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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

地下式原発は安全か?

 5月31日、地下式原子力発電所政策推進議員連盟(会長 平沼赳夫)が発足しました。太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電方式が主力になるとは思えず、主要な電力は原子力で賄う必要があるとのことで、地下に原発をつくることは安全性の面から意義があるのだそうです。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201105/2011053100809

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110531/stt11053117580006-n1.htm

 地下式原発は以前から検討されていたようですが、今日まで実現しなかったのは建設費が高くなるからでしょう。地下に大きな空洞をつくるのですから当然ですよね。ところが、福島第一原発の事故により、にわかに注目されるようになったわけです。
 そこで、地下式原発とはどのようなものか、すこし調べてみました。

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-02-01-06


(地下式原発の概念図)

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 概念図を見る限り、完全地下式なら平沼会長がいうように、放射性物質が外部に飛散することはなさそうですが、本当にそうなのでしょうか?
 福島第一原発では水素爆発によって1号機2号機4号機の原子炉建屋の上半分が吹き飛んでしまいました。そのため大量の放射性物質が空気中に放出されることになったわけですから、地下深くに原発の施設をつくれば万一の事故が起こっても放射性物質が飛散することだけは防ぐことができるように思われます。

 でも、それで本当にいいのでしょうか?

 以前にもこのブログで申し上げましたが、見方を変えれば、原子炉建屋が吹き飛んだおかげで爆発の衝撃波が上に逃げたために、原子炉(格納容器と圧力容器)が破壊されるのだけは免れました。もしも原子炉建屋がもっと頑丈につくられていたら、爆発の衝撃波は原子炉そのものを破壊していたかもしれません。そういうことが起こらないように、原子炉建屋の強度は上に行くほど脆く設計されているのです。仮に、原子炉が完全に破壊されてしまえば、周囲には誰も立ち入ることができなくなりますから、その先何が起ころうとも手をこまねいてみている以外にありません。そちらの方がよほど被害が大きくなる可能性が高いといえます。
 地下式原発というのは、原子炉建屋を今よりももっと強固にするのと意味は同じです。すなわち、万一水素爆発や素蒸気爆発が起こったときにはその衝撃波を逃がすことができないということですから、原子炉は完全に破壊されてしまうことになります。
 原発が地下深いところにあって、深刻な事故が起こっても絶対に放射性物質が外部に漏れ出ることはないと断言できればいいのでしょうが、議員連盟の平沼赳夫会長でさえも「安全性の面から意義がある」といういい方しかしていません。絶対安全ですとは断言していないことに注意すべきです。(そもそも、「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」という名称自体がなんだか悪の秘密結社みたいで、胡散臭いと私には思われるのですが・・・)

 地下式原発といっても、地下深くに完全に密閉されているわけではありません。少なくとも、冷却水を循環させる経路と排気塔(換気塔)、さらには燃料や物資の搬入経路も設けなければなりません。原発内部で事故が起こったときは、これらの経路を伝わって必ず外部に放射性物質が漏れ出すことになるはずであり、特に排気系統は重要となります。

 今回の事故で、東電がなぜベントにこだわったのかといえば、内部に溜まった水素や水蒸気を逃がさなければ最悪の場合爆発が起こるからです。地下に原発があれば多少の爆発が起きても安全だと思うかもしれませんが(平沼会長はそんなことは一言もいっていません)、考えてみてください、火山の爆発だって水蒸気爆発の一種なのですよ。
 要は、爆発のエネルギーと、それを抑え込もうとする土の圧力とどちらが強いかというだけのことです。爆発のエネルギー=発生する水蒸気の量は原発の内部にどれだけの水が存在するかによって決まりますから、地下式原発の出力が大きくなればなるほど、万一の場合の爆発エネルギーは大きくなります。それを抑え込むには、地下深く穴を掘って原発の蓋となる土を分厚いものにしなければなりません。

 けれども、地下式原発の目的が原発に蓋をすることであるならば、何も地下深く穴を掘る必要はないのであって、地上に原発をつくってそれをコンクリートの窯で覆ってしまっても同じ効果があるはずです。もしくは、原子炉建屋の強度を今よりもはるかに強固なものにしてもいいわけです。地下に巨大な空洞を掘るよりも、そちらの方がはるかに低コストで建設できると思うのですが、そういう発想でつくられた原発はどこにもありません。

 なぜなのでしょうか?

 私のような素人でも考えつく理由は、「そのような発想でシステムを設計することは本末転倒であるから」というものです。普通に考えれば、もっとも壊れたら困るところの強度を最高にしておくということになります。しかし、地下式原発という考え方は、最も壊れては困るところの補強には手をつけずに外殻の強度を高めることに夢中になっているというものです。走行中にエンジンが爆発する事故が発生した自動車メーカーがあったとして、そのメーカーの対策が「従来よりもボディを強化しました。だから外部に迷惑をかけることはありません。」というものだったら、あなた、そのメーカーの自動車を買おうという気になりますか?
 「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」という悪の秘密結社を連想させる名称の組織に属す政治家たちが主張しているのはそれと同じことのように私には思えます。その主張は問題のすり替えであって、原発が絶対に必要だというのなら、絶対に事故を起こさない原発をつくるというのが筋でしょう。
 過去に軽微な原発の事故はしょっちゅう起こってきました。また、東電の隠蔽体質というのも、今回初めて指摘されたわけではありません。「議員連盟」に名を連ねている政治家の中には、過去にそういう事態が起こったときに権力の中枢にいた人が多いのです。責任を負う者として、当時適切な手を打とうとしなかった人たちが、今になって地下式原発などという論点のずれた主張をするのは、何かやむにやまれぬ事情があるのかもしれませんね。

 参考までに、地下式原子力発電所政策推進議員連盟の主要メンバーを掲載しておきます。(Wikipediaからの引用です。)

会長
平沼赳夫(たちあがれ日本)

顧問
谷垣禎一(自民党)
安倍晋三(自民党)
山本有二(自民党)
森喜朗(自民党)
鳩山由紀夫(民主党)
渡部恒三(民主党)
羽田孜(民主党)
石井一(民主党)
亀井静香(国民新党)

事務局長
山本拓(自民党)
by T_am | 2011-06-25 23:18 | その他