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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

仮免総理

 野田総理が国連総会から帰ってきて、今日の大相撲秋場所の千秋楽で優勝を決めた横綱白鵬に内閣総理大臣杯を手渡しました。そのニュースを読んでいて、安倍晋三以来の総理大臣というのはどれも仮免の総理ではなかったかと思い当たりました。
 国会が指名したわけですから法的には何の問題もない以上一国の総理に向かって仮免の総理とは失礼ではないか、というお叱りの声も聞こえて来そうですが、今の野田総理にしても身内である民主党の国会議員によって選ばれたから総理大臣になったのであり、国政選挙を経ていないのですから、仮免と呼んでも間違いではないと思います。
 議院内閣制という制度上国民が直接総理大臣を選ぶことができないために日本の総理大臣は、アメリカなどと比較して、極めて不安定な地位にあるといえます。アメリカ大統領の場合は4年間の任期中死亡しない限り途中で辞めるということはまずありません。唯一の例外はウォーターゲート事件により任期中に辞任したリチャード・ニクソン大統領だけです。
 ところが日本の総理大臣は、めでたく首班指名を受けてもその後の選挙で負ければその政権基盤は不安定なものになります。安倍晋三、麻生太郎、鳩山由紀夫はそのために辞めてしまう羽目になったといってもよいでしょう。
 このように考えると、総理になった後の選挙に勝って初めて本格政権になることができるのであり、それまでは仮免の総理であり政権であると理解した方がよさそうです。
 このことは、仮免の期間中に大きな変化を成し遂げようとした総理は結果として次の選挙で負ける可能性が高いということにつながると思います。安倍晋三は総理就任後エネルギッシュに改革に取り組んだために参議院選挙で敗北することになりました。また、鳩山由紀夫は変化に取り組もうとしましたが、空中分解してにっちもさっちもいかなくなって参議院選挙を前に辞任してしまいました(党内から「このままでは7月の参議院選挙が戦えない」という声が強くなったため)。そうかといって麻生太郎のように手をこまねいて状況を悪化させるだけの総理では選挙に勝てないのですから、日本の総理大臣であり続けるというのは至難の業であるのかもしれません。

 野田総理は震災からの復興財源の確保のためには増税が必要であると主張しています。もっとも、増税といっても法人税は予定されていた減税時期を先送りするだけですから、もっぱら所得税の増税によって財源を確保しようとしています。企業を優遇する政策は自民党時代と何ら変わりないのですから、財務省の思惑通り野田総理が動いていると思われてもしかたないといえます。(所得税の増税だけでは反撥を招くと心配したせいか、たばこ税を増税する可能性にも言及するようになりました。)
 野田総理のこのような姿勢は財界からは好意的に見られているようですが、仮免の期間中であるにもかかわらずこういう大きな変化をもたらそうとする以上、次の選挙で反動が起こることは避けられないといえます。そのためか、野田総理は「政治的空白をつくるべきではない」という理由で当面総選挙を行う考えがないことを述べています。
 したがって、今後考えられる展開としては、このままずるずると内閣支持率が低下していき、野田政権も短命に終わる可能性が高いと考えられます。たとえそうであっても、増税を行ったという事実は消えないのですから、財務省にすれば野田政権が短命政権であっても構わないということなのでしょう。すなわち、総理大臣が官僚に使い捨てにされる時代になりつつあるといえるのではないでしょうか。

 その点、うまく立ち回ったのが小泉元総理でした。「痛みを伴う構造改革」というどうにでも解釈できる標語を掲げ、選挙に勝った後はじっくりと「いつまでも痛みが消えない構造改革」に取り組みました。また、構造改革の本命であった郵政民営化に反対する勢力が侮れないとみるや、解散総選挙に打って出て、自民党が圧勝した後は好き放題やることができたわけです。

 以上のことから、新たに総理となった場合、次の選挙で勝てるだけのスローガンを打ち出してできるだけ早い時期に総選挙を行うけれども、具体的な政策に取り組むのは選挙に勝ってから、というふうにすべきであるということがわかります。これは一見権道であるかのようにみえますが、仮免期間中の政権には大きな変更に取組んでもらっては困るのです。どうしても取り組みたければ総選挙をやって国民の信を問うという手続きが必要だということで、このようなことを述べているわけです。

 特に、政権にとって落とせないのが、衆議院と違って総理の解散権が及ばない参議院選挙です。参議院は3年に1回しか選挙がやってこないので、いったん決まった勢力図が3年間変えられないということを意味します。
 次の参議院選挙は2013年7月です。すでに国会が「ねじれ」状態にある以上、民主党政権を引き続き維持するためにはこれは絶対に落とせません。しかし、それまであと2年もあるわけでから、何かしら実績を挙げておかないと国民から見放されることになってしまいます。そのためには、衆議院選挙を行うことによってビックプロジェクトに対するお墨付きを得ておく必要があると思います。
 野田総理の場合、政策的に自民党と大きな差はないので、選挙に持ち込んでも争点を明確にできないまま戦わなければならない可能性が払拭できません。民主党にとっては逆風が吹いているだけに苦戦することは避けられないといえます。

 結局、野田政権というのは、(その是非はともかくとして)増税という大きな課題に取り組むためには政権基盤が弱すぎる(衆議院を解散しても勝てる見込みは薄い。かといって増税を実現させると国民の反撥が大きくなり、政権をそれ以上維持できなくなる)というジレンマを抱えているように思えます。それもひとえに総理大臣が仮免総理であることに由来するのだといえます。
by T_am | 2011-09-25 22:03 | その他