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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

経済を動かす原理

 地球上の自然現象が数個の要因(太陽の熱、地球と月の重力、地球の自転、地球内部の放射性物質の崩壊熱)と単純な物理の法則(万有引力の法則とエネルギーは高いところから低いところへ移動するという法則)によって起きているように、経済も単純な要因と原理によって動いているのではないかという気がしてなりません。

 経済を動かす要因とは人間の欲望と感情に他なりません。そこではどんな原理が働くかというと集中の原理です。
 経済活動とは、売り物になる商品やサービス・情報を継続して供給し続けることによって利益を得ていくというものです。その利益の一部は次の「生産」のための原資や投資に使われます。そうすることで、次回の「生産量」は少し増えますから、それが売れたときの収入もそれだけ増えることになり、利益も少し増えることになります。そうやって増えた利益の一部を次の「生産」のための原資や投資に充てることで、さらに「生産量」は増えることになります。
 実際には、設立された会社のすべてが軌道に乗って成長を続けるわけでははありません。なぜなら、私たちの社会は限られた人口・限られた市場しか持たないので、すべての会社は自分の取り分を確保するために競争を強いられるからです。そうやって淘汰が行われる過程で何が起こるかというと、競争に勝ち残った企業に資金が集中していくことになります。

 経営資源であるヒト・モノ・カネのうち、ヒトとモノは実体をもつ存在ですから、その移動は時間的物理的な制約を受けることになります。ところがカネというのは、人間がつくった概念を記号化したものにすぎませんから、その移動に際しては基本的に時間的物理的な制約を受けることがありません(これは情報も同じです)。事実、カネの流れの前に国境は無意味であり、多国籍企業の登場と成長はそのことを端的に現しているといえます。。
 そうなると何が起こるかというと、社会や政治体制の枠組みを超えて経済が動くことになり、ひいては既存の体制を脅かすようになるといってよいと思います。体制の改革というのは、常にそのときの状態に基づいて制度設計がなされるわけです。ところが、経済だけはその体制の枠組みをいとも易々と超えてしまいます。これに対し、政治は、既存の体制の一部に修正を加えることで対処しようとしますが、根本的な解決策とはなりません。というのは、既存の体制がもはや時代遅れになっているのですから、根本的な解決策というのは制度そのものをつくりかえる以外にないからです。

 過度の集中が現実のものとなった経済は社会に害をなすようになります。それに対する政治の役割は、過度の集中を抑制するか(独占禁止法はそのために設けられています)、税金によって集中した富を吸い上げて再分配するというものです。ところが、政治家の中には経済の集中原理に荷担する政策をとる者もいて、その場合、現在のアメリカのように、国民は塗炭の苦しみを舐めることになります。
 それでは日本はどうかというと、同じような考え方が主流を占めているように思います。そのロジックは、規制を撤廃し自由な経済活動を可能にすることで経済成長を促せば、その分け前は国民のすべてに行き渡るというものです。実際、高度成長時代とバブルの頃の日本がそうでしたから、経済成長(この場合はGDPの拡大)が行われれば、財政問題も年金問題も医療費の問題も一気に解決すると信じられているのです。

 このような「信仰」は二十年前までの状況に基づいており、その後経済そのものが変わってしまったということを計算に入れていないという致命的な欠点があります。おそらく一部の経営者たちはそのことにとっくに気づいているはずですが、大部分の国民はそうではありません。
 2002年からリーマンショックが起こる2007年までは、経済成長がずっと続いておりイザナギ景気を超えたといわれていましたが、生活実感とはかけ離れていました。そのことを考えれば、経済成長がすべてを癒してくれるというのは幻想に過ぎないことがわかりそうなものですが、幻想を信じていたいのかもしれません。

 経済が富の集中と偏在をもたらすというのは避けられないことであり、それを否定しようとすることはかつての社会主義経済や江戸時代における倹約令のように無残な失敗に終わるのは目に見えています。それよりも、経済とうまく折り合いをつけることができる政治体制をつくりあげた方がいいに決まっているのであって、先進各国が抱える問題は経済が既存の政治体制の手に負えないものになってしまったことによると思います。
 そういう意味ではTPPへの参加というのは多国籍企業が儲かる仕組みをつくろうとするものです。関税が撤廃され、投資の制約を受けなくなれば、製造業にとっては人件費の安い国に生産拠点を移す動きが加速することは明白です。隣の県に引っ越すような感覚で日本から海外にどんどん人が出かけていくようになればTPPのメリットも大きくなるのでしょうが、そうなるまでには時間もかかるでしょうし、そういうことはしたくないという人も大勢いるはずです。そうなるとTPPに参加するメリットよりもデメリットの方が大きくなりますから、日本にとっては傷口を広げることになりかねないと思います。


 
by T_am | 2011-11-24 23:37 | その他