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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

福島原発の現在と未来、そして危機管理

 今回ここに書くことは推測に過ぎません。断片的に発表されている事実を組み合わせ、欠けている部分を推測で補うとこうなったというものです。こういうときに推測でものをいうというのはよくないことなのですが、自分の考えを整理するという目的もあるので、この文章をお読みになる方はそのつもりでご覧いただきたいと思います。


・燃料棒はウラン燃料の崩壊熱により、そのままにしておくと高温となって燃料被覆菅の損傷が進む。
・燃料被覆菅の損傷が進行すると、燃料棒ないのウラン燃料が圧力容器内に落下し、それが一定量を超えると再臨界が起こる危険性が否定できない。
・燃料被覆菅の損傷を食い止めるためには燃料棒の温度を下げることを行わなければならない。しかし、電源がないために冷却水を循環させる装置を作動させることができない。
・したがって外部から水を大量に注入して燃料棒の温度を下げることを行わなければならない。これは冷却水を循環させる装置が機能を回復するまで続ける必要がある。
・原子炉から漏れ出した放射性物質が水蒸気に乗って空気中に飛散する状態が続いている。これらは風によって遠くまで運ばれ、地上に降ってきている。
・一方、圧力容器から高濃度で汚染された水が漏れている。漏れている経路は複数あるものと推測され、一部はタービン建屋内に溜まると同時に、他の一部は地下配管トンネル内に侵入している。
・放射性物質が外部に漏出する経路は主に2種類ある。一つは水蒸気によって放射性物質が空中に飛散することであり、もうひとつは原子炉から漏れている水に混じって外部に流れ出す経路である。
・これらの漏出は、原子炉に水を注入する作業が続く限り止まらない。したがって福島原発の周辺(20km~30km)への立ち入り禁止措置はその間解除されることはない。また、福島原発から離れた地域でも、食品の安全のための暫定基準を超える放射性物質が検出される状態が続くことになる。
・かといって、水を注入する作業を中断すれば燃料棒が高温となり、いあゆる「空だき」状態が続けば最悪の場合再臨界が起こる可能性がある。したがって、水の注入作業は原子炉内の温度を見ながら断続的に行われることになる。
・原子炉施設(建屋)内の放射線量は日増しに増えているので、復旧のための作業の障害となってきている。冷却水の循環装置の復旧が遅れれば、それだけ外部に漏出する放射性物質の量が増えていき、汚染が進行することにつながりかねない。


 以上が推測に基づく現在の福島原発が置かれている状況です。放射性物質を今まで以上に飛散させるとわかっていながら、水の注入をやめるわけにはいかないという深刻なジレンマに陥っているものと思われます。それによって施設内の放射線量も上昇しており、復旧作業の障害となっています。

 この事態を沈静化するためのプロセスとして推測されるのは次のとおりです。

1.冷却水の循環装置を復旧(配管の漏れの修繕も含む)させ、燃料棒の温度を下げる。
2.燃料棒を1本ずつ原子炉から抜き取り、全部を別な場所に移動させる。
3.高濃度に汚染された水をいったん集め、何かに吸収させてそのまま固めてしまう。
4.原子炉施設には放射性物質の残留物が高濃度で残っているので、コンクリートで施設ごと固めてしまう。(福島原発1~4号機の廃炉。跡地は立入禁止区域となる。)
5.空中に飛散した放射性物質を回収する手段はないので、時間の経過とともに放射線量が減少していくのを待つか、放射性物質が最終的に海に流れていくのを待つ以外に方法はない。これによって海がどれくらい汚染されるのかは不明である。

 問題はこれだけのプロセス(しかも難易度は相当高い)をクリアするのにどれだけの時間がかかるのかということです。幸いなことに、1のプロセスが完了すれば、放射性物質による周囲の汚染は一応ストップしますから、あとは施設内に存在している高濃度の放射性物質で海を汚染しないかとを考えなければなりません。そのためのプロセスが2~4になります。また、5については、要するに打つ手がないということですから、政府や東電も口を拭うものと予想されます。おそらく、出荷停止となった農作物の金銭補償をしてそれで終わりということになるような気がします。けれども、土壌や海の汚染がただちに解消されるわけではないということをきちんと国民に伝えて、理解してもらわなければなりません。今後測定される放射線量というのは、半減期が8日と短いヨウ素を除けばだいたい30年以上のものばかりなので、(半減期を経過したヨウ素の分だけ)いったん下がるものの、その後その状態がいつまでも続くことになるからです。それを国民に理解しておいてもらう必要があると思います。一番まずいのは、事故処理がこれで終わり、中途半端な安全宣言がなされる(政治家が好みそうなイベントです)ことです。しかし、土壌でも海でも放射性物質による汚染がゼロになるわけではありませんから、中途半端な安全宣言は国民の間に不信感を植え付けるだけになると思われます。もちろん、対策もいっしょに説明しなければらないことはいうまでもありません。


 今回のような現在進行中の巨大事故の場合、危機管理がそのときそのときで適切に行われているかどうかが被害状況を大きく左右することになります。
 この場合、事故処理の完了に向けてどのようなプロセスが必要となるのかを整理し、それぞれの段階で何が課題として発生するのかという予測と、あらかじめ推測される問題およびうまくいかなかった場合にどのような対策を講じなければならないかを洗い出しておく必要があります。
 危機管理においては「想定外の事故が起こりました」という弁解は通用しません。そういうことを言う人間がいれば誰であろうとただちに罷免されるべきです。これは、自分には責任がないという意味の言葉に過ぎず、問題の解決に何ら寄与しないからです。この期に及んで責任逃れをしようという輩は必要でないばかりか、かえって有害となります。(人ごとみたいな顔をして人前に出てくる監督官庁の役人も同様に有害無益です。)
 事故による国民の動揺、さらにはパニックを予防するためには、あらかじめ全体のプランをきちんと説明すること、要所要所で適切な情報開示をしていくことです。
 その際には、「ただちに健康に影響を与えるものではない」などと根拠のない気休めを言うと、国民はかえって「何か隠しているのではないか」と疑いをもつようになりますから、それが不安を煽ってパニックを起こす要因となります。したがって、正確な事実を伝えることとそれが意味するところを丁寧に説明していく(途中を省いてはいけません)意外にありません。
 そういう意味では、これまでの東電、政府、保安院による記者会見は全部落第です。なぜなら、彼らが伝える事実が断片的で何が起きているかよくわからないからパニックが起こるのであり、私のような専門家でもない人間が推測でこのような文章を書くことになるからです。
by T_am | 2011-03-29 22:46 | その他