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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

無謬の指導者が率いる浮かばれない国

 北朝鮮の金正日総主席の死亡が発表されてから、北朝鮮関連の記事が新聞や雑誌を賑わせています。その理由として、すぐ隣にある独裁国家で何をしでかすかわからない国、何が起きているのかよくわからない国というイメージがあるので、この国に関する情報が欲しいと思う人が多いからだといえます。
 ところが、北朝鮮は西側のメディアが現地取材できるような国ではありませんから、伝えられるのは北朝鮮当局による公式発表か伝聞記事もしくは推測によって書かれた記事ばかりとなっています。そのようなニュースをどれだけ読んでも、知りたいという思いが満足させられることはありません。きりがないので、この辺で一区切りつけるために、今わかっていることを整理してから、しばらくこの国のことは封印しておくことにします。

 金正日が死んだのが12月17日の午前八時半といわれており、北朝鮮による公式発表があったのが12月18日の正午です。死んでから発表まで約51時間経っており、このことは北朝鮮の置かれた状況を物語っているように思われます。すなわち、金正日の死を対外発表しても問題が起こらないように準備するために、これだけの時間を要したのだと考えた方がよいということです。
 これも完全に推測になりますが、おそらく朝鮮労働党のトップと軍のトップとの間で、当面の対応と今後の方針についての協議が行われていたのでしょう。金正恩を後継者に祭り上げることには誰もが異論を挟まないと思いますが、誰がどのように関わるかということになると今後の発言力にも結びつくだけに、その調整に時間がかかったのではないかと思っています。金正恩自身は年も若く経験も実績もないにもかかわらず、彼を後継者に据えなければ国が崩壊しかねないという事情がある以上、集団でサポートするという体制がとられたのだろうと思われます。当面はそれでよいとしても、時間が経つにつれ、そのグループの中での権力闘争が顕在化していくであろうという予測も成り立ちます。突出して強力な後見人が登場してしまうと、金正恩が傀儡化されてしまうことにもつながりますから、金正恩にすればそういう強力な後見人の誕生は阻止したいところでしょう。したがって、しばらくは権力闘争に明け暮れることになるのではないかとも思われます。

 北朝鮮が国家として維持できている理由は、バランスを欠くほどに強力な軍隊の存在とグロテスクなまでの個人崇拝にあります。皮肉なことに、この2つを強化しようとすればするほど、北朝鮮という国が貧乏になっていくというジレンマがあるといえます。
 軍隊というのは基本的に消費する組織であって生産に寄与することはありません。ゆえに軍事費が膨らんでいくと経済成長の足かせとなりかねません。日米安保条約によって日本の国防をアメリカが肩代わりしてくれた(つまり軍事費が少なくて済んだ)おかげで、戦後日本は高度成長を遂げることができました。
 北朝鮮の財政支出に占める軍事費の割合がどれだけであるかは知りませんが、GDP対比で40%を超えているのではないかという気がします。これは戦時体制にある国の水準であり、別に戦争をしているわけでもない北朝鮮にとっては相当無理をしていることになります。それでも国民を抑えつけるためには軍事費を削るわけにはいかないのでしょう。「先軍主義」という時代錯誤なスローガンにこの辺の事情が現れているように思います。軍を強化すればそれだけ国が貧乏になり、国民の不満が高まります。それを抑えつけるためにさらに軍を強化しなければなりませんが、そうすることによって国がますます貧乏になっていきます。そうすると国民の不満がさらに高くなり、これを抑えつけるために軍が強化されるという悪循環に陥っているということがわかります。
 度を超した個人崇拝は、指導者は偉大であるがゆえに誤りを犯さないという根拠のない信仰を人々に強制します。北朝鮮が毎年水害に遭うというのは、斜面の木を伐採して段々畑にせよという金日成の思いつきに端を発しています。金正日の最大の幸運は金日成の息子に産まれたことです(だからといって彼が棚ぼた式に権力を手中に収めたわけではないでしょう)が、同時に金日成の誤りを指摘することができないという不運も背負うことになったのは皮肉なことだといえます。
 その結果、金正日は核兵器の開発以外にさしたる実績もあげることができず、外国からの援助がなければ国が立ちゆかなくなるという状況を招いてしまいました。三代目の金正恩にも同じ運命が待っていると思います。なぜならば、先代の失政を批判することは自分の血筋の正統性を否定することにつながるからです。
 テレビに映る金正恩の姿を見て気づくのは、この国の指導者が三代続いて肥満体型であるという事実です。近代国家における政治には国内に偏って存在する富を吸い上げて再分配するという役割が求められていますが、この国の政治はまったく逆の方向に作用しています。それらの特権階級の中心にいたのが金正日であり、今後は金正恩ということになるのでしょう。
 特権階級が自分たちのこれまでの行動を悔い改めるということは天地が避けてもありえないことですから、彼らがその中心である金王朝を支えることに変わりはないはずです。浮かばれないのはこの国の国民であるといえます。
by t_am | 2011-12-23 21:19 | その他