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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

目的の明示(2)

 前回の続きです。
 東電が発表した「事故収束」のための工程表には周辺地域の住民という視点が欠落していることを申し上げました。しょせん企業とはそういうものだといえばそれまでですが、それならば政府が福島県民の生活再建という視点で工程表を作成すべきでしょう。当然、東電の工程表はその中に組み込まれることになります。
 ここで福島県民と書いたのは、福島県民と福島県産の農畜産物に対する無知による差別が既に始まっているからです。避難者が家に戻るということも大事ですが、そのような差別も解消し、元の生活に戻れるようにするというのが「事故収束」の目的でしょう。

付記
 日本を訪れる外国人観光客が激減していることや海外における日本食レストランの不振などが伝えられています。アメリカでは日本製自動車に対する放射線検査を実施すべきだという声もあるそうです。その背景には、日本が放射性物質をまき散らすテロ国家だと思われつつあるというところがあり、福島原発の事故はもはや日本全体の問題になりつつあります。
 私たちからすれば福島県の浜通りという一地域で起きた事故に過ぎないのに、海外からみれば日本全体になるのはなぜなのかについては、既に指摘されているように情報の公表の不手際が原因なのですが、それについては後で述べます。

 このように、福島原発の事故は東電という一企業の問題ではなく、福島県ひいては日本全体の問題となっているのですから、「事故収束」の工程表を東電だけが作成すればいいというものではありません。本来ならば、東電の工程表が発表された時点で、間髪入れず政府によるもっと大局的な視野に立った工程表が発表されていれば、また違った受け止め方がされていたと思います。
 済んだことはしかたないにしても、今からでもいいので政府は工程表を作成して世界に向けて発表すべきです。

 事故の発生以来、政府・東電の発表を見ていると「想定外の津波が起こったのだから、今回の事故は俺のせいじゃねーよ。」という気持ちが根底にあることがわかるので、実に不愉快になります。原子力安全・保安院という役所と原子力安全委員会という組織がまるで役に立っていないのは、この人たちに使命感というものが欠落しているからだといってよいでしょう。
 使命感がないから自分たちの役割について突き詰めて考えようとしないのです。(こういうタイプは官僚だけでなく民間企業にもたくさんいるということを忘れない方がいいと思います。言い忘れましたが、政治家にも多いと思います。)
 だから、震災後の買い溜め騒動の時に「冷静に行動してください」という念仏のようなことしか言えないのであって、国民から「実行力がない」とか「指導力がない」とか思われることになるのです。それも普段何も考えていないからであり、自業自得といえばそれまでなのですが、そういう人たちに大きな権限を与えてしまった国民がそのツケを支払うことになるのです。

 阪神淡路大震災以来、日本は何度も大きな地震に見舞われてきました。今回の東日本大震災では道路や橋の復旧(応急処置も含む)、また仮設住宅の着工など、過去の教訓が活かされていると評価すべき点もありますが、そうでない部分も多々見られます。通達という名前の文書をFAXで送ればそれで責任を果たしたと勘違いしている官庁もあり、過去の地震から何も学習していないのではないかと思うようなところもあります。

 震災に対しては概ね次の3つのステップで何をすべきか(つまり目的)が異なります。

1)被災者の救助と犠牲者の捜索
2)避難場所の環境確保と支援物資の供給
3)被災者の生活再建

 今回の震災で、全国各地から自衛隊、警察官、消防士、医療チームが派遣されています。また、ボランティアの人たちも増えて来ました。被災地で彼らの姿を見かけると頼もしく思いますし、声には出しませんが「あなたたちは日本の誇りだ」とも思います。それは、彼らが自分たちの作業の目的を明確に自覚しているからです。
 しかしながら、偉くなればなるほど、自分の仕事の目的が何かという自覚のない人が増えていくというのは不思議なことです。
 人間は、自分の仕事の目的は何かということをはっきり自覚し、是が非でもそれをやり遂げるのだという使命感を持っていれば、(たとえ新入社員であっても)自然と敬意を払われるものです。逆にそれらが欠落していると、どんなに偉い人であっても尊敬されることはありません。国民というのは、そういうところは敏感に見抜く目を持っているといえます。
 政治家や官僚の皆さんには、自分たちは一生懸命仕事をしているのになぜ敬意を払ってもらえないのだろう? と真剣に考えてみることをお勧めします。
by T_am | 2011-04-21 01:22 | その他