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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

放射線に関するおさらい(1)  ベクレルとシーベルト(その1)

 福島第一原発の事故によって、福島県以外で生産された農作物からも放射性物質が検出されているという報道が続いたかと思えば、今度は稻わらやホームセンターで販売されている腐葉土からも放射性物質が検出されたというニュースが続きました。
 稻わらや腐葉土は、それぞれ独自の流通ルートがあるので、福島原発から放れた地域にまで放射性物質が広まる可能性があり、既に肉牛でその影響が出ています。
 これらの報道をみていると、主に放射能が検出されたという事実を伝えるものがほとんどであり、それがどのような意味を持つのかまで踏み込んだ報道はまずありません。そのうえ、政府による福島に続いて宮城や岩手の牛の出荷停止指示というニュースを聞けば、誰だって不安に思うのは当然です。
 この「不安」というのは、なんだかよくわからないけれど放射能はこわいという気持ちに由来するのですが、肝心の「それがどれくらい危険なのか」ということが一切伝えられていないこともその不安を煽っているようにも思われます。そこで、放射線について整理してみることにしました。

1.ベクレル
 放射線被曝量をあらわす単位としてシーベルト( Sv )が使われるの対し、放射性物質の量をあらわす単位としてベクレル( Bq )が用いられます。
 ベクレルというのは、1秒間に崩壊する(=放射線を放出する)原子核の個数を示します。したがって、腐葉土から1キログラムあたり1万4,800ベクレルの放射性セシウムが検出されたというのは、腐葉土1キログラムあたり平均で1万4,800個の放射性セシウムの原子核が崩壊しているということを意味しており、実際に含まれている放射性セシウムの量はもっと多いことになります。(この目安については後述します。)

 ここで、Wikipediaに書かれているベクレルとシーベルトの比較がわかりやすかったので、借用させてもらうことにします。

 お金にたとえると、放射線は硬貨や紙幣としてイメージすることができます。たとえば、
放射性セシウムが放出するベータ線が100円硬貨であるとすれば、プルトニウムが放出するアルファ線は2千円札であると思えばよいのです。つまり、アルファ線はガンマ線の20倍危険であるということになります。
 その一方で、ベクレルというのは硬貨や紙幣でいえばその個数(枚数)をあらわす単位にすぎません。したがって、プルトニウムの1万ベクレルとセシウムの1万ベクレルとでは危険性がまるで違うということになります。
 これをまとめると次のようになります。

アルファ線  2千円札
ベータ線   100円硬貨
ガンマ線   100円硬貨
エックス線  100円硬貨
陽子線    500円硬貨
中性子線   500円硬貨~2千円札

付記
 ここでベータ線やガンマ線を100円硬貨にたとえたのは比較のためであり、これらの危険性がたいしたものではないという意味ではありませんのでご注意ください。

 
 シーベルトというのは、これらの硬貨や紙幣の組み合わせによる金額そのものを示します。すなわち、放射性セシウムの量が2倍になれば、放射線量も2倍になります。
 ところが放射性物質による汚染の実態は、このような単純なものではなく、様々な放射性物質が混在しているために、ちょうど財布の中にいろいろなお金が入っているように、それらの合計値が被曝量となります。腐葉土から放射性セシウムが検出されたという報道がありましたが、もしかすると放射性ストロンチウムも混じっているかもしれません(事故からかなりの日数が経過した現在では、半減期の短い放射性ヨウ素はほとんど残っていないものと考えられます)。

 放射性物質について、原子力資料情報室(CNIC)の「放射能ミニ知識」に基づいて主なものを挙げると、

http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/


ヨウ素131(半減期 8.04日)     
ベータ線とガンマ線を放出。10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.22ミリシーベルト。甲状腺に蓄積しやすい。

セシウム137(半減期 30.1年)
ベータ線を放出。崩壊後放射性バリウム(半減期 2.6分)になり、さらにガンマ線が放出される。10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルト。時間の経過とともに大半は排出されるが、膀胱に蓄積しやすい。

ストロンチウム90(半減期29.1年)
ベータ線を放出してイットリウム90(ベータ線を放出)となる。10,000ベクレルのストロンチウム-90を経口摂取した時の実効線量は0.28ミリシーベルト。骨に蓄積されやすく、長く体内に残留することになる。

プルトニウム239(半減期 2.41万年)
アルファ線を放出。10,000ベクレルの不溶性酸化物を吸入した時の実効線量は83ミリシーベルト、経口摂取した時は0.090ミリシーベルト。経口摂取した場合は体内に吸収されにくい(プルトニウムを飲んでも安全といった東大教授がいたそうですが、それはこのことに由来するのでしょうか?)けれども、呼吸器に吸着した場合の被曝量は著しく大きくなる。毒性が強いといわれるのはこのため。


付記
 「実効線量」とは被曝総量を示します。ニュースでは、「○○の地点で△△マイクロシーベルト/時の放射線が計測されました」といういい方をしていますが、これは毎時シーベルトといい、被曝した場合の放射線の強さをあらわします。問題となるのは、「その人ががどれだけ被曝したか」という被曝総量の方です。(被曝総量=毎時シーベルト(被曝した場合の強さ)×時間数となります。)
 これに対し、食品安全委員会が最近打ち出した「生涯被曝量」という概念があります。これは人を惑わすものだと思うのですが、長くなるので別な機会に考察することにします。
by T_am | 2011-08-04 03:41 | その他