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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

原発にテポドンが打ち込まれたら?

 古い友だちが、関西電力の株主総会で、株主から「北朝鮮が原発に対してテポドンを撃ってきたらどうするか」という質問があったことを伝えるニュースを教えてくれました。

(スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20110629-OHT1T00335.htm

 他のマスコミはこのようなやりとりがあったことなどまったく伝えていないので、貴重なニュースだと思います。以下はその記事の一部の引用です。

 「北朝鮮が原発に対してテポドンを撃ってきたらどうしますか。その対策を教えて下さい」―男性株主の質問に、原発事業の担当役員である豊松秀己常務取締役(57)が答弁に立った。「テロ対策は、侵入があれば治安機関に通報する。大規模テロには対策本部を設置し、テポドンの場合は国民保護対策本部を作って国と対応する」その上で「仮に着弾があっても、堅固な立派な格納容器と思っている」と言い放った。(以下省略)

 最後の「言い放った」という表現に記者の感情がこもっていて、あまり感心しませんが、それにしてもお粗末な回答だと思います。この記事の後半で京大原子炉実験所の小出裕章助教のコメントとして、「仮に格納容器が壊れなくても、配管1本が壊れるだけで炉心溶融(メルトダウン)が起こりえる。格納容器が大丈夫だからというのは、もともと成り立たないバカげた返答」というのが載っているように、ミサイルが直撃すれば(原子炉本体はともかく)原子炉施設が無事であるはずはありません。この常務氏は、福島第一原発の事故をみて何とも思わなかったのでしょうね。あいかわらず原子炉本体が無事であれば事故は起こらないと思っているようです。こういう人が原発事業の担当役員をしている関西電力という組織はよほど病んでいるものといえますし、福井にある原発は本当に安全なのかね、と疑問を持たないわけにはいきません。

 実をいうと、この質問は意地が悪い質問であると思っています。というのは、会社側が少しでも危険性を認めれば、「そういう危険なものを放置していてよいのか」という二の矢が用意されていたことは明らかだからです。この常務氏はそれを避けるために支離滅裂な答弁をしたのかもしれませんが、その代わり私のようなものにまでからかわれることになったのですから、お気の毒と申し上げなければならないのかもしれません。

 ミサイルの直撃を受けて無事である施設というのは日本には存在しません(たぶん)。また、そういう場合の対策を講じている民間組織も(たぶん)日本には存在しないといってよいと思います。それが悪いというのであれば、たしかにその通りですが、だからといってミサイルの標的となるような施設(この場合は原発)を存在させてはならないという結論には結びつきません。
 ミサイルが命中すれば大事故になる施設は、原発以外にもいくらでもあります。それらを運営管理する民間企業に対し、北朝鮮のミサイルが飛んできたときの対策を講じなければならないというのは無茶です。原発や工場、石油タンクなどの重要施設をすべて地下に建設すれば防ぐことはできるでしょうが、現実には不可能です。実現不可能なことをやっていないという理由で責めるのはフェアではありませんし、そもそも問題の次元が違います。防衛責任を負うのは民間企業ではなくて国なのですから。

 この常務氏の他人事のようなテロ対策を聞くと、日本というのは平和な国なんだなと思ってしまいます。千年に一度の地震など起こるはずがないと思っていたものが実際に起きたからこそ、福島第一原発の事故につながったことを忘れてはなりません。東電や政府は想定外の出来事だったといっていましたが、この言い訳に二度目はないことを自覚してもらいたいものです。万一事故が起これば、その影響は凄まじいものとなる施設を運営しているのですから、可能性がゼロではない出来事に対しては、それが起きた場合どのように対処するかという計画を普段から整えておくことが必要だというのがフクシマの教訓だと思います。

「テロ対策は、侵入があれば治安機関に通報する。」
「大規模テロには対策本部を設置」
「テポドンの場合は国民保護対策本部を作って国と対応する」

 これらの空虚な言葉の羅列を読むと情けなくなります。あなたが貰っている役員報酬の大きさはあなたが果たさなければならない責任の重さに比例しているのですよ。それを考えたことはないのですか?
 工作員が密かに上陸して何人もの日本人を拉致していった事実が明らかになっているのですから、テロリストが原発を襲うという可能性がゼロであるとは誰にもいえません。
 テロリストが襲ってくるような状況を招かないというのは国の責任ですが、実際に襲撃されたときの被害を最小限にくい止めるためにはどうしたらいいか? という設問に回答を用意するのはマグニチュード9.0という地震が襲ってきた場合の対策を考えておくというのとレベルは同じです。ミサイルが直撃すれば被害を防ぐことはできませんが、テロリストに襲われても対応如何によっては被害を最小限にくい止めることは可能だからです。
 関西電力にはテロリスト対策がマニュアルとしてちゃんと用意されているけれども、公にすることができないのでこのような答弁をしたというのならば、お詫びしなければなりませんが、実際のところはどうなのでしょうか? 何も考えていないというのではないかという気がしてならないのですが・・・・・・


付記
 私の友だちは、この常務氏のことを「社蓄」と呼んでいました。己の主人に対しては家畜のように従順でありながら、他人に対しては鬼畜のような行為を平気ですることができる人間という意味です。昔、この言葉を発明した漫画家がいましたが、定着しなかったようです。久しく社蓄という言葉を聞くことはありませんでしたが、改めて聞くと、まさにぴったりという思いがします。
by T_am | 2011-06-30 23:39 | その他