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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

悪者を責めれば正者義の味方になる

 1月に、東京電力が大口契約者に対して電気料金の値上げを通知した際に、東京都が緊急アピールを行いました。東京都ともなれば今回の値上げで大幅な歳出増になるのですから、同然といえば当然ですし、他の契約者のためにも頑張って値上げの撤回に追い込んでいただきたいものです。

 東京都の緊急アピールは猪瀬副知事が中心になって行っているようですから、その概要は同氏のコラムで知ることができます。

(猪瀬直樹の「眼からウロコ」:根拠不明の東京電力一律値上げに「待った」)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120130/297600/?rt=nocnt


 これを読むと、都の主張は、東電が値上げの根拠にしている燃料費の内訳を示していないこと、さらに、ファミリー企業の本社を整理するだけで1年で100億円を算出できるという独自の分析をしていることがわかります。

 猪瀬氏の論理の展開は明解であり、かつ説得力があります。極めつけが「ファミリー企業が都心の一等地でのうのうとしている実態が判明した」というものであり、このあたりは元ジャーナリストの面目躍如というところでしょう。

 このコラムに関する限り、猪瀬氏の主張には頷けるところも多いのですが、ひとつ不思議に思うのは、今政府がやろうとしている増税について、同様の指摘がなぜなされないのだろう? ということです。
 野田政権が訴えている増税も東京電力による値上げの要請も、要は支出が収入をはるかに上まわっているというのが理由です。どちらも猪瀬氏の指摘するような「内訳」を明示してはいません。さらに、「都心の一等地でのうのうとしている」のは東京電力だけではありません。霞ヶ関の官庁街の資産価値は莫大なものになると思いますが、増税の前にそれらを整理してはどうかという指摘がされたことはないようです。
 企業が大幅な赤字に陥った場合、リストラによって資産と余剰人員の整理が行われるのが当たり前であると思われていますが、政府自身にそのような発想はないようですし、政府にそれを求める声もないようです。(国家公務員の給与をカットする法案が参院で成立しましたが、これはカットした分を復興予算に充当するという期限付きの措置に過ぎません。)
 今回の東京都の緊急アピールの内容は充分に理解できるものですが、それならば増税の必要性を訴える野田政権に対しても同じように問題点を指摘するのでなければフェアではありません。東京電力という企業は、原発事故以来の対応のまずさもあって、すっかり悪者扱いされています。したがって、東電を責めれば責めるほど喝采を浴びるという構図ができあがっており、今回の猪瀬副知事らによる緊急アピールもそれを計算して行われているのではないかといううさん臭さが感じられるのです。

 経済界は野田政権の増税策に肯定的です。というのも、このまま財政赤字が拡大していったときに、いつか国債が暴落することを心配しているからでしょう。そうなったときに、日本経済が壊滅的な打撃を受けるとわかっているからです。
 それではなぜ財政支出のムダを削減する方策を主張しないのか、その理由を考えると、政府にはこれまで通り補助金や助成金という名目でばんばん歳出してもらいたい、それが経済成長を実現するのだと思っている人が多いのだと思います。その人たちが望んでいるのは経済成長なのか自分の利権なのか定かではありませんが、放漫財政を継続してもらい、財源が足りなくなれば増税もやむを得ないというのは、それを当てにしている人たちがいかに多いかということを示しているかのように思われます。
 それというのも、行政には貸借対照表の作成が義務づけられていない(臭いものには蓋をするということ)ことが原因だと思いますが、それは別な機会に譲りたいと思います。
by t_am | 2012-03-03 20:41 | その他