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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

原発事故報告書をみて唖然としたこと

 「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所の事故について-」というものものしい文書が公表されました。今朝の新聞・ニュースではその概要が伝えられています。
 どんなことが書かれてあるのか興味があったので、総理官邸のホームページからダウンロードしてみました。何が書かれてあるのかは、以下に目次を引用しておきますので、それでご推察ください。

(目次)
1.はじめに
2.事故前の我が国の原子力安全規制等の仕組み
3.東北地方太平洋沖地震とそれによる津波の被害
4.福島原子力発電所等の事故の発生と進展
5.原子力災害への対応
6.放射性物質の環境への放出
7.放射線被ばくの状況
8.国際社会との協力
9.事故に関するコミュニケーション
10.今後の事故収束への取組み
11.その他の原子力発電所における対応
12.現在までに得られた事故の教訓
13.むすび


 じっくりと読んでいくといくらでもアラが見つかる文書ですが、まだ全部読んでいないので、とりあえずここでは3つだけ指摘しておきます。

1.原発事故が周辺の住民はもとより近隣の市町村、都道府県さらには海洋も含めた環境にどのような影響を与えているかについてまったく書かれていないこと。事故によってどういう被害が発生しているのか、少なくとも現在判明していることを記録しておかないと事故の重大さが認識されないと思います。今のところ放射線障害などの健康被害は報告されていませんが、原発事故による被害者がどれだけ膨らんでいるのか政府は関心がないのかもしれませんね。あいかわらず都合の悪い事実は伏せておくという姿勢が見え隠れする報告内容となっています。

2.政府や事業者(この場合は東京電力)発表の中で、後になって公表されたものがあったこと、および「ただちに健康に影響を及ぼすものではありません」などと根拠の曖昧な気休め発表が行われ、国民の間に不信感を与えたことなども書かれていません。そういうことも書いておかないと、万一同じような事故が再び発生した場合の教訓とすることができません。IAEA閣僚会議向けの報告書ということは、国際社会に対する事故の報告になるわけですから、今回の事故に関する一切の情報は人類が共有すべきです。この報告書はかなりのページ数があって、作成するの大変な手間と時間を要したのだろうと想像されるのですが、そういう視点で報告書を作成しないと、せっかくつくったのに何の役にも立たないものになってしまいます。

3.下記の通り、原子炉本体を守るためならば、放射性物質が外部に放出されても構わないとはっきり断言していること。


「今後は、格納容器ベントシステムの操作性の向上や独立性の確保、放射性物質除去機能の強化などにより、格納容器ベントシステムを強化する。」(添付資料ⅩⅡ-6)

「シビアアクシデント時に機能する原子炉建屋での可燃性ガス濃度制御系の設置、水素を外に逃すための設備の整備等の水素爆発防止対策を強化する。」(添付資料添付資料ⅩⅡ-5)


 ベントというのは、格納容器の内部の圧力を下げる(そうしないと水蒸気爆発を起こす恐れがあるから)ために、水蒸気を外部に逃がすというものです。当然のことながらこの水蒸気は放射性物質に汚染されていますから、それを外部に逃がすということは周辺の環境に放射性物質を飛散させることを意味します。
 水素を外に逃がすというのも同様です。圧力容器内で発生した水素ガスが原子炉建屋内に漏れだした場合、いっしょに放射性物質も混じっていることになります。フィルターを設けて放射性は遺物を除去してから水素を逃がすというかもしれませんが、どうでしょうか? フィルターを細かくすれば水素を逃がす効率は悪くなりますし、逆にフィルターを粗くすれば水素といっしょに放射性物質が外部に飛散することになります。
 これは、今までいわれてきた原発の事故対策の基本指針である「止める」「冷やす」「閉じ込める」のうち「閉じ込める」を今後は放棄するといっているのと同じです。このことは、国民や環境よりも原子炉を守る方を優先させるといっているのに等しいにもかかわらず、そういう極めて重大なことを原子力災害対策本部という一組織が軽々に決めて公表するというのはおかしいと思いませんか?
 被災者の救援のためには政治的な空白期間をつくるべきではないとの思いから、この時期に総理大臣を交代させることには反対ですが、それにしてもこれはひどいと思います。この報告書の責任者は管総理になるはずです。にもかかわらず、こういう報告書に対し承認を与えるというのは総理としては失格であると申し上げざるを得ません。今すぐでなくてもいいので、次に総理を選ぶときはもっとまともな人を選んでほしいと思います。


付記
 同じく官邸のサイトには、「IAEA調査団暫定的要旨」(2011年06月01日、仮訳)も掲載されています。そのうちの一部をご紹介しておきます。この調査団はいったい何を見てきたのだろうと不思議に思いました。

「避難を含め,公衆を保護するための日本政府の長期的な対応は見事であり,非常に良く組織されている。公衆及び作業員の被ばくに関する適切且つ時宜を得たフォローアップ計画及び健康モニタリングは有益であろう。」

by T_am | 2011-06-08 11:58 | その他