村上春樹のスピーチ(テキスト)を読んで
「村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上)」
http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040017000c.html
また、テレビ朝日のサイトではスピーチの模様が動画で配信されています。
村上春樹氏「原発批判」演説ノーカット1/4
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210610054.html
影響力の大きい割にメディアに露出することがあまりない人だけに、こういう本人の考えを直に読むことができるというのは貴重な機会であると思います。毎日新聞のこのサイトには大勢の人がアクセスしており、ツイッターやフェイスブックを通じて、それぞれ自分の意見を披露しているようです。賛成の声もあれば批判する声もあるようで、これだけ大勢の人が発言しているのだから当然だと思いますし、お互いに意見を述べ合うというのはとても大事なことだと思います。
マスコミの取り上げ方は、村上春樹が原発を批判したというところに焦点をあてていますが、それはこのスピーチの中の一部分に過ぎません。むしろ「便宜や効率」といったものが核と結びついてこの災厄を引き起こしたといっているのであって、そのことに腹を立てると同時に、その力を引き出し、その力の行使を防げなっかたという点で自分自身も加害者であったことを忘れてはならないということの方に目を向けるべきでしょう。
私には、このスピーチの向こう側に村上春樹がこれまでに書いてきた小説の主人公たちがいるかのように感じられました。つまり、作者の信条が一貫しており、それがこれまで書いてきた小説にも反映されていたということです。今更ながら、そのことに気づいたのですから、なんとも鈍い読者だなと思わないわけにはいきません。
このスピーチは、最初原稿が書かれ、それがテキストとして配布されたようです。(実際の村上春樹さんのスピーチを聴くと、細かい部分で省略がされていることに気づきます。)小説と同じように、後世に残したいスピーチであると思います。こういう人が同じ時代にいるということは幸福であるとも思いました。
付記
村上春樹がスピーチの中で「脅し」と指摘したその日、関西電力も節電を呼びかける発表を行いました。