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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

原発だけが危険なのではない(放射性廃棄物という厄介な代物)

 福島第一原発(1号機から4号機まで)の事故の復旧は、損傷が広範囲にわたっていることから、数ヶ月単位の時間を必要とするようです。現状は冷却するための水を注水するという作業が功を奏しているようですから、空中への放射性物質の飛散は以前よりも減少しているようです。その代わり、放射性物質に汚染された水が海に流れ込んでいることが確認されていますから、復旧が終わるまでの間、放射線量のモニタリングが欠かせない状態が続くと思われます。

 今回の事故が起きた理由は冷却水循環系統の破損(電源の損傷、ポンプの損壊、配管の断裂等々)にあります。
 抽象的ないい方になりますが、システムというのは常に「それを破壊しようとする力」の脅威にさらされているといえます。システムがその力に抗うことができている間は事故が起こることはありませんが、「それを破壊しようとする力」の方が強くなったときに、システムの最も脆弱な部分から崩壊が始まります。今回の地震は原子炉の施設内の配管を随所で断裂させ、地震に続いて襲ってきた津波は電源と冷却水を送るポンプを破壊しました。おそらく現在設置されている原子力発電所の設計はどこも似たり寄ったりだと思われるので、今後同じような天災に見舞われたときに、同じ箇所が弱点として突かれることになるのだと思います。
 したがって、電力会社が原子力発電所を今後も稼働させるつもりであるならば、これらの箇所についての点検を実施し、同様の災害に対して十分対抗できるようになっているかを検証する必要があるといえます。もしもシステムに不備が発見された場合、それらが損傷してもバックアップできる仕組みを今のうちに構築しておく必要があると思います。費用と手間と時間のかかる作業ですが、原子力発電に対する国民の不信感を払拭するためには不可欠のプロセスであると関係者は肝に銘じていただきたいものです。

 
 原子力発電に伴う脅威というのは、核燃料と、その核分裂によって生成された放射性物質が放出する放射線にあります。燃料棒を冷却しなければならないのは、そうしなければ燃料棒が高温となり、最悪の場合溶け出してしまうことによって、放射線が外部に漏れ出すことになるからです。そのために大勢の人が苦労(という言葉で片付けるのは憚られるのですが・・・)しているわけです。

 放射性物質の厄介なところは、それが存在する限り放射線を出し続けるところにあります。唯一の救いは、放射性物質には半減期があって、一定の期間を過ぎると放出する放射線量が半分に減るということです。それでも半減期を過ぎたからといって、放射線がゼロになるわけではありませんから、実際にはその10倍程度の期間は注意をすることが必要です。

 今回福島第一原発4号機では、点検のため原子炉を停止し、燃料棒がプールの中に保管されていました。これも燃料棒が発する崩壊熱を冷ますための措置なのですが、原子炉の運転を停止しても燃料棒からは熱が発生し続けるということに注意する必要があります。このことは使用済み燃料についてもいえることです。原子炉で使用された核燃料は取り出され、熱を冷ますために施設内の貯蔵プールで3年~5年程度の時間保存されます。この貯蔵プールでも冷却水を循環する仕組みが必要であることはいうまでもありません。
 その後使用済み核燃料は再処理施設に送られ、燃料棒の中から再利用するためのウランとプルトニウムが取り出され、残りは高レベル放射性廃棄物として処理されることになります。
 プルトニウムは原爆の材料となる物質ですから大量に貯蔵することは好ましくありません。そこで日本ではプルトニウムを原子炉の燃料として用いるプルサーマル計画が進められているわけです(現在稼働中の原子炉は、玄海、高浜、伊方の3カ所。福島第一原発3号機でも使われていましたが、この地震により運転を停止しています)。ところが、日本の原発の歴史は事故隠しと不正(データの改竄)が度重なってきたために、原発に対する不信感を払拭することができないまま今日まで来てしまいました。プルサーマル計画もそのあおりを受けて当初計画よりもおよそ10年程度の遅れが生じているということです。このことは、その分だけプルトニウムが溜まっているということを意味しています。ただし、プルサーマルを実施したからといって、ウランから生成されるプルトニウムもあるので、プルトニウムを使い切ることができるわけではありません。原子力発電を続ける限り、原爆の材料にもなり半減期が非常に長いプルトニウムという放射性物質が生成され続けることに変わりはないのです。

 前置きが長くなりました。
 今回申し上げたいのは、原子力発電所から出る「ゴミ」の話しです。使用済み燃料は、高レベル放射性廃棄物として処理されることになります。それはガラスと混ぜ合わせて固形化されステンレス容器に封入したうえで、およそ三十年間熱を冷ますために貯蔵されます。このあたりの記述は「放射性廃棄物のページ」に詳しく掲載されています。

http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/hlw01.html

 この「一時的な」貯蔵施設では、高レベル放射性廃棄物を空冷する設備が設けられています。ということは、高レベル放射性廃棄物に対し三十年間冷却空気を送り続けなければならないということを意味します。『平成21年12月末までの原子力発電の運転により生じた使用済燃料から換算されるガラス固化体の本数は、約23,100本相当』となるそうであり、これは今後さらに増える(毎年30本ずつ)ことになります。高レベル放射性廃棄物をガラス固化したものが1本の収納菅に対し9本貯蔵できるそうであり、1本の収納菅が必要とするスペースは、写真で見る限り、およそ1㎡ですから、23,100本のガラス固化体を貯蔵するスペースは、単純計算すれば、23,100÷9≒2,566.7㎡(約776坪)となります。(実際に管理中のガラス固化体は平成21年末で1,664本とのことです。)
 危機管理という観点から、これらのガラス固化体を1カ所で貯蔵するよりも何カ所かに分けて貯蔵した方がいいに決まっていますが、実際はどうなのかわかりません(そこまで確認していないのです。すいません。)
 
 三十年かけて冷却されたガラス固化体は、地下三百メートルのところに改めて貯蔵されることになっています。というのは、高レベル放射性廃棄物が冷却されたとはいえ、相変わらず放射線を出していることは間違いないのですから、外部に漏れないようにしなければならないからです。
 そのために、宇宙に運ぶ(これは技術的コスト的に現在の水準では不可能)、海洋に投棄する(ロシアがソ連時代から日本海に投棄していたことが発覚して国際問題になり、現在は禁止されています)、地中深く埋設する(消去法により、これが最も実現可能性が高い)などがあります。
 ただし、地下三百メートルに巨大な貯蔵施設を建設するということは容易ではありませんし、そこで保管する期間はおよそ数千年とも数万年ともいわれています。そもそも、人類がつくった建造物で数千年の間持ちこたえたものがどれだけあるのか? ということを考えるとはたして大丈夫なのだろうかという疑問をぬぐい去ることができません。また、そのような施設は地震の影響を受けないようにつくられなければなりませんが、数千年から数万年の期間地震による損壊はないと担保できるだけの知見と技術を人類は持ち合わせていないといってもよいと思います。
 このような問題点もあり、冷却後の高レベル放射性廃棄物の地層保管の候補地のめどすらも立っていないというのが現状です。(それでも毎年30本の高レベル放射性廃棄物のガラス固化体が生産されているというのが現状であり、さらに今後原発を増設しようという計画もあるのですから、これはもはや無計画というか何も考えていないといわれてもしかたないと思います。)

 原発から出る2番目のゴミは「低レベル放射性廃棄物」と呼ばれます。核分裂生成物を主成分とする「高レベル放射性廃棄物」(すなわち放射性物質の塊)とは異なるということで、区別して「低レベル放射性廃棄物」と呼ばれます。
 「低レベル放射性廃棄物」は発電所で発生するものと、再処理施設で発生するもの、さらにウラン燃料を濃縮する施設で発生するものがあります。その詳細は次のサイトに掲載されています。

http://www.enecho.meti.go.jp/rw/gaiyo/gaiyo01.html


 今回の福島第一原発の事故処理のために用いられている消耗品(作業員の防護服、施設内の除染に用いた資材など)もここに含まれます。なお、放射性物質に汚染された水もこれに含まれることになります(その辺の海に捨ててよいというものではないからです)。
 ちなみに、これらの低レベル放射性廃棄物がどれだけの量となっているかというと、先ほどご紹介したサイトによれば次のとおりです(数字はいずれも平成21年3月末現在のもの)。

・発電所由来のもの    200リットルドラム缶約60万本
・再処理施設由来のもの  200リットルドラム缶約14.5万本
・燃料濃縮施設由来のもの 200リットルドラム缶約10.4万本

 これらは青森県六ヶ所村の再処理施設内にある低レベル放射性廃棄物埋設センターに貯蔵されています。
 既に申し上げた放射性廃棄物の半減期を考えると、半減期の長い物質が取り除かれているとはいえ、セシウム(半減期約30.1年)やストロンチウム(半減期38.8年)を考慮すると最低でも300年間は貯蔵しておく必要があると考えられます。ドラム缶といえども300年間の間には腐食もするでしょうし、そうなれば放射性物質の周囲への拡散も心配されます。また、コンクリートで固めたとしても、300年間の間には劣化もすれば亀裂だって入ることは容易に想像することができます。
 なお、六ヶ所村の再処理施設の本格稼働は2012年10月の予定とのことですが、実はこれまでに18回延期されています。それというのもトラブルが相次いでいるからということであり、核燃料を扱うことが技術的にいかに難しいかということをあらわしています。

 六ヶ所村の再処理施設は放射線の管理区域となっているはずですから、そこで働く作業員には年間で被曝しても構わない放射線量(すごいいい方ですね。われながら書いていて呆れてしまいますが、基準値という言葉の意味は要するにそういうことです。)の上限が決められています。日本の基準は現在100ミリシーベルト/年ですが、国際基準は20ミリシーベルト/年ですから、5倍もの開きがあります。それでも健康に影響を及ぼすものではないというのが国の説明なのだそうですから、それならば資源エネルギー庁と原子力安全・保安院はここに引っ越してきたらいいのに、と思います。交通が不便であるというのであれば、専用空港をつくればいいのであって、地域の振興にもなります。通信技術がこれだけ発達している今日なのですから、東京にいないと業務ができないというはずがないのです。


 原子力を利用するということは発電所だけに目を向ければいいというものではありません。それによって発生する放射性廃棄物は焼却することができないだけに、放射線が外部に漏れないようにしたうえで、時間が経つのをひたすら待つしかありません。そのための手間とコストはきちんと計算されていないと思います。また、原発を廃炉にするといっても、それも50年程度のスパンで解体処理をしていかなければなりません。
 原子力発電を続ければ、それだけ放射性廃棄物が増えていくということになりますから、後世の負担はそれだけ大きなものとなります。そうかといって、原発を全部廃止すれば、それを処理する負担を後世に押しつける形になります。これは、自分が使ったわけでもない親の借金を相続するようなものですから、負担させれられる側にすればたまったものではありません。
 どちらを選んでもあまりいいことはなさそうですが、これらはあくまでも現在の技術水準を前提とした話しです。もしも、将来、たとえば放射性物質を強制的に崩壊させる技術が確立されたならば、半減期問題はクリアされ、放射性廃棄物の保管年数は劇的に短縮されることになります。また、作業員のための防護服として宇宙服なみの気密性を備えたものが安価で製造できるようになれば、現在の、「防護服」という名前の雨合羽を着込んで作業にあたらなけらばならない危険性も解消されます。

 前回申し上げたことも含めて考えると、現在の技術水準では原子力を制御するのは大変難しいという結論とならざるをえません。ただし、将来の技術革新によっては制御可能となるかもしれません。今度の事故によって、原発を今後どうするのかという議論が登場することと思います。その際の読者の判断の一助になれば幸いに思います。
by T_am | 2011-04-03 23:44 | その他