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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

峯岸みなみがかけた「迷惑」?

 2013年1月31日に発売された週刊文春に、AKB48のメンバーである峰岸みなみが彼氏に会いにいき、そのまま泊まってきたという記事が掲載されたそうで、同日峯岸みなみ本人による謝罪表明の動画がYouTubeにアップされたのですが、その際に頭を丸刈りにして現れたということで注目を集めました。
 峰岸みなみというアイドルを私は知りませんが、20歳になったばかりのアイドルが頭を丸坊主にしたというのはやはりインパクトがあります。本人は事務所にもAKBの他のメンバーにも相談せずに丸刈りにしたと述べているので、「何が彼女にそうさせたのか」について考えてみることにしました。

1.彼氏に会いにいき、そのまま泊まってくるのは悪いことなのか?
 峯岸みなみが今回したことというのは、要するに「彼氏の家に行き、そのまま泊まってきた」ということです。結婚前の娘がこういうことをするのはふしだらだと思う人もいるかもしれませんが、だとしたら相当ずれた意識をお持ちであると申し上げないわけにはいきません。年頃の女の子が好きな男に会いたいと思うのは当然のことであり、まして相手の男も自分を好いていてくれるとわかっていれば、会いに行くのに何をためらうことがあるというのでしょうか。 
 どうやら、「そのまま泊まってきた」ということがセックスを連想させるということ、および今をときめくAKB48の主力メンバーの一人である峰岸みなみがその当事者であるという事情がニュースバリューを生み出した(週刊誌の読者は、何があったか知りたいという好奇心を惹起される)ということなのだと想像されます。
 しかし、こういう好奇心というのはいわば「下種の勘ぐり」であり、若くて健康な男女が二人きりでいれば何が起こるかわからない大人はいないはずです。というのも、大人であればだいたいみんなそういう経験をしてきたはずですし、現在子どもである人たちもやがてそういう経験をすることになるので、峯岸みなみを責めることのできる人はどこにもいないはずなのです。

 しかし、現実には、峯岸みなみは頭を丸坊主にして謝罪の動画を公開しましたし、AKB48の事務所は彼女を研究生に降格するという処分をくだしました。(彼女が所属する芸能事務所がどのような対応をしたのかは伝わってきていません。)

 巷間伝えられるところによると、AKB48にはメンバーの恋愛禁止という内規があるそうで、これまでもこの内規に違反したメンバーが異動させられたということがありました。また、AKB48のことではありませんが、これまでも彼氏とのツーショット写真が流出したことで芸能界を引退する羽目になったアイドルもいたので、今回の騒動はその延長線上にある芸能界特有の事件として理解した方がよいように思います。


2.AKB48の事務所の対応
 AKB48の公式ブログでは、1月31日付で「峯岸みなみに関しまして」という文章を掲載し、その中に「今回の報道により、ファンの皆さまに多大なるご迷惑をかけた峯岸みなみを、2013年2月1日付でAKB48 研究生に降格処分とする。」という文言がありました。

(AKB48オフィシャルブログ「峯岸みなみに関しまして」)
http://ameblo.jp/akihabara48/entry-11460663404.html

 ここで気になったのが「ファンの皆様に多大なるご迷惑をかけた」というフレーズです。「ご迷惑をお掛けしたことをお詫びします。」というのは日本語の決まり文句といってもよく、それだけ頻繁に使われる言葉であり、峯岸みなみの謝罪動画の中でもそのことが述べられていました。

 では、いったい誰がどのような迷惑を被ったというのでしょうか? 

 恋愛禁止というのは、AKB48の事務所と所属するアイドルたちが個人的に交わした約束事であり、彼女たちはファンとそういう約束を交わしたわけではありません。したがって、アイドルが何をしようと、ファンとの間で直接的なやりとりがない限り迷惑のかけようがないというのは明白です。つまり、実際に迷惑を被ったという人がいないにもかかわらず、「多大なるご迷惑を掛けた」といういい方が使われるているわけです。それはなぜなのでしょうか?

 思うに、この決まり文句は、「とりあえず謝っておく」という日本語独特の言い回しなのだと思います。こういうふうに、自分の方に非があるということをあいまいな形で認めておけばそれ以上波風が立たないし、後で自分が窮地に追い込まれることもないということを私たちは経験的に知っているからなのでしょう。まさに民族の知恵ともいうべきものなのですが、その反面、ものごとをあまり考えないまま、この決まり文句を使ってしまう傾向があることは否めません。勘の鋭い人は、そこに誠意のなさがあることを見透かすこともあるので、注意が必要です。
 AKB48の公式ブログには、「突然の発表となりましたが、ファンの皆さまには改めてお詫び申し上げるとともに、今後ともAKB48への応援を何卒よろしくお願い申し上げます。」と書かれており、一応お詫びの言葉も述べられてはいるのですが、申し訳ないという気持ちがいっこうに伝わって来ないのは不思議です。きっと反省の気持ちがかけらもないからなのでしょう。

 穿った見方かもしれませんが、今回の峯岸みなみの行動に関して、AKB48の事務所が恐れているのは、彼女を発端としてAKB48全体の商品価値が下がることなのではないかと思います。したがって、騒ぎを大きくしないためにも、記事が掲載された週刊誌が発売されたその日のうちに厳重な処分を発表する必要があったのでしょう。対応が遅れればそれだけ騒ぎが大きくなるからです。
 研究生に降格というのは、どうやら解雇に次いで重い処分のようです。AKB48という芸能界に大きな影響力を持つ団体から解雇されれば、そのアイドルは芸能界から抹殺されることは確実です。そうはならなかったというのは、峯岸みなみがそれなりの人気を保っているからだと考えるのが妥当だと思いますし、他のメンバーに対する「見せしめ」という点でも非常に大きな効果をあげたのではないかと思います。

 問題を起こした個人に対する組織の対応という点で、今回AKB48の事務所がとった行動はJOCや全日本柔道連盟とは全然違うことがわかります。JOCや全日本柔道連盟によって監督やコーチというのはいわば身内なので、どうしても庇うという意識が働くようであり、その分組織としては前近代的といわざるを得ません。ところが、AKB48の場合にはそういうなあなあな部分は一切排除しており、よく言えばビジネスライクに徹しているように思われますし、悪くいえばアイドルに対するの一方的な力関係を感じてしまいます。(法律に干渉されない解雇権を持っているというのはそれだけ強いことなのです。)
 研究生への降格という処分の根拠は恋愛禁止という内規違反にあるのであり、単なる内規であるが故に第三者が口を挟むことはできないというのは、誰もがわかっていることでもあります。それだけに、彼女が謝る相手はAKBの事務所ではないのかという疑問と違和感が残るのです。


3.峯岸みなみはなぜ謝罪したのか?
 私のような芸能界の事情に疎い人間でもこの問題について考えてみようと思ったのは、峯岸みなみが丸坊主になるという過剰ともいえる反応を示したからです。昭和の時代であれば、不祥事を起こした人間が反省と恭順の意思を示すために頭を丸坊主にするということはありましたが、平成の御代になって25年も経つにもかかわらず、しかも20歳になったばかりの女性アイドルが頭を丸坊主にするというのは前代未聞の出来事です。

 彼女が頭を丸坊主にしたというのは、自分でも述べているように、誰に言われたわけでもなく、どうやら発作的に行ったもののように私には思われます。(彼女にそれを指示もしくは示唆した人間がいるとしたら、ずいぶん悪辣な人物であるといえます。)

 それでは、なぜ彼女が丸坊主になってまで謝罪の動画を公開したのかについて、推測ですが、考えてみることにしましょう。
 おそらく、謝罪を述べる動画を公開するというのは「大人の知恵」によるものでしょう。というのは、記者会見の場で謝罪するというのは、記者による質問に答えなければならないというリスクが大きいからです。受け答えを間違えれば、火消し目的のはずが却って反感を買うということにもなりかねません。そういうリスクを避けるためにも、本人による謝罪という動画をネット上に公開する方がはるかに安全であることはいうまでもありません。
 ファンに対する謝罪の動画をネットに公開しなければならないと告げられて、峯岸みなみが素直に従ったという事実は結構重要だと思います。なぜなら、こういう局面では一にも二にも謝らなければかえってこじれるということを彼女が知っていたということになるからです。彼女の気持ちとして、自分でも述べているように、AKBを辞めたくないというのが最も強いことはいうまでもありません。酷ないい方ですが、そのためには好きな男を振っても構わないからAKBに残りたいという強い気持ちです。それを可能にするためには、自分に向けられる非難を最小限に抑えなければなりません。そのためには、ファン以外の不特定多数の人に向けて、謝罪の言葉を自分の口から述べるというプロセスを省くことはできないのです。
 不祥事を起こした芸能人が非難されているケースを彼女は見てきているのでしょう。中には、母親が生活保護を受けていたことで謝罪させられたケース(これなどは言いがかりに等しいと思います)もありましたから、そういう立場に立たされたときには誰も助けてくれないということがわかっていたのではないかとも思えます。
 したがって、謝罪の動画を公開しなければならないと告げられたことで、動転したあまり発作的に丸坊主にしたのではないかと推測するのです。もちろん、峯岸みなみ本人に聴いたわけでもなんでもありませんから、ここに書いたのはすべて私の推測であり、的外れである可能性も否定できません。
 それでも確実にいえるのは、私たちの社会は、問題を起こしたとされる個人に対し、容赦のない非難を浴びせるというある意味で陰湿な側面を持っているということです。始末に負えないのは、そういう行動の大部分が善意に基づいて行われているということであり、そのことは大津市の中学校で自殺した生徒に対するいじめの加害者たちとその家族に対する非難や身元の暴露がネット上に掲載されたのを見ていればよくわかります。

 人間は、自分が正義を行っていると思えば、正義に反していると思われる他人に対してどこまでも残忍になれる性質を持っています。

 今回、峰岸みなみが丸坊主になって謝罪したのは、私たちの中にあるそういう負の部分に対してではなかったかと思えるのであって、それだけにやりきれない思いのする出来事であったといえるのです。


付記
 AKB48の公式ブログは、2月2日いっぱいで峯岸みなみの謝罪動画を削除することにしたと発表しました。取り下げてほしいというファンからの要望が多数寄せられたとのことです。物議を醸した動画をいつまでも公開しておくことは得策ではないので、やむを得ないとは思いますが、こうやって事件が風化していくのでしょうね。


付記2
 私たちの中にある「負の部分」というのはそこだけ取り除くことはできません。正義を求める気持ちが世の中のためになることもあれば、逆に害をもたらすこともあるということで、そういうことを自覚しておかないと負の部分に呑み込まれやすくなりますよということを申し上げているわけです。
by t_am | 2013-02-02 22:43 | その他