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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

退職金騒動

 埼玉県では教員による「駆け込み退職」騒動が起こっており、愛知県警でも同様の動きが起きています。この一連の騒動の発端は、昨年11月に成立した国家公務員の退職手当を約15%、平均403万円減らすという法律の改正です。退職手当と年金を合わせた退職給付が民間より高い状態を是正することが目的であり、同様の措置を全自治体が実施すれば、年3400億円の人件費削減になるということですが、こういう計算をする人間の無神経さを腹立たしく思います。

 「駆け込み退職」騒動が起こった直接の理由は、その施行時期にあります。埼玉県の場合は平成25年の2月1日から実施されることになっていて、3月末に退職する予定の人は平均150万円の退職金の減額となるとのことです。このため、1月末で辞めた場合、給料が40万円の人の場合、2月と3月の2ヶ月分の給料合計80万円を棒に振ることになりますが、それでも退職金の減額分と差し引きすると約70万円得をするという計算になります。これは、いい方をかえれば、「長く働けばそれだけ損をする」ということであり、経済的合理性という視点からは「早く辞めなさい」と促していることになるのです。
 したがって、埼玉県では100人以上の教員が1月末での退職を希望しているというのも当然のことであり、年度途中での退職に対して、上田知事が「無責任のそしりを受けてもやむをえない」と述べたのは、見当違いの発言であると言わざるを得ません。人を辞めさせるようなことをしておきながら、「無責任である」というのは、「私は先のことが見通せないバカなので~す!」とカミングアウトしてるようなものです。
 もっとも、そういうバカは埼玉県だけでなく、他の県にもいるようですから事態は深刻であるといえるでしょう。いっそのこと、そういう「ものの道理がわからない人」の給料を優先的に減額した方が、はるかに社会にとって有益であると思うのですが、なぜかそういう人の方が偉い立場にいるものですから、真面目で要領の悪い人がいつも割を食うことになるわけです。

 既に申し上げたように、地方公務員の「駆け込み退職」の動きは当然であると私は思いますし、それを「無責任である」と批判するのはお門違いです。年度の途中で生徒を放り出して辞めるのか、という批判もあることと思いますが、そういうふうに仕向けた責任は、条例案を提出した地方自治体の幹部職員と、それを可決した議会にあります。そこのところを無視して現場の教師を責めるのであれば、どこまで人をバカにすれば気が済むのだと申し上げておきます。

 他人に対し、奉仕を強要するリーダーや経営者というのはまともな人間ではありません。

 労働は苦しいものですが、人がなんとか労働を続けられるのは、自分の仕事を誰かが評価してくれるからです。その評価とは、ときにはねぎらいであったり、賞賛であったりしますし、金銭での評価という面も軽視することはできません。つまり、自分の仕事を何らかの形で認めてもらえるからこそ、人は仕事を続けることができるのですが、それがマイナス評価されたとなると、その人のやる気は失せることになります。
 やる気が失せることによって発生するモラルハザードの損失は金銭に換算することはできません。現に、埼玉県で早期退職を希望する100人の教師の中には教頭もいれば、クラス担任もいるとのことですから、それらの教員が年度の途中でいなくなった後の補充や混乱を収拾するためには労力とコストを費やさなければなりません。にもかかわらず、そういうマイナスの面は考慮されないまま、今回の法改正が行われたあげく、総務省がそれを受けて都道府県知事に対し退職手当の減額の実施を通知したわけです。その背景には、退職手当の減額を全自治体が実施すれば年3400億円の人件費削減になるという単純計算があるわけで、こういう「計算が得意なバカ」が大きな顔をしていることで、現場で働く真面目な人に対する敬意が失われているというのが今の日本社会の姿であるといえます。
by t_am | 2013-01-24 21:15 | その他