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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

カテゴリ:言葉( 16 )

 バラエティ番組は他愛のないものが多いのですが、そこで使われているテレビ用語には、ときどき、おや? と思うものがあります。今回は2つばかり例をあげてみましょう。

1.われわれは○○を直撃した
 人に会って重要なことを聞き出すというシチュエーションで使われているようです。直撃という言葉は、爆弾や砲弾が命中すること、転じて「台風が本土を直撃した」といういい方が生まれました。
 これらの用法に共通するのは、それによって多大な損害(ダメージ)を与えたという意味です。この語感は今でも多くの日本人に共通するものであり、その仰々しさゆえにマスコミが好んで使うわけです。
 いっぽう、芸能レポーターが使う「直撃インタビュー」という言葉は、なかなか会ってもらえない相手に直接ぶつかるというイメージが元になっているように思います。もっとも、インタビューというのは直接会って聞き取りを行うという意味ですから、重箱を重ねるような用法であるといえるのですが、「直撃」という言葉のもつ仰々しさが視聴者の興味をひくということを計算しているのでしょう。
 先日、テレビを観ていたら、「われわれは○○を直撃した」とナレーターが述べた直後に、相手に電話をかけて聞き取りをしているシーンが放映されたのには笑ってしまいました。電話をかけて聞くことまで直撃というのかね。もっと難易度の高いインタビューならともかく、こんなことにまで直撃という言葉を使うようじゃ、そのうち「我々は下校途中の小学生を直撃した」などと大まじめでいうようになるのではないか? と思ったのです。
 こういういい方がテレビで横行するようでは、人にものを尋ねることを「直撃する」と勘違いするおっちょこちょいも登場するかもしれません。
 そういう使い方をする人が増えていけば、たとえ今は間違った用法であったとしても、将来は正しい使い方ということになり、国語辞典にも掲載されるようになります。それが悪いというわけではありません。言葉の意味はこういうふうにして変わっていくのですから。

2.われわれは○○に潜入した(あるいは「侵入した」)
 一般には公開されていない施設にテレビカメラが入る場合にこういういい方をしているようです。
 ただし、「潜入」とは黙って入り込むこと。また、「侵入」とは問答無用で入り込むことをいいます。ちゃんと取材許可をとって撮影しているはずですから、「潜入」とか「侵入」という言葉を用いるのはおかしいのですが、なぜか台本制作者はこういう言い回しが好きなようです。
 以前、「われわれは○○に侵入することに成功した」といいながら、向こうの職員が施設内を案内し、いろいろと説明していたのを見たときは爆笑しました。
 中学生にこういう番組のVTRを見せて、日本語としておかしいところはどこか? という教材にすると国語嫌いの生徒が減るかもしれません。
by T_am | 2011-01-03 23:05 | 言葉
 新潟市が大雪となり、早朝から交通機関が混乱しました。新潟というと雪国というイメージがあるようですが、新潟市そのものは雪が積もることが珍しく、ちょっと雪が積もると交通機関が麻痺するのです。
 新潟空港でも欠航が相次ぎました。大阪へ行く用事があったので、朝から空港で飛行機が飛ぶのを待っていた(結局欠航しました)ときに聞いたアナウンスで次のようなものがありました。

 お出迎えのお客様にご案内いたします。千歳空港○○時発●●●便は、新潟空港の除雪が延期されているため千歳空港に引き返しました。ご了承くださいますようお願い申し上げます。
 引き続きご案内申し上げます。新潟空港●●時発千歳空港行き▲▲▲便は欠航いたします。ご搭乗予定のお客様はご了承くださいますようお願い申し上げます。

 了承するという言葉には、「受け入れる」というニュアンスがあります。ですから、「ご了承ください」という場合は、どうか文句を言わないでね、という意味が込められることが多いようです。しかし、いわれる側にすれば、既成事実となっているので「嫌だ」といってもどうしようもありません。空港のカウンターで職員に食って掛かっている人もいましたが、素直に受け入れがたいという気持ちが働いたのだと思います。結局は諦めて帰って行きましたが、こういうときの窓口の職員というのは気の毒だと思いました。
 そう思うと、「ご了承ください」という言葉には「諦めてください」という意味で使う場合もあるのだと気がつきました。

 そういえばこういうアナウンスもありました。

 新潟空港の除雪の完了はさらに2時間遅れて14時となる予定です。新潟空港発7時50分発の大阪伊丹空港行き516便は14時以降の出発を予定しております。ご搭乗をお待ちのお客様にはどうかご理解くださいますようお願いします。

 さすがに「ご了承ください」というのは気が引けたのでしょう。「ご理解ください」という言い方をしていましたが、これには「ごめんね。我慢してね。」という言外のメッセージが込められていたように思います。
 日本語は奥が深いですね。(結局新幹線で大阪まで行きました。)

追記。新潟空港の除雪は結局16時までかかったそうです。7時50分発の大阪行きの機体は昨夜のうちに新潟空港に到着していたのですが、大阪へ飛んでもその後の運行スケジュールに組み込むことができないので、結局欠航になりました。17時25分発の大阪行きは沖縄から飛んできた飛行機が今度は大阪へ向かうという運行スケジュールなので、こちらは無事に飛んだとのことです。
 飛行機というのは1便が欠航すると、その機体を使って運行するすべての路線が欠航せざるを得ないということなのだそうです。
by T_am | 2009-12-18 00:34 | 言葉
 一昨日、ニュースを漁っていたら、なんだこれは? という見出しを見つけました。

北朝鮮、オバマ政権「妖術ろうしている」と非難に踏み切る(読売新聞 09.05.04 19:40)  
 「妖術ろうしている」とはどういう意味だろうと考えたのですが、結局わかりませんでした。そこで、記事を読んでみることにしました。以下はその記事の引用です。」

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は4日、弾道ミサイル発射を非難する国連安保理議長声明の採択に当たって、米国が「主導した」としてオバマ政権を非難した。
 北朝鮮はこれまで、「米朝対話」路線を掲げるオバマ大統領への批判を慎重に避けていた。
 報道官は「米国が我々の衛星発射を必死に弾道ミサイル発射だと強弁する政治的狙いは、何とか制裁の口実を作り、わが国の国防工業を物理的に窒息させることにある」と指摘。その上で、「米国の現政権は『変化』や『多国間協力外交』と騒ぎ立て、妖術を弄(ろう)しているが、気にくわない国々を力で圧殺しようとした前政権と少しも変わらない」と述べ、名指しは避けながらもオバマ政権を非難した。(以下略)

 なんと、「妖術ろうしている」とは「妖術を弄している」ということだったのですね。「策を弄する」といういい方があるように、「○○を弄する」というのが通常の用い方です。だから「を」省略するとわからなくなりますし、何よりもひらがなで書いているので余計わからなくなるのです。
 推察するに、新聞というのは親切にも、リテラシーが相当低い読者でも新聞を読むことができるようにという編集方針で、ちょっと難しい漢字には( )でくくってふりがなを表示してくれています。ところが、見出の場合字数制限があるのでふりがなをつけるだけの余裕がなかったものと見受けられます。
 それならそれで、もう少し違う言い回しがあると思うのですが、この新聞の編集者は、「妖術」といういささか時代がかった言葉を使いたかったものと思われます。北朝鮮の報道官が実際にこの言葉を用いたかどうかはわかりません。ニュースソースをあたっても、私には翻訳できないからです。因みに、このところを朝日新聞は「術策を弄している」と表現しており、産経新聞に至っては触れていません。だから、実際にどのような言葉が使われたのかはわからないのです。
 仮に、読売新聞の報道が正確であるとすれば、

 北朝鮮、オバマ政権が「妖術を弄(ろう)している」と非難

 とでもしておけばよっかたのに、と思わずにはいられません。今まで北朝鮮がオバマ政権に対する論評を控えてきたという背景を強調するために、「非難に踏み切る」という動きのある書き方をしたのかもしれませんが、欲張りすぎた結果、かえって意味が通じない見出しとなったのだと思います。
by T_am | 2009-05-06 06:04 | 言葉
 高島俊男さんが以前週刊文春に連載されていた「お言葉ですが・・・」の中で、その言葉が持っているイメージを解説してくれる辞書はないものか、という趣旨のことを書いていらっしゃいました。
 今回はその受け売りです。ただし、高島さんのご意見から逸脱している部分もかなりあることをお断りしておきます。興味のある方は本家である高島さんの文章をご覧になって下さい。読み切り連載という形式で、どれを読んでも面白く、蒙を啓くという言葉がぴったりの名著です。

続き
by T_am | 2008-11-08 06:47 | 言葉
 私は、どちらかというとお人好しなので、きらいなものというのはそう多くはないのですが、歳をとるにつれて、きらいな言葉というのが増えてきました。時代が変わっても自分がそれについて行けないということのあらわれなのでしょう。

続き
by T_am | 2008-11-07 22:01 | 言葉
 私の名前はどちらかというと女みたいな名前なので、今までに何度も女と間違えられたことがあります。いまでも1年に3回くらいは、私のことを女と思いこんでかかってくる電話があります。そういえば、この名前のおかげで下着泥棒に入られたことがあります。当時住んでいた学生アパートは大家の方針でドアの前に入居者の氏名が掲示されていた(しかも田舎町に住んでいたので、留守にするときも鍵をかけていなかった)ので、下着泥棒は私が女だと勘違いして入り込んだのだと思います。
 アパートに帰ってきてドアを開けたら、見知らぬ男が部屋の中に立っていました。

「あんた、誰?」
「いや、ボクは彼女を待ってるんです。」
「彼女って?」
「○○さん。」
「○○はボクだけど」

 このとき、下着泥棒の顔が青ざめたのがわかりました。
 改めてその男を観察してみると手に白いものを持っているのがわかりました。

「ちょっと、手に何を持ってるの。見せてみろ。」

 といって取り上げてみると、それは私の洗濯前のブリーフでした。

 その後、その男を部屋からたたき出し(本当は警察に連れて行こうとしたのですが、それだけは勘弁してほしいと懇願されるうちに怒りが鎮まってきたのです)、しっかり鍵をかけて先輩の部屋に非難しました。なんといっても薄気味悪かったからです。
 私が下着泥棒に入られたのは、後にも先にもこれっきりですが、日本中で下着泥棒に入られた男というのはあまりいないだろうと思います。
 こういう体験があって、名前の使われ方に興味をもつようになりました。以下は、その考察です。

続き
by T_am | 2008-10-12 22:49 | 言葉
 今朝のテレビ(ズームインSUPER)を見ていたら、読売新聞特別編集委員の橋本五郎さんが、「檄をとばす」と「煮詰まる」という言葉について解説していました。
 解説の趣旨は、どちらも間違った意味で使っている人が増えており、あの広辞苑(第六版)でさえも誤用を採録するようになっているので、言葉は変化するということをみとめてもいいのではないか、というものでした。
 橋本五郎さんは感じのいい人なので、こういうことを述べるのは心苦しいのですが、それはないでしょう、と思ってしまいました。

続き
by t_am | 2008-07-28 21:24 | 言葉
 テレビを見ていると、こんないい方をすることがあります。

 「この後、あの大物俳優が登場します。」

 実際に出てくる人を見ると、ある程度年配の俳優さんで、誰でも知ってるという人のことを「大物」というのかな、と思ってしまいます。
 じゃあ、若い芸能人はどういうんだと思っていたら、この場合は「若手実力派」というようです。
 なるほど。いろんないい方があるのね。

 テレビでこういういい方をされると、「旦那、いい娘がいやすぜ。ちょっと寄っていきやせんか?」といわれているような気がして落ち着かなくなります。
 週刊誌の見出しに多用されるレトリックが、いつの間にかテレビでも用いられるようになったということでしょう。

 でも、こういう客引きに釣られていくと、ガッカリすることが多いと思いませんか?
by t_am | 2008-06-05 21:12 | 言葉
 このブログは、ご覧の通り「ですます」調で書いています。
この、「ですます」調というのは、柔らかい感じがするのですが、総じて書きにくい文体です。書き始めたときは、そんなこと思いもよらなかったのですが、回を重ねるにつれて、四苦八苦するようになりました。

続き
by t_am | 2008-03-06 23:30 | 言葉
 新聞・ラジオ・テレビで時々変な言葉を見かけます。
 未だに違和感が抜けないのは、ラジオの道路交通情報で事故があったことを知らせた後で、「この事故の調べがまだ終わっていないため、○○付近では3km渋滞しています」というやつです。
 どうして「現場検証」や「処理」ではいけないのか? ずっと不思議に思っていました。
 これは推測ですが、現場検証という言葉がわからないリスナーがいて、「何だかわけのわかんねーこといってから、もう聞くのやめよーぜ」となるのを恐れているからではないか? あるいは、「現場検証なんていっても、理解できねー奴も聞いてんだから、もっとわかりやすい言葉を使った方がいい」とお上が思ってるのかもしれません。
 「事故の調べ」という日本語は今までありませんでした。これが「事故処理」といってくれると、まだ想像のしようがあるのですが、事故の調べではねぇ。バイオリンの調べ、の方の調べのはずはないし、何か犯罪と関わりがあって警察が捜査でもしてるのか? などと余計な勘ぐりをしてしまいます。単に現場検証をしているというだけのことなんだろうから、まわりくどいいい方をしないでくれればいいのに、と思います。
 きっと誰か偉い人がこうしろ、といって決まったのでしょう。
by t_am | 2008-02-17 17:01 | 言葉