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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

「日本政府の40分」で浮かび上がったこと

4月13日に行われた北朝鮮の「ロケット」の打ち上げがについて、日本政府の発表が、午前7時38分に行われた打ち上げの45分後である午前8時23分となったことが批判されています。韓国国防省の発表が午前8時頃だったそうで、それと比較すると遅すぎるというものです。

同日行われた藤村官房長官の会見の要約は次の通りです。(NHK News Webより)

(1)午前7時40分ごろ、防衛省に、アメリカ軍の早期警戒衛星を通じて、「北朝鮮から何らかの飛翔体が発射された」という情報が入り、藤村官房長官には、7時42分に報告された。

(2)日本は、レーダーで飛翔体の軌道の探知を始めていたが、1分ほどで軌道を見失った。同じころ、アメリカ側からも「北朝鮮から発射された飛翔体の軌道を見失った」という情報がもたらされた。

(3)日本政府は、アメリカの早期警戒衛星が誤って探知した可能性も捨てきれず、さらなる確認が必要だったことに加え、レーダーから飛翔体が消え、日本の領域に被害を及ぼす可能性はないと判断したことから、この段階では発射の発表は見送った

(4)誤まった情報を出さないために、必ずダブルチェックをするというのが当初からの対処方針だった。レーダーなどあらゆる情報手段を活用して、もう一つのルートを確認していた。

(5)Em-Netによる自治体・報道機関向けの午前8時3分の通知
北朝鮮が、人工衛星と称するミサイルを発射したとの一部報道があるが、我が国としては、発射を確認していません。(これと同じものが8時6分に首相官邸からツイートされました。

(6)午前8時23分に行われた田中直樹防衛大臣の会見の要約
何らかの飛翔体が発射されたという情報があり、1分以上飛行し、洋上に落下した模様だ。わが国の領域への影響は一切ない


政府発表が遅れた理由として、このような経緯があったことを説明した上で(4)のダブルチェックをしたうえで発表するという方針によるものだと述べているわけです。しかしながら、こうして並べてみると、(2)では日本も「飛翔体の軌道の探知を始めていたが、1分ほどで軌道を見失った」と述べているのですから、ダブルチェックができたいたことがわかります。しかも探知後1分ほどで軌道を見失ったことまでアメリカからの通報と一致しているわけです。
にもかかわらず、(3)において、「アメリカの早期警戒衛星が誤って探知した可能性も捨てきれ」ないと述べているのはなぜでしょうか? 日本のレーダーとアメリカの衛星が同じ出来事を探知しているのに、なぜアメリカの衛星の探知ミスを心配する必要があるのでしょうか?
さらに、(3)で、アメリカの衛星の探知ミスの可能性に触れておきながら、レーダーから飛翔体が消えたという出来事を無条件で信用しているのも不思議です。存在しないものが表示される恐れがあるのならば、存在するものが表示されなくなるという可能性も否定できないはずだと思うのですが・・・・

もう一度藤村官房長官の会見を読みかえしてみると、(2)がなければ、一連の流れは辻褄が合うように思われます。すなわち、日本のレーダーが起動の探知を始めていたという部分が事実と違うのではないかということであり、言い換えれば、日本のレーダーは北朝鮮の「ロケット」を探知できないまま終わったのではないかということです。

日本のレーダーが探知していたというのであれば、午前8時3分のEm-Netの通報(我が国としては、発射を確認していません)は事実と異なります。

以下は推測となりますが、日本では北朝鮮の「ロケット」の打ち上げから墜落までをレーダーで探知することはできず、アメリカからの情報しか得ることができなかったのでしょう。また、2009年の打ち上げの際に、誤報を犯し責められたことから、今回は誤報だけは避けたいと考えたのではないかと思われます。そのため政府の発表が遅れるうちに韓国国防省が発表し、さらにマスコミもニュースとして流し始めたことで、政府は慌てたのでしょう。発射を追認すれば、今まで何をしていたのだと言われるのは目に見えていますし、かといって現在確認中ですと発表しても、何をもたもたしているのだと非難されるだけです。そんなみっともないことはできないので、「我が国としては、確認していません」という言葉になったのだと思います。こうしておけば、後で「ダブルチェックをしないうちは軽々しく発表できないと考えていました」と言い訳できるというのもあります。もっとも、「レーダーから飛翔体が消え、日本の領域に被害を及ぼす可能性はないと判断した」というのは口が滑ったのでしょう。また、「日本は、レーダーで飛翔体の軌道の探知を始めていたが、1分ほどで軌道を見失った」というのも、日本のレーダーが探知できなかったと認めるわけにはいかないという事情が言わせたのだと思われます。人間、嘘や言い訳をしようとすると、つい余計なことまで口走ってしまうものであり、藤村官房長官も例外ではなかったということなのでしょう。(そうではなく、藤村官房長官が発表したことがすべて事実であった場合、当日首相官邸に詰めていた皆さんは揃いも揃って無能無策であったということになります。だとしたら、すみやかに辞表を提出された方が、これ以上恥を晒す必要がなくなるので、ご本人のためであると思います。)


なぜ日本のレーダーが北朝鮮の「ロケット」を探知できなかったのでしょう? この疑問に対する軍事専門家の答えは、レーダーを搭載したイージス艦の位置が発射場から遠く離れたいたことが原因であるというものです。どれほど高性能のレーダーであっても水平線の下にある物体を探知することはできません。地球は丸いのですから、日本海に展開しているイージス艦にとって、北朝鮮の発射場は水平線の下にあることになります。したがって、「ロケット」が発射され、イージス艦と水平の位置に達するまでは、イージス艦からは「見えない」ことになるわけです。万一、「ロケット」がその高度に達するまでに爆発してしまえば、結局イージス艦は探知することができないという理屈です。

この問題を解決するには、日本のレーダー(すなわちイージス艦)を可能な限り北朝鮮の発射場に近いところで待機させる以外にありません。それがどのあたりになるのかは計算によって求めることができます。そういうことをしていたにもかかわらず、探知できなかったというのであれば、今後のためには、違った方策も考えなければならないでしょう。

自民党の石原幹事長は、今回の40分について真相を究明すると述べていますが、権力闘争を念頭に置いた魔女狩りのようなことを行なうのは害の方が大きいといえます。むしろ、今回の一連の「騒動」によって明らかになったのは、日本の有事対応として決められていることが現実の前には無力であるということなのですから、それを改める方が優先するはずです。
今回は北朝鮮が発射する時間帯を予告していたために、朝の7時前に関係閣僚が首相官邸に集まるということができたわけです。けれども、あらかじめ予告して有事が起こるわけではありません。むしろ突然に起こるのが当然だと考えるべきでしょう。したがって、有事の際に、どれだけ短時間で初動体制をとることができるかポイントになります。(小沢一郎は、有事は、のこのことPAC3を沖縄まで運んでいくのを待っていてくれるはずがないという意味のことを述べていたそうです。)

日本の自衛隊は装備も充実しており、隊員も優秀であることは東日本大震災の際に証明されています。ところが日本では、有事にあたって自衛隊をどのように活用するのがいいのかについてこれまで真剣に検討されたことがないように思います。議論されていたとしても、自衛隊を出動させる手続きをどうするかという類のものばかりですから、今回のように政府が無様な姿を晒すわけです。

石原幹事長が目論むように魔女狩りを行っても、問題の本質は改善されません。それならば、いっそのこと有事の際には米軍の指揮下に入るとしておいた方が、被害を最小限にくい止めることができるはずです。
独立国家としてそんなことができるかと思うのであれば、自分たちで日本の防衛を行うという覚悟を固める以外に選択肢はありません。というよりは、それが当たり前なのです。 それも嫌だというのであれば、現在のように誰が日本を防衛するのかについて曖昧なままにしておくというのがベストでしょう。その代わり、いつまで経っても外交オンチの国民のまま(代表的なのがイランに行ったあの人)ですし、有事に際してまともな判断ができないリーダーばかり登場するのは避けられないと思います。
ただし、これは個人の資質の問題ではありません。普段考えていないことを突然やれといわれてできる人間などどこにもいないというだけのことです。その典型的な例が田中防衛大臣であることはいうまでもないでしょう。
by t_am | 2012-04-15 00:41 | その他