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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

外郭団体という子会社も辛いのかもしれない

 私がこのブログを書く理由は、自分の考えを整理するためが一つ。もう一つの理由は、世の中でこんなものだと思われている「ものの見方」について、こういう見方もあるのではないか、というときに黙っていられないからです。
 
 その点、橋下市長という方の言動は、考える材料を提供してくれる機会の多さは他の政治家の比ではありません。そこで今回も橋下市長について取り上げたいと思います。

 標題にも書いているように、ものごとには必ずプラスの側面とマイナスの側面があります。プラスの側面というとメリット、マイナスの側面というとデメリットという言葉を思い浮かべるかもしれません。たしかにそういう言葉を使うと、自分の主張になんとなく箔がつく利点はありますが、本稿で述べることはそんな大層なことではないので、単に長途短所、利点と欠点くらいに思っていただければよいと思います。

 7月14日の橋下市長のTweetに、こういうことが取り上げられていました。以下、引用します。(Tweetの本文中に挿入されている短縮URLにはリンクが設定されていないので、ご覧になる場合短縮URLをWebブラウザのアドレス欄にコピー&ペーストしてください。)

橋下徹@t_ishin 2012/07/14 13:16
現実の行政改革とはこういう改革の積み重ねです。これまでは外郭団体に随意契約で独占させていました。平松前市長は売店経営にも天下りの能力が必要だと RT @oneosaka: 大阪市営地下鉄の駅売店、ファミマとポプラに  :日本経済新聞 - http://t.co/AlZ9SwLe
http://twitter.com/t_ishin/status/223994298973171712


橋下徹@t_ishin 2012/07/14 13:20
いろんな人から批判を受けるけど、現実の行政について的確にコメントできる識者が少ないことが日本の悲劇。これまでの外郭団体独占状態と比べて、許可使用料すなわち交通局の収入が5倍になった。交通局の労働組合に選挙で応援を受けていた市長ではこういう改革は無理。
http://twitter.com/t_ishin/status/223995284022243329


橋下徹@t_ishin 2012/07/14 13:22
平松前市長は駅売店にも天下りの能力が必要と言っていましたから。元へ。僕は外郭団体自体を全否定しているわけではない。外郭団体がコメントを出していた。現況では民間には太刀打ちできないと。これからしっかりと経営努力をして、ぬるま湯経営から脱し、次の機会に民間と張り合えばいい。
https://twitter.com/t_ishin/status/223995951046606848

橋下徹@t_ishin 2012/07/14 13:41
bit.ly/NxltXk こういうのも行政改革です。もちろん、実際に制度を構築して物事を進めるのは行政官僚。ただ、最初にこの方針で行こうと号令をかけるのは政治・市長の役割。行政官僚だけでは現状維持の声を突破することは困難。政治と行政が両輪とならなければならない。
https://twitter.com/t_ishin/status/224000519499296768


朝日新聞・橋下番‏@asahi_hb 2012/07/13 23:36
大阪市営地下鉄の売店の経営主体が一新されます。本日結果が公表された公募で、コンビニの「ファミリーマート」と「ポプラ」が、8月以降に参入することが決定。それぞれ29店、22店を地下鉄各駅に順次展開します。独占していた外郭団体「大阪メトロサービス」は公募に敗れ、売店業務から撤退
https://twitter.com/asahi_hb/status/223788079981395968


 これを読むと、大阪市営地下鉄の駅構内の売店は、これまで外郭団体である株式会社大阪メトロサービスが運営を引き受けていたところ、売店の運営業者を一般競争入札により募集した結果、ファミリーマートとポプラが最高値を提示したので、大阪メトロサービスに替わってこの2社が今後売店の運営を行うことになったというものです。
 売店を出店させる場合、タダで場所を使わせるのではなく使用料を対価として受け取るというのが普通です。日経新聞によれば、これまでの使用料は年間約7千万円に対し、ファミリーマートとポプラが提示した金額は合計で約3億5千万円とのことですから、橋下市長がTweetで述べているように、5倍の収入をあげることができるようになったわけです。収入を一気に5倍にするというのは民間企業でもそうできることではありませんから、これだけをみればすごいことだと思います。地下鉄の駅構内売店事業への民間企業の参入を促すという行政改革のプラスの側面です。

 次に、マイナスの側面に目を向けると、こういう規模の大きな競争入札に参加できる企業は限られており、しかも落札できるだけの条件を提示できる企業となると資本力と経営力がものをいうので、中小零細企業は閉め出されることになるということです。
 しかし、競争原理とはそういうものであり、市場に選択されるのがよい企業であって、そうでないのはどこかに問題を抱えているということになるのですから、どの企業も切磋琢磨して市場に選択されるように努力しなければならないというのが、競争原理が教える教訓です。
 喩えていえば、大人と子どもが100mを一緒に走れば大人が勝つに決まっています。したがって競争原理が教える教訓からいえるのは次の3点です。

1.大人と同じような体力を身につける(早く大人になる)こと
2.大人が算入してこない分野を見つけ出してその分野に集中・特化すること
3.大人と互角に勝負できる分野(障害物競走のような)に絞ること

 ただし、これらは一般論であり、小売業の場合まして駅の売店のように顧客のニーズが決まっているような商売には適用することができません。

 今回は、大阪市営地下鉄の駅の売店という限られた市場の開放ですから、社会に与える影響はごく僅かしかありません。したがって無視することもできるのですが、金という判断基準でものごとを決めるというやり方を原則化し、多方面に適用するということには違和感も覚えます。まあ、ほどほどにしておくのがいいと思うのですが、橋下市長と大阪市の特別顧問の皆様はそのようには考えないようです。

 橋下市長が言っているように、大阪メトロサービスという外郭団体が(特権的な地位に胡座をかいて)ぬるま湯経営を続けて来たのかどうかについて、検証することは私にはできません。それでも、たかだか五十数店舗の小型売店を展開してきた大阪メトロサービス(事業はこれだけではありませんが)という中小企業の経営力が大手であるファミリーマートやポプラに及ぶはずがないということはわかります。(だから、「現況では民間に太刀打ちできない」というコメントにつながるわけです。)
 大手と同じ条件を出すことができないからといって、ぬるま湯経営を続けてきたと決めつけるのはどうでしょうか。「これからしっかりと経営努力をして、ぬるま湯経営から脱し、次の機会に民間と張り合えばいい。」と橋下市長は書いていますが、売店から撤退してしまえば次の機会にチャレンジするというのはもう不可能です。何のノウハウもない素人が大手コンビニ企業に対抗できるだけの店をいきなりつくることができるかどうかは、ちょっと考えればわかりそうなものでしょう。


 鉄道会社の外郭団体といえば、Kioskがその最たるものでしょう。もともとは鉄道弘済会といい、鉄道事故で一家の働き手を喪った家族(主に妻)の働き口を確保する目的で駅構内に売店を設置したのが始まりだそうです。今では事業規模がはるかに大きくなっていますし、時代も変わっていますから、当初の目的はかなり薄まっているものと思われます。
 大阪メトロサービスの事業は、ホームページをみる限り、鉄道弘済会とは異なり、福祉事業というよりは鉄道の運営の一部(それも周辺的な部分)を集めてつくられた会社のようです。やっていることは地味ですが、地下鉄の運行には欠かせない仕事を請け負っていることがわかります。
 大阪メトロサービスは大阪市交通局から仕事を回してもらうことで存続している会社です。だからといって現場で手を抜けば重大事故に結びつくこともあるわけですので、ぬるま湯的な体質があるのだとすれば、行政が優越的な地位を利用して押し付けてきた天下り職員たちがもたらしたものだと考えられます。(これは文楽協会にもいえることです。)
 天下りの在任期間は限られている(そうでないと後がつかえてしまU)のですから、業績を発展させるべく熱意を持って仕事に取り組んでも時間切れとなってしまいかねません。運が悪ければ、苦労したのは自分で手柄となるのは自分の後任者という可能性もあります。もちろん失敗するリスクもつきまとうわけです。それよりは、「自分の在任中可もなく不可もなく過ごせればそれでいい」と考える人が後を絶たないのも頷けます。
 したがって、市長が外郭団体のぬるま湯的体質を問題視するのであれば、天下りを中止すればいいのであって、外郭団体との取引の一部を取り上げるというのは本末転倒であると思います。少なくとも、売店の権利を一般競争入札の対象とする理由にはならないでしょう。
 もっとも、今回の競争入札によって、大阪市交通局に入る許可使用料が5倍になるという事実は曲げられません。それは評価しなければならないと思いますが、おそらくこれまで大阪市から天下りを押し付けられてきたあげくに、売店の権利を取り上げられたうえに、ぬるま湯経営と批判される大阪メトロサービスに対して同情を禁じ得ません。
 おそらく大阪市からの天下りは今後も続くことのでしょうから、子会社の辛さはどこの世界も同じだといえます。


 うまくいったものは親会社のトップの功績。問題が起これば子会社の責任。
by t_am | 2012-07-15 10:19 | その他