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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

権力を欲する理由

 管直人という政治家に対して、政界・財界・マスコミは早く辞めろという姿勢を鮮明にしており、世論もそれに追随しているようですが、総理が替われば現在日本が抱えている難題が解決するかというと誰もそんなことを期待してはいないように私には思われます。

 菅総理に対し、早く辞めた方がいいと思っている人は、菅総理の政策(TPPや消費税の増税、原発の見直しなど)を受け入れがたいと考えているという点が共通しています。それらの政策は非常に広範囲に渡るので、後任の総理が誰になっても、現在菅総理を辞めさせたがっているすべての人を満足させる解答を提示できるはずがありません。

 私の立場は、TPP(反対)・消費税増税(論外)・脱原発(賛成)というものですから、これ以上菅総理に任せていたらとんでもないことになるという思いを払拭できないのですが、それだけにこの人がなぜ総理の座にこだわるのか不思議でならないのです。これまでの総理大臣であれば、これだけ非難・嘲笑されれば健康を損なうか、やる気をなくしてしまうか、もはや自分には事態を収拾不能であるとして辞任するというパターンのいずれかをたどっていました。しかし、管直人はそのいずれにも属しません。よほどタフな神経をしていると驚嘆せざるを得ないのですが、その強靱さはどこから来るのだろうということに興味が尽きません。

 浜岡原発の停止要請といい、今回の、すべての原発でストレステストを実施するという発言といい、菅総理という人は行き当たりばったりの思いつきで発言する人というイメージを持っていたのですが、別な視点でこの人を見たらどう映るのかという記事をネットで見つけたので、参考にしてみたいと思います。

「内閣総理大臣夫人・菅伸子さんからの手紙を読んで」
http://wakeari-book.jp/?p=1637

「内閣総理大臣夫人・菅伸子さんからの手紙を読んで その2」
http://wakeari-book.jp/?p=1642


 これを読んで、政治家が権力を欲する理由について改めて考えさせられました。いうまでもなく、政治家が権力を欲するには2つの場合があります。第1は、自分がやりたいことを実現する手段として権力が必要な場合であり、第2は権力を得ること自体が目的となっている場合です。
 歴代の総理大臣がどうだったかというと、本人の気持ちを知る術がないのであくまでも推測になるのですが、概ね次の通りではないかと思います。

 小泉純一郎   郵政民営化を実現するため
 安倍晋三    日本を「美しい国」にするため
 福田康夫    ?
 麻生太郎    ?
 鳩山由紀夫   「友愛」を実現するため
 管 直人    現在日本が抱えている問題に解決の道筋をつけるため

 小泉純一郎の前任者については棚からぼた餅で総理大臣になった人ですから、第1のタイプではありません。総理を辞任した後も政界に影響力を及ぼすことを好んでいるところをみると第2のタイプの政治家であろうと思います。
 福田康夫と麻生太郎の2人についても、この人たちが何をやりたかったのか未だによくわからないので、第2のタイプの政治家であろうということにしておきます。
 管直人の「現在日本が抱えている問題に解決の道筋をつけるため」というのは、先ほどご紹介したサイトに書かれていることをそのまま要約したにすぎないのですが、このような視点で管直人という政治家を見ると、内閣不信任決議案が否決された日以降のこの人の発言と辻褄が合うように思います。
 問題があっても先送りにして事を荒立てなければ丸く収まるというのは日本人の知恵といってもよい発想法です。歴代政権はその発想法に従って問題を先送りにしてきたわけですが、管直人はもはやそれでは立ちゆかないと思っているようです。この人にとって現時点で先送りにできない問題というのは、震災からの復興・福島第一原発の事故の収束・原発の見直し・消費税の増税(社会保障の財源確保?)ということなのでしょう。したがってそれらの問題の決着点が見えていない以上、「辞めるという言葉を使ったことは一度もない」という発言が出てくるのも当然ということになります。
 ところが、菅総理は辞めて当然と考えている人たちにとって、このような発言はとうてい受け入れることができません。この人の不幸なところは、何でも自分が目を通し、自分で決めなければ気が済まないという性格にあります。こういう人がトップになると、部下との軋轢が絶えなくなります。その典型的な例が海江田経済産業大臣でしょう。みずから佐賀県に出かけていき、玄海原発の安全性は政府が保証するという大見得を切って地元の了解を取り付けたところで、上司である総理が「すべての原発でストレステストを実施する」と発表したのですから、ハシゴを外された思いと面子を潰された悔しさは容易に理解できます。そういうことを繰り返した挙げ句、本来味方であるはずの民主党の政治家たちからも見放されてしまったのですが、本人がそれを苦にしている様子が見えないのですから、この人の信念の強さというのは並大抵ではないということになります。

 こういうタイプがトップになるのであれば、周到な準備を重ねたうえで明確な方針を打ち出すということをしなければ組織はうまく回りません。組織というのは、上司が方針を打ち出せば、それが気に入らないものであっても、部下はそれに従うものです。このことは、上司が指示を出さない事柄については、部下が自分の裁量で進めていくことを意味します。ところが、このようなタイプのトップは、誰よりも自分が賢いと思っていますから、部下の報告をそのまま承認するということはまずありません。部下がやったことを否定し、後出しジャンケンのような指示を出すということが日常的に行われるようになります。
 これをやられた部下はたまったものではありません。「だったら最初からいってくれよ!」と怒鳴りたいのをじっと我慢する以外にないのです。対策としては、事前に「こうしたいのですが、よろしいでしょうか?」とトップに確認してから事に当たる以外にないのですが、こういうタイプは仕事を抱え込むので殺人的に忙しくなり、部下との間で十分なコミュニケーションをとる時間を持つことができません。その結果、組織の効率とモチベーションが低下するという事態を招くことになるのです。

 自分にはやりたいことがあり、それを実現するためには権力を手にすることが必要だと考える政治家は、自分が権力を握ったらどうするかということを十分煮詰めておくことが必要だと思います。
 安倍晋三の場合は、自分が考える「美しい国」というのはどういう姿なのかを国民に理解してもらう前に総理になってしまいました。(きちんと理解されていたら、総理になれたかどうか疑問は残りますが・・・)
 また、鳩山由紀夫の場合は、「友愛」という抽象的な理想に満足して、自身のなかでそれを具体化する努力を怠っていました。だから、外交問題が現実のものになったときに為す術もなかったのです。
 
 興味深いのは、権力を手段であると思っている政治家は、挫折しても簡単に諦めないということです。安倍晋三は最近目立つ行動をするようになりましたし、鳩山由紀夫も辞任するときに政治から引退すると表明しておきながら、いっこうにそのそぶりを見せません。

 菅総理も同じタイプなのだと思います。

 菅総理は辞めるべきだと考えている人には、(私も含めて)それぞれの思惑があって自分の方が正しいと考えています。その最大多数派は原発をこのまま推進したいと考えている人たちですが、それを表だって口にすることはできません(このことはマスコミも同様です)。その葛藤ゆえに、菅総理は脱原発を争点とした解散総選挙に打って出るのではないかという疑念が生まれてくるのでしょう。
 今のところ菅総理は脱原発を争点にした解散総選挙をやるつもりはないと発言していますから、その懸念は払拭されたとみるべきですが、逆に言えばいつまでも居座るつもりであるということにもなります。
 菅総理を辞めさせるには、内閣不信任決議案を成立させる以外に方法はありません。しかし、既に一度否決されていることでもあり、同一会期中に内閣不信任案を2度提出しないという慣例に国会議員たちは縛られていますから、その可能性はほとんどないといってよいでしょう。(本当の理由は、今内閣不信任案を成立させれば解散総選挙になることは確実なので、2ヶ月程度の政治的空白ができてしまい、その間被災地の復興が遅れることになります。そうなったときの批判の強さが想像以上であることが今回身に染みてわかったからです。)
 従来の常識は、総理を支持する勢力が国会で過半数を占めていれば総理大臣は辞めなくていいというものでしたが、菅総理の出現はこれが幻想に過ぎないことを証明しました。総理大臣というのは一度なってしまえば、任期が決まっていないので、内閣不信任案が可決するか辞職する以外辞める必要がありません。菅総理のように四面楚歌という状況に陥っても辞めさせることはできないのです。せめてアメリカの大統領のように任期が決まっていれば、それまでの間我慢すればよいのですがそれもできません。
 管総理の在任中は、総理が掲げた最小不幸社会を実現することは不可能でしょう。むしろ、菅総理の功績は日本の政治制度にはこのような盲点があったことを私たちに気づかせてくれたというところにあると思います。


付記
 民主党内はもとより内閣のなかにも味方が少ない菅総理であり、まさに四面楚歌という状況にあるわけですが、総理に残された起死回生の一手は、正しい情報を矢継ぎ早に公開することであると思います。そうやって、今まで政府・政治家たちが国民に説明してきたことはウソであったと国民に知らせ、その支持を取り付けることができれば風向きが変わるかもしれません。
 その点で、菅総理が全国幹事長会議で行った次の発言は注目してよいと思います。

菅首相「原発事故の最終処理に数十年単位」 (読売オンラインより)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110709-OYT1T00622.htm?from=top
by T_am | 2011-07-10 00:11 | その他