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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

現代の魔女狩り

 9月10日の朝刊は、同日夜に辞任した鉢呂吉雄前経済産業大臣による「死の町」発言と「放射能をつけちゃうぞ」という発言が⒈面に掲載されていました。どういう文脈で発言したのかわからないので、この人の真意がイマイチわかりませんが、⒈面トップに掲載するような発言だったのか疑問に思います。むしろ、単に、表現力の拙さと幼稚な冗談に過ぎなかったのではないかという気がしています。

 それよりも呆れたのは、この人の「放射能つけちゃうぞ」発言の背景として、9日に福島原発を視察した際に着ていた防護服を着たまま東京に戻ってきて、その格好で記者会見に臨んだということです。
 防護服といっていますが、要するに雨合羽のようなものですから、放射線の外部被曝を防ぐことはできません。それでは何のために着用するのかというと、これを着用しないと衣服に放射性物質が付着する恐れがあり、それを持ち帰ってしまうことが懸念されるからです。
 原発事故により避難している人たちが、警戒区域内に立ち入るときには防護服を着込まなければなりません。警戒区域から戻って来たときには当然防護服を脱ぐことになります。
 これは国の指示によるものですから、総理大臣といえども警戒区域内に入るときには同じように防護服を着なければなりません。当然外へ出るときには防護服を脱ぐことになります。(伝染病の隔離病棟に入った医師や看護師が中から出てくるときに厳重に殺菌を行うのと理屈は同じです。鉢呂前大臣がやったことは、隔離病棟から出てきた医師が、最近やウィルスが付着しているかもしれない服を着たままで人前に現れるようなものです。まともな神経を持った医療従事者であれば絶対にそんなことをしないのはいうまでもありません。)
 鉢呂氏がそれを怠って、防護服を着たまま東京まで帰ってきたというのは、今回の視察がパフォーマンスを目的としていたからでしょう。福島原発から放出される放射性物質も減ってきているし、たいしたことはないと思っていたのでしょう。あんな着心地の悪いものを着たまま東京まで戻ってきて、そのまま記者会見に臨んだというのは、福島原発に行ってきたばかりという生々しさを強調したかったのではないかと推測されます。(あんた、いったい何のために仕事をしてるのさ?)
 パフォーマンス目的の視察の挙げ句、「死の町」だとか「放射能つけちゃうぞ」という発言をしたわけですから、福島の避難者や原発の作業員が怒るのも当然だといえます。

 この人の辞任はやむを得ないと私も思いますが、その理由はここに述べたように、自分の職務の遂行よりもパフォーマンスを優先する目的で視察をするような人間性の持ち主だと思うからです。そういう人物は有害無益であって、速やかにご退場いただいた方がよいと思います。だから、この人の発言が不適当で、避難者や原発の作業員の心を傷つけたからではありません。

 しかし、マスコミはそういう考え方はしないようです。各社ともこの人の発言を⒈面にでかでかと掲載し、続いてその発言に対するいろいろな人の反応(といっても非難する声ばかり)を集めて報道していました。いい方を変えれば、マスコミは火をつけて、さらに大火事になるように煽った結果、大臣が辞任するという事態になったわけです。
 どうやらマスコミは事件を欲する(その方が新聞は売れるし視聴率も上がるから)あまり、事件を仕立てるということをやっているように思います。
 問題発言をした閣僚が不適切だと思うのであれば、堂々と論陣を張って世論に問うのが筋だと思います。しかし、マスコミのやり方は、問題発言に対する市井の人の声を集めて紙面に掲載するという「情報操作」が欠かせなくなっています。おそらく明日の朝刊に鉢呂前大臣の発言を糺す社説が掲載される予定だったと思いますが、今回はそこまで行く前に本人が辞めてしまいました。(使命感の強い人であれば、自分の職務を全うすることを優先して考えるので、簡単に辞任することありません。もともとたいした使命感も責任感もないからこそ簡単に辞任することになるのです。)

 今回の騒動で感じたことは、この国のマスコミというのは怖い存在だということです。マスコミがその気になれば、誰でも簡単に悪者に仕立て上げることができるのですから。
 中世に行われた魔女狩りが、形を変えて現代でも行われているようです。そこではマスコミは告発者であり検察官でもあります。
 これまで、テレビ局は「やらせ」、新聞社は「誤報」を繰り返してきました。その背景にあるのは、事件をセンセーショナルなものにするためであれば、なんだってやりかねないという体質です。したがって、マスコミから「魔女」にされた人は、多勢に無勢で、とうてい太刀打ちできるはずがありません。
 悪い時代になりつつあるといえます。
 
by T_am | 2011-09-11 00:41 | その他