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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

こどもの使い-朝日新聞-

 12月15日のasahi.comに「年間20ミリシーベルト『発がんリスク低い』 政府見解」というニュースが掲載されました。これは内閣府が設置した「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」による同日付けの第8回会合における発表を受けての報道です。その言わんとするところは、年間20ミリシーベルトを被曝した場合の影響は、喫煙などの他の発ガン要因と比較しても健康リスクは低いというというものであり、その前提として動物実験により、一度に被曝するよりは長期間にわたって累積で同じ線量を浴びた方が発ガンリスクはより小さいと認定されたということがあるというものです。
 さらにこの記事の中には、「喫煙は(年間)1千~2千ミリシーベルト、肥満は200~500ミリシーベルト、野菜不足や受動喫煙は100~200ミリシーベルトのリスクと同等」という記述もあり、それらに比べると年間20ミリシーベルトという被曝量は微々たるものであるかのように思わせる書き方がされています。

(年間20ミリシーベルト『発がんリスク低い』 政府見解)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/kaigiannai_111215.html

 今回の原発事故に対する政府の対応とマスコミ報道がどのような影響を及ぼしたかというと、「政府やマスコミの言うことを鵜呑みにするのではなく、真実を知りたいと希求する人々」や「安全かどうか自分自身で判断したいと思う人々」を生み出しました。高価な線量計を買い求め自分たちが住む地域の放射線量を自主的に測定したり、わが子に弁当やお茶を持たせて学校に送り出す親などがそれにあたります。
 どうしてそういう行動に出るのかというと、政府やマスコミの言うことは信用できないという思いがあるからです。
 したがって、政府もマスコミも自分たちが信用されていないということを真摯に受け止めなければならないのですが、いっこうに改まる気配がありません。朝日新聞のこのニュースはその典型であるといえます。
 
 このワーキンググループの第7回会合(12月12日開催分)の模様がネット上に公開されていたので、それを見てみましたが、こういう場で発言する人は結論しか述べようとしません。なぜその結論に至ったのかという根拠や論理が示されることはないのです。
 第8回会合(12月15日付)で発表された「喫煙のリスクは年間1千~2千ミリシーベルトの被曝と同等」という根拠は何なのか、まともな学者であればきちんと示すはずですし、誠実なジャーナリストであれば自分が納得したものだけを伝えようとするはずです。ところが、この記事にはそれがなく、単にこういう発表があったと記述しているに過ぎません。こういう行為を世の中では「こどもの使い」と呼んで軽蔑しても構わないということになっています。
 わが家では朝日新聞をとっていませんが、きちんと購読料を払っているにもかかわらずこういう程度の低い記事を読まされる人は本当にお気の毒だと思います。

付記
 第8回会合の模様は本日現在まだネット上で公開されていません。また、過去の会合の模様(動画)は公開されていますが、議事録(テキスト)の公開はされていません。動画は政府インターネットテレビで閲覧することができます。
 なお、朝日新聞の記事は「こどもの使い」程度のレベルですが、読売新聞になると12月4日付の社説(放射線の影響 冷静に健康リスクを考えたい)で、喫煙や肥満、野菜不足との比較を取り上げています。その上で「万が一の放射能汚染を恐れて野菜は食べない選択をすれば、より大きな健康リスクを背負い込みかねないことを示している」と述べています。ただし、この社説が掲載された直前の12月1日付けの第6回会合で、同志社大学心理学部の中谷内一也教授は、こういうリスクの比較をするときに、説得しよう(丸め込もう)という意図が見え見えだとかえってうまくいかないということを指摘しています。にもかかわらず、都合のいいところだけを拾い集めるという読売新聞の社説は朝日新聞に比べるとはるかに悪質だといえます。

(読売新聞の社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111203-OYT1T00944.htm
by T_am | 2011-12-16 00:42 | その他