役人は無意味な仕事をつくりたがる-「GKB47宣言!」
(政府が自殺対策強化で「GKB47宣言!」 「ゴキブリ?」「馬鹿にするな!」とネットで非難-J-CASTニュースより)
http://www.j-cast.com/2012/01/24119773.html
お気づきのように、このキャッチフレーズはAKB48をもじったものであり、内閣府自殺対策推進室もそのことを認めています。それでも「今回これだけ話題になり、メディアで取り上げていただいたことは、自殺者をなくすための大きなPRになったのではないか、と考えています」というコメントを出しているとのことです。
まあ、別にキャッチフレーズなどどうでもいいのであって、今回これを取り上げたのは、下記にあるとおり少なくとも平成20年度から予算がついて活動を行っているにもかかわらず3万人を超える自殺者の発生に歯止めがかかっていないからです。
平成20年度予算 14,446,242千円(自殺者 32,249人、警察庁発表による)
平成21年度予算 13,577,505千円(自殺者 32,845人)
平成22年度予算 12,446,000千円(自殺者 31,690人)
平成23年度予算(案) 13,421,344千円(自殺者 - )
(内閣府「自殺対策」のサイトのうち「自殺対策関係予算案」)
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/yosan/index.html
(自殺者数の年度推移)
http://www.t-pec.co.jp/mental/2002-08-4.htm
自殺対策推進室の中には真面目に仕事に取り組んでいる職員もおられるはずなので、このようなことを申し上げるのは心苦しいのですが、毎年百億円以上の予算を使っていながら効果がほとんど現れていないというのはやり方に問題があるといわざるを得ません。(そういうところを放置しておいて、国の借金は1千兆円に迫っているだとか財政再建は待ったなしだとかいわれても、まともに耳を傾ける気にはなりません。)
毎年巨額の予算を使いながらなぜ効果が上がらないかというと、自殺対策推進室に何の権限も与えられていないからです。警察庁発表資料によれば、職業別自殺者数をみると、ワースト3は無職者、被雇用者、自営業となっています。つまりこれらの人々に対するセーフティネットを整備しなければ自殺者数を減らすことはできないのですが、そのために面倒な手続きと制約の多い申請条件がネックになっているものと想像されます。すなわちセーフティネットが一応あるにもかかわらず充分に機能していないと考えられるのです。それを改善するには各省庁の縦割り行政の壁を突破しなければなりませんが、自殺対策推進室に対しそれだけの権限が与えられているわけではありません。また、被雇用者の自殺は職場のパワハラが原因の多数を占めているものと思われます。大企業ではパワハラやセクハラに対する窓口を設けているところもありますが、中小企業ではまだまだ不十分です。窓口がある企業でもそれが活かされているかどうかは疑問です。相談したことによってかえって上司による報復を受けるかもしれないと二の足を踏む人もいるでしょうから。そこで、たとえばパワハラが原因と思われる患者を診察した医師は、そのことを市町村の窓口に通報することを義務づけるなどの法整備も必要だろうと思います。
そうなると政府全体を動かさなければならないのですが、それだけの権限が自殺対策推進室に与えられているわけではないでしょう。だからこそ、自殺対策強化月間などというお茶を濁すようなことに大真面目に取り組んでいるわけです。
自殺対策推進室という名称がつけられていますが、実体は事務処理のための組織に過ぎないのでしょうね。だから自殺対策推進会議(第1回は平成20年2月12日に行われています。平成24年1月23日に開催された会議は第15回とのことです)を延々と行っていながら、あいかわらず毎年3万人を超える自殺者が発生しているわけです。
(自殺対策推進会議)
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/suisin/index.html
私は自殺対策がムダだと申し上げているわけではありません。毎年百億円を超える予算を使いながらたいした効果も上げられない自殺対策推進室という組織の仕事のやり方が無意味だと申し上げているのです。その挙げ句「あなたもGKB47宣言!」であり、しかもポスターまでつくって全国に配布するというのですから、気楽な職場だと思います。結局自殺者対策に取り組んでいますというアリバイづくりが政府の目的であって、予算獲得の口実に使われているのだろうということです。
今朝の新聞で民主党の岡田副総理は消費税率は将来10%超にしなければ立ちゆかなくなるという発言をしていましたが、その前にこういう無意味な仕事をしている組織をなんとかしてもらいたいと思います。
自殺者対策が不要であるとはいいませんが、予算を使う以上効果のある仕事をしたらどうかと思うのは当然でしょう。にもかかわらず、自分たちがやっている仕事の成果の検証もしないまま惰性のように予算を使い続けるという習性が官僚にはあります。(実をいうと、これは官僚に限ったことではないのですが……)
今回は、自殺対策推進室を批判していますが、よく考えてみると私たちが政府のやっていることに対してあまり関心を持ってこなかったからこそ、こういうことがまかり通っているのだろうとも思います。会計検査院は何を見ているのだと責めることもできますが、それでは何も変わりません。この国を、この社会を住みよいものに変えていこうと思うのであれば、誰かがやってくれるだろうと思うのではなく、まず自分が変わることが必要ではないかと思うのです。