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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

安さの理由(わけ)

 富山・福井・神奈川で大量の食中毒患者を出した事件で、当事者である焼肉店、肉の卸商とも警察の捜査に対し、自分には落ち度がないかのような発供述をしているとのことです。また、生肉を調理する際の基準に強制力がないことも指摘されているようです。
 今回は死者4人、中毒患者百人という稀にみる大事件に発展しているので、厚生労働省は生肉の調理基準に罰則を設けることになると思われますが、それで今後食品をめぐる安全が担保されるのかというと、まだまだ見落とされている部分が多いのではないかと思います。
 福島原発の事故で、この国の政府は都合の悪いことは公表したがらないということがはっきりしました。真面目に職務に取り組んでいる公務員の方には申し訳ないのですが、政府のいうことはあまり信用できません。そうなると、自分と家族の安全は自分たちで守らなければならないと思うのです。
 そこで今回は、食べ物が安いとはどういうことなのかについて考えてみることにします。
 まず、一般論で申し上げると、商品が安いのにはちゃんと理由があります。
商品の売価=原価+粗利益高ですから、ものを安く売るには、原価を下げるかあるいは粗利益高を削るかのどちらかしかありません。
 粗利益高というのは商品を売ったときの儲けであり、小売店や飲食店の経費と利益はここから出されます。特売で普段売っているよりも安い値段がついている場合、小売店が自らの粗利益高を削っている(もちろん仕入先にも協力を要請しているはずです)と考えることができますが、このようなやり方はあくまでも一時的なものであり、長続きするものではありません。
 家電量販店の安売りは、粗利益高=経費という捨て身の販売方法をとっているからです。それで会社が儲かる理由は、メーカーからのリベートがあるから。すなわり、リベート=会社の利益というわけです。したがってたくさん売ればそれだけリベートが増えるわけですから、積極的に出店することで市場占拠率を高めるという戦略をとっているわけです。

 粗利を削ることができなければ原価を下げなければ、価格競争に勝つことはできません。そこでどうすれば原価を下げることができるかを各社とも考えるようになります。
 
 これも一般論ですが、原価や経費を下げるには「替えること」または「やめること」の二通りの手段があります。
 「替える」という手段のわかりやすい例が、たとえば中国のような人件費の安い国で生産する(工場を替える)というものです。ほかにも「素材を替える」、「製造方法を替える」、「正社員からパート・アルバイト・派遣社員に替える」などの方法があります。
 「素材を替える」という事例では、スーパーの精肉売り場でもはや定番になった「サイコロステーキ」があります。これは成型肉を使った製品であることは既にご存知の通りです。成型肉というのは細かいくず肉や内臓肉を軟化剤で軟らかくしたうえで結着剤を使って形を整えたものです。(ほかにも赤身の牛肉に牛脂を加え霜降り肉のようにするインジェクション加工の肉も含まれます。)肉のブロックをサイコロ状にカットしたものに比べるとはるかに安くつくることができます。その反面、肉の内側にまで細菌が混入する可能性が否定できないので、食べるときは中までよく火を通さなければなりません。
 
 二番目の「やめること」の事例としては、今はあるかどうか知りませんが、昔「踵のない靴下」というのがありました。また、今回の食中毒事件では、細菌がつきやすい肉の表面を削ぎ落とす「トリミング」という工程を「やめていた」ことが明らかになっています。簡単に経費をカットすることができるので、「本来やるべきことをしないでおく」という事例は結構あるものと思われます。

 ここで述べた「替えること」と「やめること」は流通のあらゆる段階で行われているということを覚えておいた方がいいと思います。企業は利潤を追求するのですから、それは仕方のないことなのですが、問題は、小売店や卸、卸よりも工場というふうに消費者から遠くなればなるほどそこで何が行われているかわからなくなってしまうところにあります。今回の食中毒事件はそういうことの積み重ねによって起こった事件であると私は考えています。
 このように、流通の各段階で何が行われているか消費者が知りようもない以上、法外に安い価格で恒常的に売られているものについては、それなりの理由があると考えた方がよさそうです。通常であれば780円するユッケが280円で売られているのであれば、売価を引き下げるために「何か」が行われているのではないかと疑ってかかることが、結局は自分を守ることにつながるのではないでしょうか。
 
 そういえば、企業がその商品を抱えていてもしかたないと判断したときは、捨て値で販売することがあります。食品スーパーで夕方になると2割引、3割引、あるいは半額というシールを貼るというのがそうですし、衣料品の場合は季節の終わり頃になると見切りが発生します。今まで高い値段で売っていたものが突然安くなるというのには、このように在庫を処分したいという思惑が企業の側にあることが想像されます。こういう商品は一般にお買い得であると思われていますが、二重価格を多用する小売店もあります(衣料品店に多い)から値札を鵜呑みにするわけにはいきません。

 因循姑息と思われるかもしれませんが「安物買いの銭失い」という諺が示すように、安いからといって決して飛びつかないこと。安く売られているものについては、それがなぜ安いのか説明のつく理由を見つけ(店員に尋ねるという方法もあります)、それでもよいと思えば買うというのが間違いのないように思います。
by T_am | 2011-05-11 23:38 | その他