ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

防護服に関する思い込み

 福島第一原発の事故で立入り禁止となっている警戒区域への一時帰宅の際に、熱中症対策のため防護服を着なくてもいいということになったそうです。初日となった6月25日は雨がぱらついていたせいか、防護服を着ないことにした人は参加者740人中十人程度だったとのことです。
 放射線の防護服といってもいろいろな種類があるようで、ニュースなどで何度も放映されたあの白い防護服は、その実態は雨合羽といった方がわかりやすいと思います。何も特別なものではないので、透過力の弱いα線(プルトニウムなどからから放出されます)はともかく、β線やγ線といった放射線を遮ることはできません。
 それではなぜ原発でこれを防護服として着用させているかというと、作業服などのまま原子炉建屋の中に入ると服の繊維についた放射性物質を事務棟などの普段人がいるとこに持ち込んでしまうからでしょう。つまり、原子炉建屋の中に入るときに防護服(雨合羽)を着て、帰って来るときに表面を洗い流せば、放射性物質を持ち込む恐れはなくなります。
 また、手袋やマスクをするのは、放射性物質が体内に侵入するのを防止するためでしょう。

 警戒区域内の空間放射線量をみると、もっとも低い地点で0.5マイクロシーベルト/時(6月23日現在、文部科学省のサイトから)であり、最も高い地点では79.3マイクロシーベルト/時となっています。かなりばらつきはありますが、それでも人が住むには高い値であるといわざるを得ません。
 一時帰宅の滞在時間は上限が決まっているので、警戒区域内に入った場合に気をつけなければならないのは外部被曝よりも、むしろ放射性物質を飲み込んだり吸い込んだりして発生する内部被曝の方でしょう。そうなると、絶対に欠かしてはならない道具はマスクと手袋であるということになります。雨合羽(防護服)は、洋服に付着した放射性物質を避難先に持ち帰ることを防ぐという意味で、本当は用意した方がよいように思います。というのは、避難先には家族がいるからです。

 福島第一原発の事故から百日が経過しました。半減期が短いヨウ素131は事故発生時の千分の1以下に減っていますから、現在計測されている放射線は半減期が長いセシウムやストロンチウムなどの原子炉生成物によるものと思われます。ストロンチウムはカルシウムに性質が似ているので、間違って飲み込んでしまった場合カルシウムの代わりに骨に吸着する心配があります。また、セシウムはカリウムと似ているので、口から体内に入るとなかなか排泄されず百日以上体内にとどまることが知られています。
 内部被曝が怖いのは、放射性物質が体内にとどまっている限り、その周辺の細胞を攻撃し続けるからです。外部被曝であれば、放射線量の低いところへ逃げればいいのですが、内部被曝はそういうわけにはいきません。
 したがって、警戒区域内に一時帰宅する場合は内部被曝をいかに防ぐかということに気を配るべきでしょう。
 一時帰宅の概要をみると、参加者は中継地点で必要な装備(防護服、手袋、マスクなど)を受け取った後でバスに乗り込んで居住地に向かい、用が済んだら中継地点に戻ってくることになっています。その間食事やトイレは禁止されており(水を飲めるのは行きのバスの車内だけ。帰りの車内では禁止)、防護服を脱ぐことができるのは中継地点でスクリーニングを受けてからということになっています。
 防護服を着ない人については、スクリーニングの結果、放射線が検出された場合には、それまで着ていた服を着替えてもらうことも必要です。できればそこでシャワーを浴びてもらうのが一番だと思いますが、そこまで用意されているかどうかはわかりません。

 ニュースによれば、参加者の中には「きょうは涼しいし、放射線の事を考えると防護服を着ていた方が安心です」と話していた人もいたとのことです。こういう声を聴くと、防護服=放射線から防御するための特別な服、と思っている人が相変わらず多いことがわかります。私も、今回の事故が起こるまでは、原発で使用されている防護服は放射線から身を守るためのものだと思っていたくらいです。
 このことからも、原子力にかんする情報知識というのは、大事なことが何も知らされていないということがわかるのです。
by T_am | 2011-06-26 23:24 | その他