セイヤさんへの手紙 最強ウィルスの登場とその後(3)
http://www.cbc.ca/cp/health/080116/x011623A.html#skip300x250
セイヤさんが贈ってくれた要約は末尾に記載しておきますが、改めて整理してみたいと思います。
この記事からわかること
1.H5N1型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)は、インドネシアだけでなく、ロシア、ヨーロッパ、アフリカで発症例が見つかっている。
2.10カ国でH5N1型インフルエンザの集団発生(クラスター)が起こっている。ただし、この集団感染の中でヒト-ヒト感染が確認されたわけではない。
3.カンボジア、中国、タイ、ナイジェリアで家禽殺処分の従業者、家禽市場の労働者、保健医療従事者を対象とした抗体検査(H5N1型に感染しているかどうか)が行われたが、陽性反応が認められてのは1名だった。
4.感染地域での旅行者で発症した事例はまだない。
5.妊婦が感染した場合、胎児に与える影響は甚大である。
この記事から推測できること
1.H5N1型インフルエンザのヒトへの感染というのは、世界の各地で起こっている。
これからも発生するであろうということは誰も否定できない。正確にいえば、現時点ではトリからヒトへの感染はしにくいといえるが、全くないわけではない。
2.H5N1型に感染し発症した人から他の人に感染した事例というのはまだ確認されていない。その理由として考えられることは、現在のH5N1型ウィルスが人間の体内に侵入してきても細胞に定着するのは容易ではないということである。したがって、トリ-ヒト感染の発症者は、大量のH5N1型ウィルスに接したか、感染しやすい体質(遺伝的素因が考えられる)であった可能性がある。
先日のNHKで紹介していたインドネシアでの感染事例は、感染しやすい遺伝的素因があったと考えると理解しやすい。
3.しかしながら、H5N1型ウィルスの感染者が同時に他のインフルエンザウィルスに感染していた場合、遺伝子の組み換えによって、H5N1型ウィルスが人間の細胞に定着しやすくなる性質を手に入れる可能性を否定できない。
日本でのパンデミック(大流行)において考えられるメカニズム
1.ヒト-ヒト感染型H5N1ウィルスの集団発症が起こっている地域での旅行者が、自分が感染していることに気がつかず日本に帰国する。
2.発症しても初期段階では自らがインフルエンザにかかっていることに気づかないことが多いので、多少具合が悪くても普段と同じように行動し、周囲の人にH5N1型ウィルスを撒き散らす。電車やオフィス、店舗など密閉された空間での2次感染が懸念される。
3.2次感染者が同様にして周囲のヒトにウィルスを撒き散らす。皮肉なことに勤勉な者ほど他人を巻き添えにする可能性が高いということがいえる。なぜなら、勤勉な人は少しくらい具合が悪くても我慢して出社・登校するからである。
こうして感染者は3次、4次、5次とより広範囲に広まり、ある日突然パンデミック(大流行)が発生する。
4.日本で養鶏場などの関係者以外にH5N1型インフルエンザの発症者が確認されたというニュースが流れたときは、既にヒト-ヒト感染型インフルエンザウィルスによるn次感染が起こっていると考えることができる。いずれ多くの地域で発症者が現れたというニュースが流れるはずである。
インフルエンザウィルスに感染しないためには
1.大勢の人がいるところにはできるだけ近づかない。(妊婦には必須)
電車、映画館、病院、店舗など大勢の人がいる密閉空間にはウィルスが飛び交っている可能性が高い。どうしても避けられない場合、N95規格をクリアしているマスクを装着する。風邪を引いたらマスクをするのは、他人に風邪のウィルスを感染させる(空気中に微粒子を飛散させる)のを防止するためであるが、この場合空気中のウィルスから自分を守るためである。
2.室内にいるときは、湿度を保つ。
3.外出から帰ったら、直ちにうがい・手洗いを励行する
4.規則正しい生活を心がけ体力の低下を防ぐ
他人にインフルエンザウィルスを感染させないようにするには1.インフルエンザに似た症状だと感じたら、無理をせずに休み、医者にみてもらう。
タミフルなどの抗インフルエンザ剤は発症後48時間以内に投与されないと効果が薄い。治っても2日間は安静期間を設け、おとなしく休んでいること。ここで無理をして出勤・登校すると世間にウィルスを撒き散らすことになる。
2.やむを得ず出社・登校する場合は、N95規格をクリアしたマスクを装着する。ただし滞在時間は最小限にとどめる。
ヒト-ヒト感染するようになったH5N1型ウィルスの致死率がどれだけになるかよくわかっていません。しかし、妊婦がインフルエンザに感染した場合、胎児に甚大な影響を与える可能性があることは明らかです。
したがって他人にウィルスを感染させるということは、ひょっとしたらその人の生命を奪うことになりかねないという自覚を持つことが必要でしょう。
(セイヤさんから送ってもらった記事の要約)
その要約は以下の通り。
・H5N1鳥インフルウイルスは、現在10系統に分かれている(クレード)。
・クレードによって人に対する病原性が異なっている可能性が高い。3系統のクレードが人に感染を生じている。クレード2.1はインドネシアで蔓延していて、クレード2.2はロシア、ヨーロッパ、中東、アフリカへ拡大している。
・生存率は国によって異なるが、ウイルスのクレードによる違いか、発見の早さによるのか不明。
・早期の症状が曖昧な場合も多く、そのため抗インフルエンザ薬の投与が遅れているケースが多い。臨床医の力量が試される結果となる。
・抗インフルエンザ薬は48時間以内に投与されないと効果の発揮は薄いが、それでもこれまでのデータを見る限り、タミフルを投与された患者の方が生存率が高い(投与時期に関わらず)。
・90%の患者が40歳以下で、患者の年齢の中央値は18歳。
・中高齢者での発症数が少なく、また死亡者数も少ないが、いくつかの研究報告では、15~20%の高齢者の血液にH5N1ウイルスに対する抗体が認められる、とされる。しかしハイデンは、それが高齢者の発症率の低さの原因であるかどうかは不明としている。
・6例の妊婦の発症例があるが、4例は死亡し、2例は生存している。生存例では自然流産を生じている。
・感染地域への旅行者での発症例はない。
・2003年から2006年まで米国で感染地域からの帰国者で、体調不良を呈した41人を経験し、そのうち27人がCDCのH5N1鳥インフル感染のクライテリアの疑い例に合致した。しかし検査での陽性例は出ていない。
・カンボジア、中国、タイ、ナイジェリアで家きん殺処分の従事者、家きん市場の労働者、保健医療従事者を対象とした抗体検査が、7つの研究で行われたが、合計対象者数1100人中、抗体が陽性だったのは1名のみだった。
・専門家達はこれまで発症している事例は、感染者の中の一部分(氷山の一角)と捉え、軽症例が多く存在すると考えたい気持ちでいるが(そうならば致死率は非常に低くなる。1割以下?)、上記研究結果は残念ながらそれを否定している。
・2人またはそれ以上の発症者が生じた集団発症(クラスター)事例が、人発病者の発生を確認した国の中で10ヵ国で認められ、その総数は発病者全体の四分の一に相当する。
・クラスターの中で人人感染が起きた事例の有無について、現在WHOは調査中であるが、明確な見解を保有するにいたってない。
・クラスターの中で90%以上が血縁者間での発病なので、遺伝的素因が感染に関係していることが疑われている。