ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

センター試験とトラブル

 毎年この時期になると行われるセンター試験。翌日の新聞には問題とその解答が掲載されます(あまり見てる人はいないと思いますが)。そして、今年はこういうトラブルがあったということが必ず報道されます。今年もありました。

 面倒くさいので今年起こったトラブルについて書くのはやめておきます。それでも毎年同じような報道が繰り返されるのですから、少しは学習したらどうかとの思いを今回は書くことにします。

(交通機関の遅れについて)
 雪が降って交通機関が遅れたというのがセンター入試にはつきものです。これを防ぐには試験の時期を変えるか、あるいは試験日程を3日間に延ばして毎日の開始時刻を送らせるかしなければなりません。もう何年も同じことをやっているのですからいい加減わかりそうなものですが、いっこうに変わらないところをみると受験生のことを考えるよりも自分たちの都合でやっているということがわかるような気がします。

(機械の不具合について)
 今年もICプレイヤーの不具合があったことが報道されていました。今年のセンター試験を何人が受験したのか正確なところは知りませんが、おそらく百万人を超える受験生があったものと思われます。百万台を超える機械を納品して不良品の発生率がゼロに抑えるというのはそれはほとんど無理な話ですよ。読売新聞によれば機械の不具合を訴えたひとは138人いたそうです。百万人のうちの138人とすると、0.0138%となりますこれは抜き取り検査では発見できないレベルではないかと思います。ですから、これを防ぐには1台ずつ動作チェックをしなければならず、それに合格したものだけを試験に用いるということをしなければなりません。

(運営のトラブルについて)
 百万人を超える受験生に対し、全国一斉に同じ内容の試験を行うわけですから、確率的にいって何も問題が起こらない方が不思議であるといえます。
 それでもトラブルをゼロにしようと思うのであれば、事前の手間を惜しんではいけません。何度もリハーサルを繰り返しては問題点を発見し、これを潰していくという作業が不可欠となります。
 想定外の事態が起こりましたという言い訳は、事前のチェックをしていませんでしたという告白にほかなりません。そのことは、「私には責任感もなければ使命感もない人間であり、本来このようなポストにいてはいけない人間でございます」ということを天下に向かって公言するようなものですから、恥を知る人間であればとうてい口にできることではありません。
 当事者の責任感と使命感のみがそのシステムに対する信頼感を醸し出す源泉となるわけですから、そのための手間隙費用を惜しんではならないわけです。

 トラブルが起こったときに、あってはならないことが起こったと指摘するのは正論であり、誰も反論できないわけですが、センター試験のような大規模なイベントでトラブルをゼロにするためには関係者一同による事前の膨大な手間隙コストかけなければならないということにも目を向けたらどうかと思います。

 このような全国一斉のイベントを大過なく行った事例として、1925年(大正14年)7月17日に国鉄が車両の連結器を全国一斉に交換した(ただし九州は7月20日に実施した)という事実があります。(この部分は「鉄道の科学」丸山弘志著 講談社ブルーバックスの受け売りです。)国力が増加することで鉄道の輸送力の増強が求められるようになり、そのために強力な機関車が導入されるようになったのですが、従来使われていたねじ式連結器では強度不足が懸念され、さらには取り扱いが危険であり事故も多かったことから自動式連結器に交換することが不可欠であるということになったのです。
 列車というのは各車両がどの車両とも連結できなければ使い物になりませんから、その時期に旧来のねじ式連結器が使われている車両と新型の自動連結器が使われている車両とを混在させるわけにはいきません。ゆえに同じ日に全国一斉に交換する必要があったのです。そのために交換当日の(全国どこにいても交換ができるように)六年も前から自動連結器をぶら下げた車両が走り始めたということですし、すべての車両に自動連結器がぶらさがっていることをチェックし、さらには交換作業のための講習会が全国ここかしこで実施されたうえで、交換当日は普段連結器にふれたことのないペンキ工まで懸命に汗を流して取り替え作業に従事したということです。このときに取り替えの対象となった車両数は機関車・客車・貨車あわせて63,301両とのことですから、まさに国鉄による偉業といってもよいと思います。

 何がいいたいかというと、全国一斉規模のイベントを成功させようとするならば、事前に充分な準備期間をとって入念な計画と事前の講習等を通じて関係者の士気と技能を高めるということが欠かせないということです。しつこいようですが、それらを行うには膨大な手間と時間と費用が欠かせません。つまり、それだけのリソースをつぎ込んでもセンター試験をやらなければならないのか、それがクリアにならない限りセンター試験におけるトラブルは解消されないということです。
 そうなると、取り上げるべきは「トラブルが発生するのはけしからん」というのではなくて、「トラブルを回避するには膨大な労力と時間と費用が必要になるが、それでもセンター試験を実施することが妥当なのか?」ということと「毎年トラブルが発生しているにもかかわらずセンター試験というシステムを継続することが妥当なのか?」という2点に絞られると思います。
 センター試験はいわば公営の全国一斉実力テストですから、大学側にとっては志願者の足斬りとして使う(そうでない大学もたくさんあります)くらいの利用価値しかありませんし、受験生にとっては志望校の最終決定の判断材料とされているようです。それらはセンター試験が必要不可欠であると証明するだけの根拠としては乏しいように思うのですが、どう思いますか?
by t_am | 2012-01-16 21:55 | その他