ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

ふと疑問に思ったこと

 水道水で基準値を超える放射線が検出されたことで、浄水器で放射性物質が除去できるかという問い合わせが増えたそうです。市販の活性炭を使った浄水器ではあまり効果がないだろうということらしいのですが、逆浸透膜を使った浄水器ならばかなりの効果が期待できるとも聞きました。

 そこで、ふと疑問に思ったことがあります。

 仮に、放射性物質を100%除去できる浄水器があるとします。この浄水器を通せばどんなに放射性物質で汚染されたいる水でもきれいになります。その代わり、この浄水器の中には放射性物質が残ることになります(当たり前ですね)。
 ここで、どんどん汚染された水を通せば、浄水器の中にはそれだけ放射性物質が蓄積されていくことになります。となると、高性能な浄水器というのは放射性物質を濃縮するようなものではないのか? ということを考えてしまいました。

 といっても、これは言葉の遊びのようなものですからご安心ください。

 1kg(=1リットル)1000ベクレル(以下Bqと書きます)のヨウ素131で汚染された水があるとします。潔癖な人がいて、お風呂に使う水も浄水器を通したとすると、お風呂の1回分で約200リットルの水を使うとして、放射性物質の合計は20万Bqとなります。 1m離れたところにヨウ素131がある場合、被曝量は100万Bqで1日におよそ1.4マイクロシーベルト。これは通常1年間に浴びる放射線量(2.4ミリシーベルト)の約1700分の1に過ぎません。
 そうなると、放射性物質の除去が可能な浄水器を使うことは、水道水の放射性物質による汚染から身を守るという点で理にかなっているということになります。ただし、個人でこのような高性能な浄水器を持つのは家計を圧迫しますから、現実的ではありません。幸い、スーパーの店頭に設置されている浄水器はこのタイプだそうです(これはセイヤさんから教えてもらいました)から、これを利用するという手もあるでしょう。

 以下は浄水器とはまったく関係のない話です。

 ところで、放射性物質の塊である核燃料というのは実に厄介な代物です。ゴミは燃やせばなくなりますが、核燃料は使用済みとなっても別な放射性物質が生成されているので、燃やしてしまうということができません。そのうえ放射線と熱を出し続けるのですから、崩壊して他の安定した元素に変わっていく(そこで放射線は止まる)のを待つ以外に方法はないのです。
 それまでの間、周囲が汚染されないように核燃料を管理しなければなりません。そのために核燃料を1カ所に集めて集中的に管理するという手法がとられています。これは効果的ですが、その代わり手間と費用がかかります。そのうえ管理に失敗すれば周囲が汚染されるというリスクがあることが、今回の福島原発の事故で明らかになりました。

 このことからいえるのは、ウランを始めとする放射性物質というのは集めて濃度を高くすると周囲に悪影響を与えるので厳重に管理しなければならないが、リスクも高いということです。
 今回の福島原発の事故によって、原発は危険だから廃止すべきだという声が強まることと思います。ただし、それは原発に対する不安感・不信感という感情に根ざしているものですから、時間の経過とともに変化するはずです。
 本当に原発を廃止するとなると、私たちは相当の覚悟を迫られことになります。というのは、原子力に替わる大規模発電技術がまだ確立されていないからです。風力発電が可能なのは世界でも限られた地域に過ぎません。また、太陽光発電の発電量は太陽光パネルの面積に比例しますから、大規模な発電をしようと思えばそれだけの面積を確保しなければなりませんが、それは不可能です。したがって補助的な役割を担うことはできても主力にはなりません。さらに、風力発電も太陽光発電も発電量が安定しないという欠点があります。風が吹かなければ風車は回らず発電はできません。太陽光発電では曇れば発電量は落ちますし、夜になれば止まってしまいます。
 現在、日本の発電量のおよそ4割を原子力発電がまかなっているということですから、これを完全に廃止するとなると、電力不足に陥ることは避けられません。それはすなわち、かなり不便な生活を強いられるようになるということを意味しています。東京電力が実施している計画停電がどのような影響をもたらしているかを考えれば、そのことはすぐおわかりいただけると思います。そうなると、私たちは今のライフスタイル(いつでも好きなときに好きなだけ電気が使える生活)を放棄しなければならなくなると思います。
 したがって、ばりばり仕事をしたい人、夜更かしをしたい人、いつでも好きなときにテレビを見たいという人、パソコンやケータイを手放せないという人にとっては電力不足というのは受け入れがたいと思いますので、そうなると、現在の技術水準では原発を甘受する以外にないように思います。おそらく日本人の大部分がそういう人たちでしょうから、当分の間原発を廃止するということは不可能であるということになります。

 原発は怖いけれども(将来画期的な技術が開発されるまで)当分の間はつきあわざるを得ない。これが現在のところの実情です。

 そこで理性的な行動としては、原発の安全性を今よりも高めること、および万一事故が起こったときに被害を最小限に抑えるにはどうしたらいいかという対策を普段から練っておくことが考えられます。
 原発は絶対安全だと宣伝されてきました。日本人の多くはそれを信用していなかったかもしれませんが、本当に絶対安全なのかの検証や監視をしようとはしてきませんでした。絶対安全だと嘘を言ってきた人の方が圧倒的に悪いに決まっているのですが、嘘を真に受けて、私たちがそれ以上何も考えようとしない状態が続く限り、今後も同種の事故が起こる可能性は極めて高いといえます。
 電力会社にしても、事故を起こせばそれによって発生する損失と巨額な賠償責任を考えれば、より安全なものを目指した方がはるかに安上がりであるという計算ができるはずです。
 また、原発立地と隣接する自治体にはさまざまな補助金が支払われています。主なものは次のとおりです。

電源立地地域対策交付金(公共施設整備や住民の福祉向上が目的)
・原子力立地給付金(企業と家庭に対し直接補助金を支払う)
 
企業立地支援事業補助金(事業所を新設する企業に対する補助金)


 自治体に対する交付金の使途は国によって厳重に管理されているので、地元の自治体徳治の裁量で使い途を決めることはできません。これを改めて、交付金の何割かをいざというときの対策費として使用できるようにすべきです。原発立地と周辺の自治体の首長にはそれをしなければならない責任があるのですし、地方議会議員はそれがきちんと行われているかをチェックしなければなりません。また住民も議員や役所に対し、報告を要求すべきです。
 また、この機会に、企業や家庭では毎年もらう給付金の使い途を考えた方がいいように思います。臨時収入くらいに考えていると、今回のような事故が起こったときに何の備えもしていないということになるからです。
 私たちの社会が原発が必要であると判断するのであれば、その代償として最低限これだけのことはしなければなりません(その割に原子力立地給付金の支給額が年々下がっているのが気になります)。その費用は日本人が等しく負担するのが当然であり、現在の制度の原資は電気料金の中から支払われているのですが、それを知らない人も多いはずです。
 「知らないから考えない」ということはあります。あるいは「考えさせないために知らせない」ということもあるかもしれません。それでも、知らない方も知らせなかった方も、今回のような事故によって払わなければならない代償はあまりにも大きいのですから、「きちんと知らせていっしょに考える」という社会をつくった方が、長い目で見ると、全体の負担ははるかに少なくなるのではないかと思うのです。
by T_am | 2011-03-26 08:46 | その他