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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

放射線に関するおさらい(2)  ベクレルとシーベルト(その2)

 前回はベクレルというあまりピンとこない単位について整理してみました。原子炉の外に飛散した放射性物質はごく微細なチリという形で存在しています。それらは風に乗って飛んでいったり、あるいは水に流されたりします。その途中、植物に吸収されるものもあれば、動物が取り込む(この場合経口摂取と吸入摂取の2種類があります)場合があります。
 そこにどれくらいの放射性物質が存在するかを示す単位がベクレル(1秒間に崩壊した原子核の数)です。ただし、一般に使われている放射線計測器はガンマ線を計測するものですから、ガンマ線を放出する放射性物質(核種)しか検出することができません。ベータ線を放出する放射性物質(核種)の検出は特殊な方法が用いなければならないとのことです。
 放射性セシウムが検出されたというニュースが多く、放射性ストロンチウム(骨に蓄積されやすい)が検出されたというニュースをほとんど聞かないのはこのためです。つまり、そこに存在しないから検出されないのではなく、検出方法が違うので(存在していたとしても)検出されていないと考えることができます。
 よく耳にするゲルマニウム半導体検出器というのもガンマ線を計測するものですから、ガンマ線を放出するセシウムの検出には役立ちますが、ストロンチウムを検出することはできません。したがって、ベータ線を計測する検査方法が必要なのですが、特殊なだけにどのような検査体制がとられているのか知りたいところです。そして、そのことが明らかにされていない場合、放射性セシウムが検出されたときには放射性ストロンチウムもいっしょにあるものと考えたほうがよいかもしれません。

 前回整理したように、放射線の被曝量を示す単位がシーベルトです。被曝量が多くなれば当然人体が受ける影響も大きくなります。
 ここで注意しなければならないのは、被曝量は加算したり累積しなければならないということです。仮に、2種類の放射性物質が体内に取り込まれたとすると、被曝量はその2種類の放射性物質から放出される放射線の合計となります。さらに、翌日も同じだけ放射性物質が体内に取り込まれたならば、その分も加算しなければなりません。すなわち、前日からの累積被曝量に新たに取り込んだ分を加算しなければならないのです。
 外部被曝と違って、内部被曝の恐ろしさ・複雑さはここにあります。外部被曝は、その時その場所の空間線量だけを考えればいいのであって、仮に線量が高い場所であればそこに近づかない、もしくは長居をしないという自衛策をとることができます。しかし、内部被曝の場合は、いったん取り込んでしまった放射性物質は体外に排出されるまで被曝が続くのです。

 すでに述べたように、シーベルトという単位を用いた報道発表には、もしかしたら測定されていない放射性物質も存在しているかもしれないと疑った方がよいように思います。そいうのは、人間には、「ここにこれが存在する」と断言されると、それ以外のものも存在しているとは思わなくなってしまうという性質があるからです。でも実際には、そこにあるとわかったものだけをあるといっているのであって、あるかどうか測定されていないものについて、そこに存在しないといっているわけではありません。

 ガンマ線を検出する測定器は様々な種類がありますが、ベータ線を検出できる機器は少なくなります。また、アルファ線は透過力が弱いため、プルトニウムのようにアルファ線を放出する放射性物質が体内に入ってしまうと、外部からこれを検出することはまず不可能になります。
 ゆえに、内部被曝の場合、実際の被曝量を正確に測定するのは事実上不可能です。
 また、公表されている空間線量(=放射線の強さ、単位:マイクロシーベルト)はガンマ線をはかったものです。一般に用いられているGM計数管ではベータ線の放射線の強さをはかることはできません。
 放射性物質にはベータ線を放出するものもあれば、アルファ線を放出するものもあります。ある場所の空間線量が○○マイクロシーベルトであると測定されたときに、それが意味するのは、その場所のガンマ線の強さ(事故発生後120日が経過した今日では主に放射性セシウムによる)を示すのであって、アルファ線やベータ線を放出する物質がその場所に同時に存在していないということは誰にも断言することはできないのです。
 したがって、ご自分が住んでいる地域の空間線量が福島原発の事故後増えたという場合、公表されている空間線量(マイクロシーベルトで表示されている場合はガンマ線の値)以外にも「測定されていない放射線」が存在しているかもしれないと疑った方がよいと思います。

 以上のことから、自衛上次のように考えた方がよいように思われます。

(福島原発の事故発生後、空間線量の値が高くなった地域)
 放射性セシウム以外にも放射性ストロンチウムが混在している可能性も否定できません(ひょっとすると、ごく微量かもしれませんが、プルトニウムも飛散してきているかもしれません)。このような地域では、放射性物質を体内に取り込まないようにするために、外出時にはマスクや手袋をして、肌をなるべく露出させない服装をした方がよいと思います。また帰宅したときは、家の外で服についた埃をはたき落とすようにしたうえで、ただちにシャワーを浴びるということを習慣づけた方がいいと思います。
 また、車に乗る場合、外気を取り入れないようにした方が安全です。


(食品から放射性物質が検出された場合)
 特定の地域で農作物や畜産物から放射性セシウムが検出された場合、次の2つの可能性が考えられます。

1.同じ地域で生産されている他の農産物・畜産物も汚染されている可能性
2.汚染が確認された農産物・畜産物が放射性セシウム以外の放射性物質にも汚染されている可能性

 ただし、これらはあくまでも可能性であって、疑い出せばきりがありません。放射性物質というチリは均等に降り積もるのではなく、風や水の流れ、または地形によって濃淡が生じます(局所的に放射線量が高いホットスポットができるのはこのため)。また個体によって吸収した放射性物質の量は当然異なります。
 このため、食品の場合は全数検査を行い、基準値を超えたものは出荷させない(基準値以下であればOKとする)という体制を確立することが必要です。当然、安全基準の設定(1kgあたり ○○ ベクレル以下という基準値)には、放射性セシウムによる汚染だけを考慮するのではなく、いっしょに汚染しているかもしれない放射性ストロンチウムの影響も加味して厳しく設定する必要があると思います。

付記
 GM計数管に附属しているキャップをつけて測定するとガンマ線だけを検出します。このときは放射線の強さ(マイクロシーベルト)もはかることができます。キャップを外して測定するとベータ線も検出するので、このときは放射線量(ベータ線とガンマ線の合計値)がわかります。したがって、キャップの有無で放射線量が異なる場合、そこにはベータ線を放出する物質が存在することがわかります。
by T_am | 2011-08-04 23:00 | その他