みは、その地域の自治体の連合と他の地域の自治体の連合が支援協定を結んでおくというものです。
 今回の地震によってガソリンや軽油の不足が問題となりました。それは被災地だけはなく隣接する県においてもみられた現象です。食糧と燃料、および医薬品は被災者の支援と復旧のために不可欠の資材ですから、これらを円滑に行き渡らせる仕組みをつくっておくというのが、その目的となります。
 たとえば、広域災害が発生したら、そこに隣接する自治体連合は支援協定を締結している企業に対し物資の供給を要請します。その中には、石油の元売りも含まれ、広域災害が発生したらガソリンや軽油、灯油といった石油製品の生産量のたとえば1割を優先的に提供してもらうという協定を結んでおくのです。同時に自衛隊や電力会社・電話会社とも連携して、寸断された道路や通信網・電気の供給ルートの復旧訓練(被災箇所の通報と復旧作業の実施)を普段から実施しておくことも、いざというときに大きな効果を発揮するはずです。
 避難訓練だけが災害対策ではありません。3月11日を防災訓練の日ということにして、この日は全国各地でこれら一連の訓練を実施する日というふうに定めることも必要でしょう。そうすれば、今回の災害によって命を失った人の供養にもなると思います。自然災害の発生を防ぐことはできませんが、その被害者を減らすことは普段の努力と知恵を集めることによって可能になるからです。
 提携先の企業から物資の提供を受けた広域自治体連合は、被災地が属する広域自治体連合の対策本部の指示に基づいて、その物資を輸送します。そのための輸送車両を提供してもらうという協定も必要でしょうし、それらの車両が高速道路をただちに通行できるように警察に届け出をしておく(通行許可証を発行してもらうため)ということも必要でしょう。
 被災地側の広域自治体連合対策本部では、各県の対策本部からの情報に基づいて物資の輸送割り当てを行います。現在は、全国から届けられる救援物資の仕分けは被災地の自治体職員とボランティアが行っていますが、仕分け機能を被災地からはずし、広域自治体連合本部(ここは被災していません)で行うようにすれば、仕分けに必要な人員と場所の確保がしやすくなるというメリットがあり、被災地の自治体職員の負担をそれだけ軽減することができ、その分被災者のケアに専念してもらうことも可能になります。
 現在の地方行政のありかたでは、このような大規模な災害が起こったら、何から何まで自治体の職員が対応しなければならないというところに問題点があります。自衛隊などの支援も行われますが、それらはあくまでも現場での作業に限られます。自治体の職員には、どこで何がどれだけ必要かという方法を集め、次に何をしなければならないかという行動を起こすことがことが求められています。しかもそれらの作業をほとんど不眠不休で行わなければならないのですから、どうしても無理がありますし、十分な成果を期待するのも難しいと思います。
 大きな仕事に取り組まなければならないときは、少数の人が何から何までやるという体制よりも大勢の人があらかじめ決められた役割分担に基づいて作業を行った方が効率がよくなります。広域自治体連合という考え方は、今まで被災地の自治体が全部やっていたことの一部を分担することによって地元の負担を軽減するという側面もあるのです。

 このような取り組みが成功するかどうかは、いざというときに情報網と物量網をどれだけ確保できるかにかかっています。大規模災害が起これば当然これらのインフラは破壊されるのですから、いかに早く復旧させるかが鍵を握ることになります。そのためには、警察・消防・自衛隊・電力会社・電話会社などとの連携が普段から整えられている必要があります。中には法律の改正が必要な場合もあるかもしれません。そのためには、今回被災地となった県出身の国会議員の尽力が不可欠です。自分の選挙区の復興も大事ですが、自分の選挙区の住民がなぜこれほどの苦しみを経験させられたのかを考えれば、自分が何に取り組まなければならないかが明らかになると思います。

 広域自治体連合と政府との関わりについては、私自身まだ整理がついていないのでここでは触れないでおきます。しかし、福島原発に派遣された東京都の消防隊員に政府高官が圧力をかけたという事件が報道されたのを聞いて、政府の介入は限定的にしなければならならないと思いました。
 阪神大震災以降も日本は幾多の災害に見舞われ復興を遂げてきました。そこでは、どの時点で何が必要とされたかについて、当該自治体に記録が残されているはずです。それらを吸い上げて整理したうえで、災害対策マニュアルを策定するのは政府が行った方がm各自治体が個別に実施するよりもスムーズにいくはずです。
 このように考えると、政府や政治家の役割というのは、いざというときの実行部隊となる地方自治体が仕事をやりやすくなるような環境を整えることが主眼になるといえます。現場に派遣された消防隊員を脅すなど、現場に口出しすることはかえって被災者の支援の妨げとなります。スタンドプレーはやめて黒子に徹する。こういう覚悟をもっていただきたいものです。

 以上、今回の地震で被災した地域を見てきた者として、思ったことをまとめてみました。まだ十分に整理できていないので、おかしなところもあるかもしれません。しかし、これほど大きな災害だからこそ、この教訓を次に活かすという取り組みが必要であると思うので、今回はこのような提案を申し上げることにしました。
by T_am | 2011-03-26 21:49 | その他
 水道水で基準値を超える放射線が検出されたことで、浄水器で放射性物質が除去できるかという問い合わせが増えたそうです。市販の活性炭を使った浄水器ではあまり効果がないだろうということらしいのですが、逆浸透膜を使った浄水器ならばかなりの効果が期待できるとも聞きました。

 そこで、ふと疑問に思ったことがあります。

 仮に、放射性物質を100%除去できる浄水器があるとします。この浄水器を通せばどんなに放射性物質で汚染されたいる水でもきれいになります。その代わり、この浄水器の中には放射性物質が残ることになります(当たり前ですね)。
 ここで、どんどん汚染された水を通せば、浄水器の中にはそれだけ放射性物質が蓄積されていくことになります。となると、高性能な浄水器というのは放射性物質を濃縮するようなものではないのか? ということを考えてしまいました。

 といっても、これは言葉の遊びのようなものですからご安心ください。

 1kg(=1リットル)1000ベクレル(以下Bqと書きます)のヨウ素131で汚染された水があるとします。潔癖な人がいて、お風呂に使う水も浄水器を通したとすると、お風呂の1回分で約200リットルの水を使うとして、放射性物質の合計は20万Bqとなります。 1m離れたところにヨウ素131がある場合、被曝量は100万Bqで1日におよそ1.4マイクロシーベルト。これは通常1年間に浴びる放射線量(2.4ミリシーベルト)の約1700分の1に過ぎません。
 そうなると、放射性物質の除去が可能な浄水器を使うことは、水道水の放射性物質による汚染から身を守るという点で理にかなっているということになります。ただし、個人でこのような高性能な浄水器を持つのは家計を圧迫しますから、現実的ではありません。幸い、スーパーの店頭に設置されている浄水器はこのタイプだそうです(これはセイヤさんから教えてもらいました)から、これを利用するという手もあるでしょう。

 以下は浄水器とはまったく関係のない話です。

 ところで、放射性物質の塊である核燃料というのは実に厄介な代物です。ゴミは燃やせばなくなりますが、核燃料は使用済みとなっても別な放射性物質が生成されているので、燃やしてしまうということができません。そのうえ放射線と熱を出し続けるのですから、崩壊して他の安定した元素に変わっていく(そこで放射線は止まる)のを待つ以外に方法はないのです。
 それまでの間、周囲が汚染されないように核燃料を管理しなければなりません。そのために核燃料を1カ所に集めて集中的に管理するという手法がとられています。これは効果的ですが、その代わり手間と費用がかかります。そのうえ管理に失敗すれば周囲が汚染されるというリスクがあることが、今回の福島原発の事故で明らかになりました。

 このことからいえるのは、ウランを始めとする放射性物質というのは集めて濃度を高くすると周囲に悪影響を与えるので厳重に管理しなければならないが、リスクも高いということです。
 今回の福島原発の事故によって、原発は危険だから廃止すべきだという声が強まることと思います。ただし、それは原発に対する不安感・不信感という感情に根ざしているものですから、時間の経過とともに変化するはずです。
 本当に原発を廃止するとなると、私たちは相当の覚悟を迫られことになります。というのは、原子力に替わる大規模発電技術がまだ確立されていないからです。風力発電が可能なのは世界でも限られた地域に過ぎません。また、太陽光発電の発電量は太陽光パネルの面積に比例しますから、大規模な発電をしようと思えばそれだけの面積を確保しなければなりませんが、それは不可能です。したがって補助的な役割を担うことはできても主力にはなりません。さらに、風力発電も太陽光発電も発電量が安定しないという欠点があります。風が吹かなければ風車は回らず発電はできません。太陽光発電では曇れば発電量は落ちますし、夜になれば止まってしまいます。
 現在、日本の発電量のおよそ4割を原子力発電がまかなっているということですから、これを完全に廃止するとなると、電力不足に陥ることは避けられません。それはすなわち、かなり不便な生活を強いられるようになるということを意味しています。東京電力が実施している計画停電がどのような影響をもたらしているかを考えれば、そのことはすぐおわかりいただけると思います。そうなると、私たちは今のライフスタイル(いつでも好きなときに好きなだけ電気が使える生活)を放棄しなければならなくなると思います。
 したがって、ばりばり仕事をしたい人、夜更かしをしたい人、いつでも好きなときにテレビを見たいという人、パソコンやケータイを手放せないという人にとっては電力不足というのは受け入れがたいと思いますので、そうなると、現在の技術水準では原発を甘受する以外にないように思います。おそらく日本人の大部分がそういう人たちでしょうから、当分の間原発を廃止するということは不可能であるということになります。

 原発は怖いけれども(将来画期的な技術が開発されるまで)当分の間はつきあわざるを得ない。これが現在のところの実情です。

 そこで理性的な行動としては、原発の安全性を今よりも高めること、および万一事故が起こったときに被害を最小限に抑えるにはどうしたらいいかという対策を普段から練っておくことが考えられます。
 原発は絶対安全だと宣伝されてきました。日本人の多くはそれを信用していなかったかもしれませんが、本当に絶対安全なのかの検証や監視をしようとはしてきませんでした。絶対安全だと嘘を言ってきた人の方が圧倒的に悪いに決まっているのですが、嘘を真に受けて、私たちがそれ以上何も考えようとしない状態が続く限り、今後も同種の事故が起こる可能性は極めて高いといえます。
 電力会社にしても、事故を起こせばそれによって発生する損失と巨額な賠償責任を考えれば、より安全なものを目指した方がはるかに安上がりであるという計算ができるはずです。
 また、原発立地と隣接する自治体にはさまざまな補助金が支払われています。主なものは次のとおりです。

電源立地地域対策交付金(公共施設整備や住民の福祉向上が目的)
・原子力立地給付金(企業と家庭に対し直接補助金を支払う)
 
企業立地支援事業補助金(事業所を新設する企業に対する補助金)


 自治体に対する交付金の使途は国によって厳重に管理されているので、地元の自治体徳治の裁量で使い途を決めることはできません。これを改めて、交付金の何割かをいざというときの対策費として使用できるようにすべきです。原発立地と周辺の自治体の首長にはそれをしなければならない責任があるのですし、地方議会議員はそれがきちんと行われているかをチェックしなければなりません。また住民も議員や役所に対し、報告を要求すべきです。
 また、この機会に、企業や家庭では毎年もらう給付金の使い途を考えた方がいいように思います。臨時収入くらいに考えていると、今回のような事故が起こったときに何の備えもしていないということになるからです。
 私たちの社会が原発が必要であると判断するのであれば、その代償として最低限これだけのことはしなければなりません(その割に原子力立地給付金の支給額が年々下がっているのが気になります)。その費用は日本人が等しく負担するのが当然であり、現在の制度の原資は電気料金の中から支払われているのですが、それを知らない人も多いはずです。
 「知らないから考えない」ということはあります。あるいは「考えさせないために知らせない」ということもあるかもしれません。それでも、知らない方も知らせなかった方も、今回のような事故によって払わなければならない代償はあまりにも大きいのですから、「きちんと知らせていっしょに考える」という社会をつくった方が、長い目で見ると、全体の負担ははるかに少なくなるのではないかと思うのです。
by T_am | 2011-03-26 08:46 | その他
 3月22日夜の検査で東京都の金町浄水場の水道水から乳幼児の基準値(1kgあたり100ベクレル、以下Bq)を上回る濃度の放射性ヨウ素が検出されたというニュースが駆け巡りました。それでも乳幼児以外の基準値である300Bqを下回っていたのですが、各地のスーパー、ドラッグストアではミネラルウォーターやお茶が売り切れるという店が続出しています。

 今まで、政府の発表にはおかしなところがあるという思いから、私はこう考えるというものをブログにアップしてきましたが、今回はそのおさらいをしてみたいと思います。

1.測定される放射線の量は日によって(もちろん時間によっても)変わります。
 空中を漂う放射性物質は汚染源である原発から運ばれてくるわけですから、その日の風向きや天候によってその量は異なります。原発から十分離れている地域であれば、その日基準値を超える値が測定されたとしても、未来永劫それが続くわけではありません。

2.基準値はそれが「暫定」であっても根拠のある数値です。
 政府や一部の学者は、「ただちに健康に影響を及ぼすわけではない」と繰り返し述べていますが、体内に取り込まれた放射性物質は、それが体内にある限り人はその放射線を浴び続けることになります。したがって基準値を超える食品はとらない方がいいのです。

3.放射性物質は福島原発の事故が起こる前から存在していました。
 日本中どこで測定しても放射線の量がゼロというところはありません。これはわずかではありますが、自然界の至る処に放射性物質が存在しているからです。ところが、今までは誰も食品の放射線について測定していませんでした。あるいは測定していたのかもしれませんが、基準値を超えることがなかったのでそれが公表されるということはありませんでした。公表されなければ、それは消費者にとって存在しないのと同じです。それが突然公表されだしたので誰もが不安に感じたわけです。

4.検査によって安全だと確認できた野菜は福島や茨城産であっても積極的に出荷すべきです。
 福島県や茨城県の一部の地域で栽培された野菜に放射性物質が検出された結果、県全体が出荷停止となったことで、消費者はほかにも汚染された野菜があるのではないかという疑いを抱くようになりました。汚染されていない野菜にとっては濡れ衣というべきなのですが、現在のやり方では疑いを晴らす術はありません。それでは農家の被害は拡大する一方ですし、消費者の不安はいつまでも解消されません。農家や消費者の立場に立った政治を行うのであれば、大変かもしれませんが、県内の全地域の野菜の検査を行い(ハウス野菜であっても検査は必要です)、安全だと確認されたものを大々的に出荷すべきです。消費者に必要なのは、これは安全な野菜であると証明された事実なのです。不正確な情報を流すから風評被害が起こるのであり、正確な事実がきちんと伝えられれば、消費者も冷静に行動するようになります。これは牛乳も同じです。

 基準値を超えたのが野菜であれば、ほかの野菜を食べる、あるいは我慢するということも可能ですが、水だけはそうもいきません。人間が1日に必要とする水の量は成人男性で2リットルから3リットルの間(運動したり活発に動き回る人の場合さらに増えます)ですが、そのすべてが水をがぶがぶ飲んで補給しているわけではありません。食品の中に含まれる水分もあります。その食品に含まれている水はどこから来たのかというと、あなたが住んでいる場所以外のところから来たことがわかります。また、自動販売機のお茶やコーヒーを買えば、その中に含まれている水も他の場所他の場所から来たことがわかります。
 つまり、人間が毎日摂取している水というのは、自宅の水道水でその100%をまかなっているわけではないのです。そういうふうに考えると、水は社会の中でできるだけスムーズに流通させるようにした方がいいということがおわかりいただけると思います。ミネラルウォーターやお茶、食品を買いだめするということは、この水の流通を妨げることになります。
 
 あなたが水を必要とするように他の人も水を必要としています。その中には、あなたよりももっと水を必要とする人もいるのです。避難所暮らしを強いられている人々、乳幼児、妊婦。これらの人々はあなたよりも弱い立場にありますから、水が不足するとこの人たちが真っ先に困ることになります。
 本来であれば、水道水から基準を超える濃度の放射性物質が検出された時点で、行政が給水車を出動させればいいのです。足りない分は他の自治体から給水車を借りてきて、とにかく水を確保するという姿勢を示すことで消費者は安心できると思うのですが、残念ながら行政はそこまで手際よく動いてくれません。
 そこで、お店で売っているミネラルウォーターやお茶の買いだめに走ることになるのですが、それによって割を食うのは社会的弱者と呼ばれる人たちです。
 義捐金の募金箱に寄附しようという気持ちがあるのならば(それはとても尊いことです)、今日のうちに自宅の水道水を溜めておき、本当に水道水が汚染されたときにはそれを使うというようにした方がいいのです。水道水の品質基準はミネラルウォーターよりもはるかに厳しいので、ミネラルウォーターよりも日持ちします。それでも時々は入れ替えをした方がいいのはいうまでもありません。

 資源が限られているときに、自分だけは確保しておこうと誰もが考える社会と、みんなが少しずつ我慢しようと考える社会とでは、どちらの方がより多くの人に資源が行き渡るか、少し考えれば小学生にもわかる理屈です。
 先週、山形県と秋田県では地震の被害があったわけでもないのにガソリンスタンドには長蛇の列ができていました。同じ現象は関東地方でも見られています。それでも秋田山形の場合はガソリンの入荷が極端に減っていたという事情があります。では関東はどうかというと、通常通りガソリンが入荷しているスタンドも多いのです。にもかかわらず、誰もが満タンにしておかないと気が済まないということでガソリンスタンドには長蛇の列ができています。それは時間の浪費ですし、交通渋滞の原因にもなります。(新潟のスタンドでは行列などみられません。)
 ガソリンが不足するのではないかと心配でならないという人は、せめてガソリンがメーターの半分に減るまで我慢して、半分になったら給油するということをしてはいかがでしょうか? たったそれだけのことでもスタンドの行列は相当緩和されるはずです。

 地震の発生以来、ホームセンターではガソリンの携行缶が飛ぶように売れていました。本来携行缶というのは,給油ができない地域へやむを得ず行かなければならない人が非常用として使うためにあるものです。携行缶に中に入れたガソリンは半年も経てば劣化してしまいますし、常時車に積んでおくのはそれだけ危険も伴います。
 また、避難所にいる親戚に生活物資を届けたいという人には携行缶が必要でしょう(被災地ではガソリンが足りない)が、これだけ品薄になると、そのように本当に必要とする人たちに行き渡らないという状態に陥っています。その結果として困るのは避難所にいる人だということになるのです。

 ロビンソン・クルーソーのように無人島にたった一人で暮らしているというのであれば自給自足を迫られますが、現代の日本人は違います。私たちが食べる食糧、飲み水、ガソリン、電気、ガスなどすべては、それらの仕事に従事する他人がいるからこそ、私たちは手にすることができるのです。そのことを忘れ、自分さえ良ければ他人はどうなっても構わないという行動をとり続けていると、私たちはいずれロビンソン・クルーソーのように資源を手に入れるために大きな苦労を背負うことになるでしょう。そんなところに住みたいと思いますか?
by T_am | 2011-03-24 22:41 | その他
 今回、風評被害というテーマを扱うにあたって、お詫びしなければならないことがあります。前回のブログで、「福島産の原乳と水道水および茨城産のホウレンソウ」という書き方をしました。正確には、「福島県川俣町で採取された原乳」と「茨城県高萩市や日立市など6市町村」のホウレンソウから暫定基準値を超える放射線が検出されたというものです。福島県や茨城県といっても広いのであり、この2つの県の全域が放射性物質で汚染されているかのような誤解を招く書き方は不適切であったと反省しています。申し訳ありませんでした。

 3月19日付のMSN産経ニュース、および日本経済新聞社のサイトにこの記事が載っており、日経新聞のサイトではさらに、「茨城県は19日、県下の農協と全市町村に対し、ホウレンソウの出荷停止を要請。同時に主な小売業者に対し、既に出荷されたものを販売しないよう求めた」と書いてあります。

http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819695E3EBE2E18A8DE3EBE2E1E0E2E3E39C9CEAE2E2E2?n_cid=TW001


 一部の地域のホウレンソウにしか放射性物質が検出されていないのに、なぜ県内の全市町村に対して出荷停止を要請するのだろうと不思議に思っていたのですが、その疑問は今日の新聞を読んで氷解しました。新聞には次のように書いてあったのです。

「野菜など生鮮食料品には原産地表示が義務づけられているが都道府県名を記せばよいことになっている。汚染食品の流通を完全に阻止するために県単位の出荷停止が必要になった。」(3月23日付新潟日報より)

 また、別なページには東大名誉教授 唐木英明氏の意見として次のような談話も掲載されていました。

「ハウス栽培のホウレンソウへの影響はほとんどないと思われるが、茨城県は出荷を全面停止した。科学的ではないが、一切出荷しないという対応で、風評被害の拡大を防ぐという姿勢は理解できる。ただ『大丈夫だが、皆さんが心配するだろうから出荷しない』と、理由を明確にすることが大事だ。」(同上)

 野菜の原産地表示が○○県産と書かれていることは知っていましたが、だからといって県全体を十把一絡げにして出荷停止とするのはいかがなものか? かえって風評被害を煽るようなものではないかとと思います。というのは(私もそうでしたが)人間は茨城県高萩市や日立市などで栽培されたホウレンソウと聞かされても、茨城県産のホウレンソウとしか記憶しないからです。

 風評被害は誤った理解と無知、そして不安によって起こります。

 すでにスーパーの店頭からは茨城県産のホウレンソウが消え、返品されたとのことです。それらのホウレンソウのすべてが汚染されているとはとても思えません。にもかかわらず、スーパー各社がなぜ店頭から茨城県産のホウレンソウを一掃したかというと、「あの店は放射能に汚染されている野菜を売っている」と消費者に思われるのが怖いからです。
 また、店頭から茨城県産のホウレンソウが撤去されたと聞いた消費者が「なんだか怖いわ。もしかしたら他にも汚染されている野菜があるのではないかしら?」と不安に思うのはしかたないことでもあります。さらに、20日夜のNHKニュースでは、「福島県は、安全が確認されるまでの間、県内で生産しているすべての露地ものの野菜について、出荷を自粛するよう生産者に要請」したと報道していました。
 いったい福島県はいつ、県内のすべての地域で露地栽培されている野菜の検査を行ったのでしょうかね? もっともこれは福島県独自の判断というよりも、国の強い働きかけがあったのではないかと思うのですが・・・

 風評被害を防ぐには、正しい情報をタイムリーに提供することが重要です。現状ではそれができないというのであれば、すみやかにできる体制を築き上げなければなりません。具体的に申し上げると、手間はかかりますが、最低でも町域ごとに放射性物質の検査を行い、基準値を超えるものは出荷しない代わりに、超えないものについては安全シールを貼って出荷するということをするのがよいと思います。放射性物質に汚染されるかどうかは運任せといえますが、汚染されていない野菜を出荷できる体制を整えることが消費者の信頼を得ることにつながりますし、農家を守ることになります(汚染されてしまった農家に対しては賠償が必要でしょう)。農産物直売によって、野菜におけるトレーサビリティ(生産から小売りまでの流通過程が追跡可能となること)が実現可能な状況になりつつありますから、決して不可能なことではないと思います。
 この過程で不正が行われるのではないかという心配もありますが、それをやったらその県のすべての農産物に対する信頼は失墜しますから、不正を行ったものはその土地にいられなくなってしまいます。そんなこともわからないほど農家はバカではありません。

 しかしながら、現実には、汚染されていない地域も含めて県単位で出荷停止という措置がとられています。そこには農家を守ろうという意識もなければ消費者に安全な食品を供給しなければならないという使命感も欠落しています。あるのはただ、問題が起こったときに自分が責任を追及されないようにするにはどうしたらいいか、という気持ちだけであり、他人のことなどどうでもいいと思っているのです。

 そういう人が行政のエライ立場にいると、本当に有効な手立ては何一つ打たれませんから風評被害が拡大していくことになります。その結果、農家は被害者となり、風評に踊らされる消費者もまた野菜不足や物価の上昇という被害を被ることになります。

 政府がとった対応は、県に対して出荷停止するよう指示をしたこと、および「食べてもただちに健康に影響を及ぼす値ではない」と繰り返すことくらいです。食べても健康に影響を及ばさないのであれば別に出荷停止にする必要はないのではないかと不思議でなりません。政府は「基準値を超える食品を数日間食べたとしても、今だけでなく将来にわたっても健康に影響はない。1年間食べ続けた場合に、初めて健康に影響が出てくる可能性がある。」と説明しているのですから。
 いったいホウレンソウを1年間食べ続ける人がどこにいるというのか、ちょっと考えればわかりそうなものですが、いっている本人はそのことに気づいていません。これはすなわり、自分の頭で考えたことではなく、他人がつくった文章を丸暗記して読み上げているからこういう変な説明をするのです。

 食品に安全上の基準値を設ける理由は、その食品が頻繁に食べられるものだからです。松茸で基準値を超える放射線が検出されたとしたら、政府が説明するように、それをたべたとしても「今だけでなく将来にわたっても健康に影響はない」といえます。もともと年に1回か2回くらいしか食べない食品なのですから。
 しかし野菜は違います。ホウレンソウが汚染されたということは、その地域で栽培されている他の路地野菜も汚染されているということであり、野菜という広いくくりであれば1年中食べ続けていることになるのです。したがって、厚労省が決めた暫定基準には意味があるのであって、これを軽視するような発言は誤解を与える元となります。
 出荷停止にする理由として、新潟日報の同じ欄に、「基準値を超えた食品を長期間食べ続けることは良くない。また、基準値を超えた食品を出荷段階で封じ込めて市場に出さなければ、安全な食品だけが流通することになり消費者も安心できる。」と書いてありました。
 これは甚だ不親切な書き方です。基準値を超えた食品が一種類でも出れば、他にも汚染されている食品がある可能性が極めて高いので、一品目だけの問題ではなくなくなるのです。そうなるとそれらの汚染された食品を何かしら食べ続けてしまう可能性があるので、基準値を超えた食品を出荷停止にするのです。
 したがって、安全な食品だけを流通させるには、検査対象を広げて安全なものとそうでないものを消費者にわかるようにすることが必要です。ところが今のやり方は一部の地域で汚染された食品が発見されたら県全体で出荷停止にするというものですから、極めて杜撰なやり方です。こんなことをしていたら福島県と茨城県の農業は壊滅してしまうでしょう。
 消費者がほしいのは安全であると保証された食品です。安全であるという保証が制度化されないまま、昨日まで食べていた食品がある日突然出荷停止になってしまえば、誰だって不安に思うのは当たり前ではありませんか。こういうことを平気でやるから、消費者は政府を信用しなくなるのであり、風評被害は人災であるというのはこのためです。

 こういうおかしなことを平然とやっているのは政府だけではありません。先ほどの東大名誉教授はこうも語っています。

「(前略)国の基準値を上回る放射性物質が検出されたが、『食べても直ちに健康に影響を及ぼす数値ではない』という政府の説明は正しい。基準値は、十分な余裕をとり、通常は100倍以上の安全な水準に設定されているからだ。」

 それならば出荷停止にする必要はないのでは? 基準値を超える食品をたとえ100グラムでも食べると被曝量がどうなるかについては、前回のこのブログでご紹介しました。また、問題は一品目の食品だけはないことは既に申し上げました。この東大教授はその危険性を見逃して(あるいは無視して)います。

「放出点(福島第一原発)と産地との距離も重要なポイントだ。放射線の影響は距離の2乗に比例して急速に減る。距離が10倍離れると、100分の1に減る。福島県や茨城県のすべての農産物が危ないかのように思われるのは避けなければならない。」

 光のように直進する性質のものには、「距離の2乗に比例して急速に減る」という法則があてはまりますが、放射性物質は風に乗って運ばれるのですからこれはあてはまりません。例外はいくらでもあります。その証拠に文部科学省が公表している「福島原発周辺のモニタリング結果」を地図上にプロットしたものがありますから、興味のある方はご覧ください。距離が同じくらいでも放射線量が20倍くらい違うという事例が載っていますから。

 ただし、「福島県や茨城県のすべての農産物が危ないかのように思われるのは避けなければならない」という意見には全面的に同意します(だからこの文章を書いているのです)。それならば、すべての農産物が危ないわけではないと証明することの必要性を訴えるべきです。言葉で納得させるのではなく事実によって証明するというのが科学者らしい行動でしょう。

「放射性ヨウ素131は、半減期が8日と短い。セシウムも地中に染みこんだり雨で流されたりして、特定の場所にとどまり続けるわけではない。」

 半減期が過ぎたからといって放射能(放射線を出す能力のこと)がゼロになるわけではありません。またセシウムも特定の場所にとどまり続けるわけではないとのことですが、たしかに時間の経過とともにその場所に残存するセシウムの量は少なくなっていくでしょうが、影響がないレベルにまで減少するのはいつなのかということは誰にもわかりません。そういう意味でこの先生がおっしゃっていることは気休めに過ぎないと私は判断しました。
 本当に安全であるといいたいのであれば、検査をしてそれを証明する以外に方法はありません。科学とはそういうものです。ゆえに、まことに失礼とは思いますが、この方は御用学者といわれてもしかたないのではないかと思うのです。

 国民は専門家ではないのですから、このような問題について無知であるのは当然です。知らないということは別に恥ずかしいことではありませんが、恥じるべきは知ろうとしないことです。そのあげく「なんだか怖いわ」といって風評に荷担し、買いだめや不買に走るというのは大人として、また市民としてどうかと思います。
 一方政治家も官僚も、責任を負わないようにするにはどうしたらいいかを優先的に考えるというのは自分のこどもに対して恥ずかしくないのでしょうか。もっとも、こういう人間は民間企業にもいくらでもいますから、いうだけ無駄なのかもしれません。どういうわけか、エライ人ほどそういう人が多くなっていくところをみると、今日の日本経済の停滞はその辺に原因があるのかもしれません。


付記
 前回のブログに掲載した体内被曝の放射線量の計算について、半減期を経過した場合放射線量もそれだけ減るということを無視していたように思います。そのことを考慮すると、ヨウ素131の場合、計算結果を半分にして理解した方がいいように思います。
 そうなると放射線量はだいぶ減るのですが、これは1回の摂取によって被曝する放射線量の計算にすぎません。汚染された食物が複数ある場合、それらを時間をかけて複合的に食べることになるわけですから、基準値を超えた食品のリスクというのは決して軽視していいというものではありません。
by T_am | 2011-03-24 00:30 | その他
 前々回のこのブログで、厚生労働省が定めた食品に含まれる放射性物質の暫定基準についてご紹介しました。念のため、もう一度おさらいしておきます。

(参考)厚労省が決めた暫定基準
ヨウ素の場合
飲料水や牛乳、乳製品     300ベクレル(1kgあたり)
乳児用調製粉乳         100ベクレル(同上)
根菜や芋類を除く野菜類    2000ベクレル(同上)

セシウムの場合
牛乳など              200ベクレル(同上)
野菜類や穀類、肉、卵、魚など 500ベクレル(同上)

※原子力安全委員会が定めた「安全審査指針類における放射線防護の関連既定-基礎調査」p68に基づいています。

※原子力資料情報室によれば、ヨウ素の場合で10,000(Bq)ベクレルを経口摂取した時の実効線量は220マイクロシーベルト(μSv)、セシウムの場合で10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は190マイクロシーベルトとのことです。
 したがって、暫定基準を実行放射線量に換算すると次のとおりとなります。

ヨウ素の場合
飲料水や牛乳、乳製品      220μSv÷10000Bq×300Bq=6.6μSv
乳児用調製粉乳          220μSv÷10000Bq×100Bq=2.2μSv
根菜や芋類を除く野菜類     220μSv÷10000Bq×2000Bq=44μSv

セシウムの場合
牛乳など               190μSv÷10000Bq×200Bq=3,8μSv
野菜類や穀類、肉、卵、魚など  190μSv÷10000Bq×500Bq=9.5μSv

 ヨウ素131の場合半減期は8.4日ですが、半減期というのは文字通り放射性物質が半分に減るまでの期間をあらわすものに過ぎないので、放射線量がゼロになるわけではありません。半減期の13倍の期間をとると元の量の1万分の1にまで減りますから、これくらいの期間が経てばほぼゼロになると考えてよいかもしれません(半減期の10倍の期間では元の量の千分の1になります。こちらを採用することも可能かと思います。)
 また、ヨウ素の場合吸収されたヨウ素の10%は甲状腺に集まり、残りは排出されるといわれていますから、それらを加味すると体内被曝は次のとおりとなります。(ただし90%が体外に排出されるまではこの10倍の数値の放射線を被曝することになります)

飲料水や牛乳、乳製品     6.6μSv×0.1×8.4日×13×24時間≒1730μSv
乳児用調製粉乳         2.2μSv×0.1×8.4日×13×24時間≒577μSv
根菜や芋類を除く野菜類    44μSv×0.1×8.4日×13×24時間≒11532μSv

 実際には野菜を1kgも食べる人はいないと思うので、100グラム食べるものとすると
11532μSv×0.1=1153μSvとなります。

 一方セシウムの場合、半減期は約30年と長くなりますが、100日くらいで体外に排出されるのでそれまでの時間数をかけると体内被曝の量がわかります。

牛乳など                3.8μSv×100日×24時間=9120μSv
野菜類や穀類、肉、卵、魚など   9.5μSv×100日×24時間=22800μSv

 ヨウ素の場合と同じように肉や野菜を1kgも食べる人は滅多にいないと思われるので、これも100グラム食べることにすると、22800×0.1=2280μSvとなります。
 通常1年間に浴びる自然界の放射線量が2400μSvといわれていますから、暫定基準はこれとほぼ同じであるということがわかります。ブラジルのガラバリでは1年間の放射線量が10000μSvといわれており、健康被害に苦しむことなく人が住んでいますから、この暫定基準は相当厳しい数値となっていると考えてよいと思います。

 ここで疑問に感じるのは、暫定基準の単位が1kgあたりとなっているのはなぜか? ということです。水であろうが牛乳であろうが野菜であろうが、あるいは肉であろうが1度に1kgを食べるという人はあまりいないと思います。水であれば1日に1リットルは飲むかもしれませんが、ほかの食品はそういうわけにはいきません。たとえば肉を1日に1kg食べる日本人は相当限られているといえるのですから、基準値を設けるのであれば、1回に食べる量(たとえば100グラム)を前提にするのが自然だろうと思うのです。でも、なぜかそうではありません。とても現実味のない1kgという数値を用いて基準が設けられているのです。
 こういう基準の設定のしかたをしていると、今回のように基準を超えた放射能が検出された場合、「1kgもホウレンソウを食べる人などいないのだから大騒ぎする必要はない」と考える人が出てきます。実際にツィッターをフォローしているとそのような発言をする人がいることがわかります。
 思うにこれは、風評被害によって農業にダメージを与えたくないけれども健康被害が発生したときには責任をとりたくないという厚労省の官僚たちの思惑の産物ではないでしょうか。福島県産の原乳と茨城県産のホウレンソウで暫定基準を超える数値の放射線量が測定されたときに、厚生労働省の大塚耕平副大臣は「ただちに健康に影響を与えるというものではない。全例のない事態の深刻さを考え、すみやかに報告した」と述べました。
 それはそうでしょう。暫定基準はもともとかなり厳しいものとなっているのですから、これを多少超えたからといって「ただちに」健康に影響を与えるとは考えにくいのは事実です。けれども暫定基準は、先ほど示したように、たった1回口にしただけで人間が1年間に浴びる自然界の放射線量と同じだけの放射線を浴びるというものです。これが度重なれば健康に影響を与えることはないとは誰にも断言できなくなります。

 大塚厚生労働副大臣がいう「ただちちに健康に影響をあたえるというものではない」というのが急性放射線障害のことを指すのであれば、これはまったくその通りです。一度に数百ミリシーベルト以上の放射線を浴びない限り急性放射線障害は発症しません。けれども食品に放射線に対する基準を設けるのは急性放射線障害を想定しているからではありません。体内被曝によって人体にダメージが蓄積されるのを防ぐ目的で基準を設けるのですから、「直ちに健康に影響をあたえるものではない」という説明はナンセンスです。

 もしも、本心からそのように思っているのであれば、大塚副大臣は厚労省の高級官僚たちといっしょに福島産の原乳と水道水および茨城産のホウレンソウをつかった料理を食べてみせればいいのです。けれどもそういうパフォーマンスが演じられたというニュースは聞きませんから、この発言を信用する国民はあまりいないだろうと思います。

 ホウレンソウや原乳のように特定の食品で基準を超える放射線量が検出されるというのは、その地域で生産されているほかの農産物も汚染されている可能性が極めて高いということを意味しています。放射性物質はなにもホウレンソウ畑や乳牛の飼料にだけ降り注ぐわけではありません。他の野菜畑や河川にも降っているはずです。その中でたまたまサンプル検査をしたホウレンソウと原乳で基準を超える放射線量が測定されたということなのです。
 過去の薬害訴訟を見ても、国が素直に責任を認めたという事例はありません。憎らしいほどしらばっくれて、どうにもならなくなってからしぶしぶ認めるということを繰り返してきました。
 官僚たちがそういう不誠実な態度をとる限り被害者は後を絶たないのですが、それを防ぐために安全基準が設けられているわけです。したがって「暫定」基準であっても軽視することは許されません。食品が安全だといいたいのであれば、「直ちに健康に影響を与えるものではない」などと根拠のない発言を繰り返すよりも、ホウレンソウ畑や牛舎のまわりにある畑や田んぼでつくられる米や野菜の放射線量を測定して、それらが基準値以下であることを示すべきです。
 絶対安全だといってきた原発が事故を起こして、これだけ大きな影響を与えている以上、農産物のサンプル検査ではなく、もっと大規模な放射線検査を行って事実はこうなっているということを示すことが必要です。その結果によっては、汚染がさらに広まていることが明らかになるかもしれません。それならそれで対策をきちんと講じればいいのです。国民に対し事実をあきらかにすること。そのうえで不都合なことがあればその対策を講じること。それが責任をとるということではありませんか。誰も責任をとろうとしないから、国民は不安を感じて買い控えや買いだめを行うのです。福島原発の事故処理もそうですが、政府官僚たちには、この期に及んでまだ隠そう、ごまかそうという思惑を感じます。
 厚生労働省の庁舎内にある職員食堂(そんなものはないかもしれませんが)で、福島県産の牛乳と茨城県産のホウレンソウを仕入れたというニュースを聞いたら、大塚副大臣の発言を信用してもいいと思います。
by T_am | 2011-03-23 00:00
 文部科学省が公表を始めた「福島第一原子力発電所のモニタリング結果」をみると、原発の北西約60kmにある福島市での測定値も上昇していることがわかります。

3月20日 9時10分  5.0マイクロシーベルト/h
3月20日 17時30分  6.0マイクロシーベルト/h
3月21日 8時45分  4.5マイクロシーベルト/h
3月21日 13時38分  5.0マイクロシーベルト/h

(出典)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/20/1303727_2019.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/21/1303995_2116.pdf


 そこで今回は、なぜこのような高い数値が観測されるのかについて考えてみることにします。
 原子力発電所の周辺で放射線測定値が上昇するというのは、原子炉から放射性物質が漏れているということに他なりません。ここで問題とすべきは、放射性物質がどのような漏れ方をしているか? ということです。

 機動隊や消防による放水が行われるようになって数日が経ちます。なぜこんなことをしているかというと、原子炉の中の燃料棒の過熱を防ぐためと説明されています。燃料棒の温度が上昇を続けると燃料を包んでいる被覆菅が溶けて中に入っている燃料が圧力容器の中に落ちていきます。これが大量に発生すると再臨界が起こるおそれがあること、さらに圧力容器を溶かしたり、原子炉格納容器を破損させることにつながりかねません。そうなると今までとは比較にならない量の放射性物質が大気中にまき散らされることになってしまいます。
 そのためには原子炉内部にある燃料棒を冷やさなければならないということは今まで政府・マスコミがさんざん伝えてきたことです。
 原子炉の冷却水というのは密閉された菅の中を循環していますから、そこで放射性物質が外に漏れ出ることは、よほどのことがない限り、ありません。しかし、津波により非常用電源が使えなくなってしまい、冷却水を循環させることができなくなったことにより、燃料棒の温度は上昇を続けています。そのことで原子炉の圧力が上がり、そのままでは原子炉圧力容器が破損するおそれが出てきました。これに対し、東京電力がとった対策は弁を解放し内部の水蒸気を逃がしてやることで、圧力容器内の圧力を減少させることでした。この時点で放射性物質が外部に拡散することになります。
 次にとった対策は、皆様ご存知のように、原子炉の内部に海水を注入することでした。これは、冷却水が蒸発したために、燃料棒が空気中に露出してしまい、さらなる温度の上昇を招く危険性があったからです、しかしながら、実際には圧力容器の水位が下回るという事態に陥り、また、それまでは盲点であった使用済み核燃料を貯蔵しておくための、格納容器内のプールの水温も上昇しているということがわかったのです。
 そこで次の方策として、水をつぎ足すことで圧力容器の中の水位を上昇させるという方法がとられました。これは原子炉内部の閉鎖系で循環する水とは違い、外気に面した開放系に水を大量に投入することを意味します。
 ものを冷やすというのは、そのものが持っている熱を奪うことによって行われます。そのために水が使われる場合。水が蒸発することによって大量の熱を奪っていきます。さらに、この水は外気に面した開放系の中の水ですから、原子炉の中から漏れ出た放射性物質は、放水によって注ぎ込まれた水が蒸発するのといっしょに大気中にばらまかれることになります。政府と東京電力の判断は、周辺に放射性物質が飛散したとしてもメルトダウンによって原子炉が破壊されるよりはましだという決断をしたものです。ただし、そのことを正直に発表すると、放射性物質を飛散させるとは何事だと猛反発を受けるおそれがあるので、そのことは伏せておいて、燃料棒を冷やすということだけを強調しているのでしょう。そのため、これまで原子炉の周囲でこれだけの放射線が測定されたという発表が行われていましたが、いつの間にかそれがなくなってしまいました。放射線の測定をしていないはずがない(作業員は放射線を測定してから作業を終了することになっている)ので、公表する材料がないわけではありません。
 現在、放水作業と並行して外部から電源を供給する工事が行われています。電源が供給されれば(まだまだ紆余曲折があるかもしれませんが)冷却水を循環させることが可能になり、これ以上放射性物質を飛散させることなく燃料棒を冷ますことができるようになります。
 残る問題は、そういう状態に落ち着くまであと何日を要するかというということです。それまでの間、放射性物質の飛散は止まらないので、その日の風向きによっては特定の地域で高い放射線量が観測されることになります(どれくらい高いかについては、先ほどご紹介した文部科学省のリンクをご覧になってください)。
 その際にいえることは、現時点で高い値を観測している地点でも、これから先ずっと同じ傾向が続くとは限らないということです。既に申し上げたとおり、放射性物質はその日の風向きによって流れていく方向が変わっていきます。今日高い値を示したとしても、明日もそうなるとは限らないのです。その証拠に、文部科学省の発表資料をみると、原発からの距離は同じでも方向によって観測値がまるで異なっていることがわかります。つまり、放射性物質は円状に拡散していくのではなく、どちらかというと帯状に拡散していくのであり、その方向はその日の風向きによって決まるのです(風に流される煙突の煙をイメージしていただくとよいと思います)。

 自分が住んでいる地域が安全かどうかについては、文部科学省が全国の県庁所在地(一部例外あり)でのモニタリングデータを公表しています(文科省のトップページから辿ることができます)ので、その数値がどのように変化してるかを観察すればわかります。21日の観測データを見る限り他の都道府県で危険値を示しているところはありませんし、今後福島原発において破局的な事故が起こらない限り、各地の観測値が急上昇するということもないと思います。


付記
 何日か前に、東京電力では原子炉圧力容器の内部に海水を注入すると同時にホウ素を投入するという発表をしました。ホウ素は中性子を吸収する性質があるため、高温によって溶け落ちた燃料が容器の底に溜まり、再臨界(連鎖的核分裂の開始)を引き起こすという事態を回避するための予防的措置であったと解釈することができます。
2.今回高い値が測定された地域の農産物は、当分の間放射線検査が欠かせないと思います。放射性物質が附着した食品を口にすることは体内被曝の原因となります。また、これらの地域では水道水の汚染も懸念されますから、その場合自治体は給水車でよそから水を持って来なければならなくなるでしょう。
by T_am | 2011-03-22 00:52 | その他
 福島原発の事故において、当初観測された放射線の値が発表されていましたが、いつの間にかそれが発表されなくなってしまいました。しかし、20kmの避難地域の指定は解除されていません。何がどうなっているのか、さっぱりわからないという状態に陥っており、そのことが東京は危ないから西日本に移動しようという動きを招いている原因になっているように思います。
 私は専門家ではありません。しかし、放射線による危険性をどのように理解したらいいのか専門家が解説してくれないので、自分なりに考えをまとめることにしました。ですから、以下にまとめることは素人考えと批判されてもしかたないのであり、間違っているところがありましたら指摘していただけると助かります。

1.人間の体には自己修復機能が備わっています(許容限界)
 高校の生物の授業でDNAの二重らせん構造を目にしたことがあると思います。なぜこうなっているかというと、いざというときのためのバックアップを可能にするためです。つまり、放射線などにより片方の一部が損傷しても、もう片方によって自動的に修復されるようになっているのです。
 放射線を大量に被曝して染色体(DNAの容器)が破壊されてしまえばダメですが、そうでない限り、放射線を浴びても時間の経過とともに修復されるという機能が人間の体には備わっているので、放射線による健康被害を考えるときに「許容限界」という点を考慮する必要があります。
 テレビで大学教授などが胃のレントゲン検査では600マイクロシーベルトの放射線を浴びているからこれくらいの放射線が測定されたからといって健康に影響が出ることはないといういい方をしています。これも、もう少し正確にいうと一度に600マイクロシーベルトという放射線を浴びても人間の自己修復機能の許容範囲内であり、放射線を浴びることによってたしかにダメージは受けるものの時間の経過とともに損傷した箇所が修復されていくということになります。だから一度に数十枚もレントゲン写真を撮るということはしませんし、毎日レントゲンを撮り続けるということもしていません。そんなことをすれば修復機能の限界をたちまち超えてしまうからです。
 人間は人によって体力が異なれば体質も異なるので、自分の体の修復機能の限界を数値で示すことはできません。そこで、大まかですが「目安」を設けて、それを超えなければいいと考えた方が現実的となります。

2.既に知られている「目安」をどのように理解するか
 Wikipediaで「シーベルト」を検索してみると、どれくらいの放射線を一度に受けると健康被害が発生するかが載っています。それによると(単位はミリシーベルト、またカッコ内は筆者)、

・250mSv             白血球減少(免疫機能の低下、造血幹細胞にダメージ)
・500 mSv             リンパ球減少(同上)
・1000 mSv             急性放射線障害の発症
・2000 mSv             出血・脱毛、致死率5%
・3000~5000 mSv        致死率50% 
・7000 mSv以上          致死率99%以上(東海村の臨界事故の犠牲者が浴びたと推定される放射線の量です)

 これは健康被害ではありませんが、次の基準も定められています。
・100mSv            放射線業務従事者が法定の5年間にさらされてよい放射線の限度(単純平均すると1年間で25mSvとなります)

 Wikipediaで紹介されている目安は一度に浴びる放射線の量ですから、一般市民がこれに該当するということはまず考えられません(核爆発でも起これば別ですが)。むしろ、今考えなければならないのは、一度に浴びる放射線の量ではなく、1時間あたりの放射線量は少ないけれども、それを継続して浴びた場合どうなるかということです。この疑問に政府は答えてくれていませんし、マスコミも質問してはいません。また、テレビ登場する学者たちも1回の被曝量と比較して、それよりもはるかに少ないのだから何も問題はないなどと見当違いの発言をしています。
 放射線による健康被害を考える場合、継続して放射線を浴びた場合どれくらいで人体に影響が現れるかということを抜きにして考えるわけにはいきません。しかしながら、そのような記録はないというのが実情です。というのは誰も測定した人がいないからです。
 チェルノブイリの事故によって大勢の被害者が発生しました。しかし、彼らがどれくらいの量の被曝をしたか(被曝した総量と1時間あたりの被曝量)は、推定でしかわからないのです。

付記
 このような目安が書かれたものは何種類もありますが、各目安に時間が書いていないものは一度に浴びるこれだけの放射線を浴びるとこうなりますという意味です。これらの目安は、1回あたりの被曝量と年間の被曝量をいっしょに記載しているので、結局何が何だかわからないというものになっているのです。次にご紹介するのはその一例です。

(「日常生活と放射線」p3 文部科学省作成)


 また、文部科学省作成の資料には次のような記載があります。

・100mSv/年       放射線業務従事者及び防災に係る警察・消防業務従事者に認められている上限(これは1年間の累計ですから、たとえば毎時50mSvの放射線が観測されている地点では、2時間を超えて作業することはできないということ意味しています。)


3.累計被曝量をどのように考えるか
 一般市民の場合、核爆発でも起こらない限り、一度に大量の放射線を浴びるというのはまず考えられないのですから、1時間あたりの放射線量はわずかでもそれが累積されていった場合どうなるかということを考えなければなりません。
 既に申しあげたように、急性放射線障害の発症事例では一度に浴びた放射線の量が問題とされており、少しずつじわじわと放射線を浴びた場合、これ以上の放射線を浴びたら健康障害が起こるという記録はありません。
 そこで、先ほどの100mSv/年という基準と25mSv/年(5年間の単純平均)を元に考えることにします。ただし、これらの数値は放射線業務従事者に対するものですから一般市民の場合はこれよりも厳しく考える必要があると思います。特に乳幼児と妊婦の場合はもと厳しく考える必要があります。

 25mSv/年を1時間あたりに換算すると、2.8539マイクロシーベルト/hとなります。この数値が何を意味するかというと、その地域に住めるかどうかは、測定される放射線の量がこれを超えるかどうかによって左右されるということです。ただし、これは警察官や消防士のように健康で体力旺盛な成人男子を想定した数値ですから、乳幼児は妊婦に対して適用できるものではありません。
 地球上で比較的放射線の多いところとしてブラジルのガラバリというところが引き合いに出されています。ここでの放射線量は10mSV/年ですが、健康被害の報告はありません。そこで、10mSv/年を1時間に換算すると1,1416マイクロシーベルト/hとなります。つまり、これくらいであれば人間は何とか暮らしていくことができると考えて差し支えないと思います。
 逆に言えば、これを超える数値がいつまでも観測されるようであれば、その地域に住み続けることは危険であると考えてもやむを得ないということになります。
 先ほどご紹介した文部科学省作成の資料には、福島と宮城を除く県庁所在地で観測された放射線の量が掲載されています。これをみると最も観測値が高い水戸市でも3/20時点では0.176マイクロシーベルト/hが観測されていることがわかります。次に高い宇都宮を除けば、全国ではこの4分の1程度の数値しかありませんから、今のところ安心していられると考えて差し支えないと思います。
 なお、これらの観測値は3/20時点のものであり、今後状況の変化によっては危険レベルになることもあるかもしれませんし、そうならないかもしれません。また、観測データが公表されているのは各県の県庁所在だけです。けれども、福島原発の事故の影響が懸念される関東地域ではもっと観測地点を増やすべきだと思います。たとえば栃木県でも福島県に近い地域と千葉県・埼玉県に近い地域とでは、放射性物質の到来のしかたが異なるわけですから、もっときめの細かい観測網を構築してもよいはずです。

4.時間という要素を考慮する
 仮に、あなたがお住まいの地域で1.1416マイクロシーベルト/hを超える放射線量が観測されたとします。だからといって直ちに避難しなければならないというわけではありません。
 というのは、観測値というのは絶えず変化しているものなので、たまたま超えたからといってそれが永久に続くというわけではありません。むしろ、継続して観測値を見守り、それが上昇傾向にあるのか、それとも一時的なものなのかなどのトレンドを見極める必要があります。
 また、仮に上昇傾向にあったとしても、すぐに避難しなければ命に関わるというものでもありません。皆が一斉に避難を始めたら新幹線を始めとする輸送機関は大混乱するはずです。そのような混乱は道路にも及びますから、物流も大きな影響をうけることになり、商品の流れが滞るようになることも予想されます。そうなると、その地域に残るという人たちが迷惑することになるので、避難するにしても冷静かつ計画的に避難するべきです。(たとえば、新幹線で避難者専用列車を1時間に数本という割合で設けるということをすれば、それだけ混乱を回避することができます。)
 計画的避難に1ヶ月を要したとしても、その間に浴びる放射線の総量は約833マイクロシーベルト/月を超える程度ですから、問題になりません。

5.政府とマスコミに期待したいこと
 今どういう状況にあるのかを伝えてほしいと思います。福島原発では放水作業が始まっていますが、保安院が提供する情報をみてもそれ以上のことは書かれていません。知りたいことは、原子炉格納容器の中がどのような状態なのか、および原子炉周辺の放射線量がどれだけ観測されているかということです。格納容器の中がどうなっているのかわからないならわからないでもいいので、わかっているデータから推測できることだけでも発表すべきです。できれば、その状況によっては新たにこのようなリスクの発生が予想され、それに対してはこのような対応策が考えられるというところまで説明してほしいと思います。また、原発周辺の放射線の観測値の変化もきちんと発表してほしいと思います。事故発生からしばらくの間は散発的に発表されていましたが、いつの間にかなくなってしまいました。仮に、測定すること自体が危険であるというのならそれも発表すべきです。また、原子炉から放射性物質が漏れていることは確実なので、どのような放射性物質が大気中に放出されたのか、浮遊塵を採取して分析した結果も公表してほしいと思います。

付記
 3/20 文部科学省は1都8県で空気中から放射絵聖物質が検出されたと発表しました。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110320-OYT1T00544.htm


 また、その日の風向きによっては、原子炉から漏れ出した放射性物質がどのように流されていくのかというコンピュータ・シミュレーションの結果も公表してほしいと思います。もちろん、何の対策も講じないままシミュレーションの結果だけを公表すれば大混乱するのは目に見えています。だからといってシミュレーションをしなくていいというのでは危機管理能力が疑われます。どのような危機が起こるかあらかじめ想定するから、ではどのような対策を講じなければならないかという発想につながるのです。
 最後にお願いしたいことは、関東の観測地点を大幅に増やしてほしいということです。風向きと場所によって放射性物質が飛来する状況はまるで異なるのですから、国民がそれを知るためにも観測地点網をきめ細かく設けることは必要です。

 菅総理も枝野官房長官も記者会見の時にまっさらの作業服を着ています。別に現場へ行くわけでもないのになんで作業服を着ているのだろうと不思議でなりません。善意に解釈すれば、必要なときはいつでも現場に飛び出していけるように作業服を着ているのだと理解することもできるのですが、国民に対して必要にして充分な情報の公開ができない人が現場に行ってもかえって迷惑をかけるだと思います。
 関東で起きているガソリンや食料品の買いだめは、軽率に行動する人の責任が大きいのですが、情報をきちんと公表しない政府と不安を煽るだけのマスコミにも責任があります(冷静に行動してくださいと呼びかけるだけで事態が沈静化したという事例は過去にありません)。大切なのは、どのような対策をとったかということであり、今までの状況を見る限り甚だ心許ないと申し上げざるを得ないのです。

 政府が便りにならない(あるいは信用できない)のであれば、自分の身は自分で守らなければなりません(そのためには他人はどうなってもいいという意味ではありません)。そのための判断材料が乏しい中で、どのように考えたらいいのかということを今回は整理してみました。誤りがありましたらご指摘いただけると幸いです。
by T_am | 2011-03-20 22:22 | その他
 新潟県では福島原発の事故を受けて県内の6つの地点で放射線測定のモニタリングポストを臨時に設置し、柏崎原発周辺にある2つの既存モニタリングポストのデータと合わせてプレス発表しています。

http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1299874309481.html

 観測値の発表は1時間おき(観測の30分後)に行われており、そのうち午前0時の測定値が翌朝の新潟日報の朝刊に掲載されるようになりました。
 これを見た主婦たちは口々に「怖くて布団や洗濯物を外に干せない。」ということをいっています。そりゃそうでしょう。健康に害はありませんとどれだけ説明されても、今まで意識していなかったものを突然目に見える形で見せつけられたのですから。たとえていえば、自分の皮膚に生息している細菌を顕微鏡で拡大して見せつけられるようなものです
 このように、主婦たちの反応は理屈ではなく感情によるものですから、新潟日報も何もわざわざ社会不安を煽るようなことをしなくてもいいのに、と思ってしまいます。まだ確認したわけではありませんが、スーパーの店頭から室内物干しが消えるかもしれませんね。そうなると、これはガソリンや食料品の買い占めと同じことになってしまいます。もっとも、いっとき除菌グッズが売れまくったけれどもその後下火になったように、いずれ薄れていくはずですなのですが・・・。それにしても県も新聞も発表するなら、もう少しやり方を考えたらどうかと思います。

 そもそもこういう刻々と変化するものを伝えるのに新聞という媒体は適切ではありません。午前0時の測定値(発表は0時30分ですから、朝刊に載せるために新聞社が相当苦労しているだろうということは推測できます)を朝の6時頃に知らされてもねえ。新聞が伝えるのは毎日午前0時の測定値ですから、たとえば、午前1時に突然危険値が観測されたとすると、新聞がそれを伝えられるのはまる1日経ってからということになるのです。
 だからこの発表は健康診断のγ-GTPのようなものだと思えばよいのです。つまり、測定した時点では異常は発見されなかった、という意味に過ぎません。そのことを6時間後に知らされても、あまり意味があるとは思えません。それよりも、万一危険値が測定された場合、どういう行動をしたらいいかも含めて直ちに住民に周知させることの体制づくりを進めてくれた方が社会にとっては有益でしょう。もっとも、新潟県が1時間おきの測定値をプレス発表し、新聞がそのうち午前0時の測定値を翌朝の紙面に載せるという悠長なやりかたは、「どーせ危険値なんか出るわけがないんだから、とりあえずこういうことをやっておけばいいんだ。」という官とマスコミの「暗黙の合意」があるのかもしれません(徹夜でデータの集計と発表資料の作成をしている防災担当者には申し訳ないのですが)。
 
 わたしたちは常にごく微量の放射線を浴びています。わずかですが宇宙から放射線が降り注いでいますし、自然界にも放射性同位元素がわずかですが存在しています。炭素14という放射性同位元素は、大気上層で宇宙線によって生成され大気中に拡散していきます。それが二酸化炭素とという形で植物によって取り込まれ、その植物を動物が食べることによって、動物の体内にも炭素14は取り込まれていきます。
 炭素14の割合は普通の炭素のおよそ1兆分の1程度ですから、私たちが意識していないだけで、どこにでも存在しているといえます。どこにでも存在しているということは、時間とともに変化するということはあまりないということでもあります(ただし、雨や雪が降ると大気中の放射性同位元素が降下してくるので、放射線の測定値は一時的に10倍くらいになります)。ですから、モニタリングデータの値が突然跳ね上がったという場合は、もともと自然界に存在していた以外の放射性同位元素がそこに現れたという証になります。突然現れた放射性同位元素といえば、核爆発か原子炉で生成されたものに決まっていますから、これは警戒を要するということになります。逆にいえば、そういうことが起こらない限り気にする必要はないといえるのです。
 県も新聞もそういうことをきちんと説明したうえでデータの発表をすればいいのに、そういうことにまで気は回らないようです。これでは社会不安を煽るだけですし、真面目に徹夜してデータの集計をしている職員の苦労も報われません。
 現場の努力を無駄にするのは安全なところにいて、ああでもないこうでもないといっている人たちであることは、今回の福島原発の事故をめぐる政府と東京電力の対応をみていてよくわかりました。それと同じことが新潟県でも起きているわけです。事実の発表のしかたについて、この機会に整理しておいた方がいいように思います。


付記
 原子力資料情報室(CNC)   によれば、原子炉で生成される放射性同位元素の主なものにヨウ素131(半減期8.4日)、ヨウ素133(半減期20,8時間)、セシウム134(半減期2.06年、核爆発では生成されず原子炉内で生成される)、セシシウム137(半減期30.1年)があります。ヨウ素に比べセシウムの方が半減期がはるかに長いため、人体に与える影響もそれだけ長期間にわたるといえます。厚労省が決めた食品の暫定基準値で、セシウムの方が厳しいのはそのためかと思われます。
 なお、ベクレルという単位は、1秒間に1個の原子核が崩壊するときを1ベクレルとしており、この値が大きくなればそれだけ多くの原子核が崩壊していることになるので、発生する放射線の量もそれだけ大きくなることを意味します。

(参考)厚労省が決めた暫定基準
ヨウ素の場合
飲料水や牛乳、乳製品     300ベクレル(1kgあたり)
乳児用調製粉乳        100ベクレル(同上)
根菜や芋類を除く野菜類    2000ベクレル(同上)

セシウムの場合
牛乳など           200ベクレル(同上)
野菜類や穀類、肉、卵、魚など 500ベクレル(同上)

※原子力安全委員会が定めた「安全審査指針類における放射線防護の関連既定-基礎調査」p68に基づいています。

※原子力資料情報室によれば、ヨウ素の場合で10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は220マイクロシーベルト、セシウムの場合で10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は190マイクロシーベルトとのことです。野菜を1kg食べる人はそう多くはないでしょうが、飲料水や牛乳などであれば1kgの摂取というのはありそうです。これらの比較的大量に摂取しやすい食品における暫定基準を被曝線量に直すと次のとおりとなります。

ヨウ素   0.0000733マイクロシーベルト
セシウム  0.000038マイクロシーベルト

 実際にはこの数値に半減期の時間数(セシウムの場合は半減期が長い。しかし体外に排出されるまでのおよその日数が100日以上なので、それまでの時間数)をかけると、通常観測される放射線測定値とそれほど変わらないという結果になります。
by T_am | 2011-03-20 08:53 | その他