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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

大学の秋入学について

 東大が秋入学を実施(大学院では秋入学が実施されているが春入学との複線化が行われている)するため、旧帝大+五校と協議会を設置することおよび経済界とも協議会を設置することを発表しました。
 人間がやることには、それがなんであれ、長所があれば短所もあります。春入学と秋入学を比較したときにどちらがすぐれているということではなく、国際的にみたときに秋入学を実施している大学の方がはるかに多いというだけのことです。
 したがって、秋入学への移行は海外からの留学生を獲得しやすくすることが目的であり、そうすることによって大学の国際的な水準を高めなければならないという焦燥感が背景にあるようです。要は、秋入学が大学のデファクトスタンダードになっている(世界の7割の大学が秋入学)ので、そちらに乗り換えようということなのだと理解して差し支えないと思います。大勢に付く(勝ち馬にのるともいいます)というのは損をしないための鉄則であり、我を張って少数派に与しているとよけいな手間暇コストを背負い込むことになりかねません。さらには、最悪の場合少数陣営が消滅してしまうこともあります(ビデオにおけるベータマックス方式を思い出してください)から、5年後を目処に秋入学に向けた準備を進めるという東大の決定は理解できます。

 そうはいっても、秋入学に移行したところで、その大学に海外からの留学生を引きつけるだけの魅力がなければ、誰も来ないということにもなりかねません。したがって、秋入学に移行するということは、従来に比べてハンディキャップがひとつ減ったくらいに考えなければなりません。海外の教育水準の高い大学との間での学生の奪い合いは変わらないのですから、優秀な学生を惹き付けるための施設や設備、研究費の充実も避けては通れない課題です。そのためには政府との折衝という高いハードルをクリアしなければなりません。おそらく東大はそこまで読んでいるのでしょう。単純に時期をずらせばよいという問題ではないのですから。

 これに対し、経済化の反応はどうかというと、東大の動きを概ね好意的にみているように思います。というのは、海外から優秀な人材が集まってきて日本の大学の水準が高まれば、企業も優秀な人材を採用することできるようになるという期待があるからでしょう。経済界からの圧力が高まれば政府(文科省)も動かされますから、秋入学が成功するかどうかのポイントは経済界の賛同が得られるかにかかっているといえるでしょう。

 ただし、海外からの留学生が来やすくなるということは、日本の学生も海外へ行きやすくなるということでもあります。そしてそのまま戻ってこなくなるという可能性も否定できません。研究者が戻ってこないというのは日本の大学に魅力がないからであって、その辺の整備をきちんとやれない大学は国の学問の水準の向上に寄与できなくなるわけですから、企業向けの人材供給センターとしての性格がより鮮明になっていくように思われます。
 もっとも、地方の大学でも企業と提携して研究を行っているところもありますから、そういう動きがある間は、大学がサラリーマン養成所に成り果ててしまうわけでもありません。地方に大学が存在する意義は中央の大学とは異なりますから、地方自治体はこれを活用していく方策を考えた方がよいといえます。
 秋入学の実施は大学を市場競争に晒すことにもつながります。少子化局面にある現在、この傾向は既に発生していることです。これに対する各大学の対応は事実上の全入制度を設けることで学生を確保するという戦術をとっています。
 今後、東大を頂点とする一部の大学のグループが秋入学に移行したときに、これらの大学と比較してあらゆる点で劣っている地方の大学は、学生の確保がより一層困難になるものと予想されます。企業向けのサラリーマン養成所(あるいは官庁向けの公務員養成所)と割り切ることができればともかく、そうでない大学は苦労することになります。そうなってしまう前に、世間に対し広くアピールできるだけの独自性や唯一性を確立しておく必要に迫られると思います。
 サラリーマン養成所でもなく独自性を打ち出すことができない大学は、今後の少子化の中で淘汰されていくのではないか? そんなことを考えさせられたニュースでした。
by t_am | 2012-01-21 16:58 | その他