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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

総理の詭弁、責任回避

 12月15日夕方、野田総理は記者会見を開き、福島第一原発の原子炉が「冷温停止状」態になったということで原発事故の収束を宣言しました。
 そうはいっても、だいぶ減ったとはいえ放射性物質の放出は相変わらず続いており、汚染された水も溜まる一方で東電としてはもう一度海洋投棄したいと考えています。さらに避難者が自宅に戻れたわけでもないのですから、事故の収束というのはいくらなんでも気が早いのではないかと思って聴いていたら、案の定記者から「こういう状況で事故の収束を宣言することに違和感はありませんか?」という質問がありました。
 これに対し野田総理の回答は、「冷温停止の定義は菅政権が決めたことであり、自分はそれに基づいて判断した」というものでした。記者の質問は事故の収束という表現をしたことについてのものであるにもかかわらず、野田総理は冷温停止という用語にすり替え、さらに、管内閣に責任を押しつけたのです。
 国会中継を見ていれば、閣僚が問題をすり替えて答弁するということは日常茶飯事ですから別に驚くにはあたりませんが、こういう答弁をする閣僚の知能と心性には疑わしいものがあります。問題をすり替えてごまかしの答弁をすることによって、その人物に対する信用はそれだけ損なわれるということが、なぜこの人たちには理解できないか不思議でならないからです。考えられるのは、そんなことは百も承知であり、責任を問われるくらいなら、信用を失っても構わないと本気で思っているということです。まあ、まわりがそうであればそのうち神経が麻痺してきますから、自然とそうなっていくのかもしれません。
 
 この日の記者会見で野田総理は、福島原発の事故が収束したという詭弁を弄しました。たとえば大火が起こったときに、火が消えたのであれば火事が収まったといってよいでしょう。しかし、たとえ小さくともまだ火が残っている状態であれば、火事が収束したといういい方はしません。政府がいう「冷温停止状態」というのは、「再臨界による原子炉の暴走の可能性は極めて低くなった」という程度の意味であると理解して差し支えないと思います。それでも原子炉を冷やし続けなければならないことに変わりはありません。火は消えたように見えるけれども、いつ再び炎が燃え上がるかわからないので消防士は現場を立ち去ることができない状態のときに「火事は収束した」というのは適切ではないといえます。しかも福島第一原発では放射性物質の放出がまだ続いているわけです。ですから、どう考えても原発事故が収まったという表現はおかしいのです。
 さらに、「冷温停止の定義は菅内閣が決めた」という発言に至っては、これが一国の総理大臣の発言かと思うと情けなくなります。総理大臣というのは日本の最高責任者ですから、何があっても逃げるわけにはいきません。にもかかわらず、決めたのは菅内閣だというこどもみたいな理屈をこねて自分には責任がないということを明言したのです。
 前内閣が決めたことでも、それが誤りであったとわかれば今の総理大臣が訂正するのが筋でしょう。それが国民に対する責任というものです。あるいは、野田総理が何も間違っていないと思うのであれば訂正する必要はありません。つまり、すでに決まったことがあったとしても、それをそのまま実施するかどうかの判断には現職総理の責任が伴うということです。
 したがって「菅内閣が決めた」(だから自分には責任がない)という発言をするのは卑怯であり、総理大臣は国民に対する責任を負っているという自覚が欠如しているといわれてもしかたないと思います。そういえば、野田総理を選んだのは民主党の国会議員たちですから、この人は、自分を選んだ民主党の議員にだけ配慮すればいいと思っているのかもしれません。
 けれども、自民党政権時代にそういうことを繰り返し行った内閣をさんざん攻撃してきたわけですから、そのような内閣がいずれすと国民から愛想を尽かされていずれ失脚する羽目になったというのはわかりそうなものだと思うのですが、きっと学習能力がないのでしょう。

 野田総理の会見の目的は、国民に対し原発事故の影響についてもはやそれほど心配する必要はなくなったのだということを伝えたかったのかもしれません。大きな事故や事件が起こると、状況を過小評価した発表をすることで世論をなだめようとするというのが日本政府の体質です。政府が心配しているのは国民の生命や安全を守ることではなく、経済や秩序を混乱させないことの方を優先しているということが今回の原発事故をめぐる政府の対応をみていてよくわかりました。だから信用されなくなったのです。
 総理会見の目的としてもうひとつ考えられるのは、ステップ2が前倒しで達成されたということを自分の政権の成果を強調したかったということです。いずれにせよ、欲に目がくらんだ人間は墓穴を掘るという典型的な見本になりつつあると思います。「原発事故が収束した」という発言は失言でした。国会が閉会中でよかったですね。
by T_am | 2011-12-17 08:12 | その他