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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

福島原発周辺で放射線の測定値が上昇している理由

 文部科学省が公表を始めた「福島第一原子力発電所のモニタリング結果」をみると、原発の北西約60kmにある福島市での測定値も上昇していることがわかります。

3月20日 9時10分  5.0マイクロシーベルト/h
3月20日 17時30分  6.0マイクロシーベルト/h
3月21日 8時45分  4.5マイクロシーベルト/h
3月21日 13時38分  5.0マイクロシーベルト/h

(出典)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/20/1303727_2019.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/21/1303995_2116.pdf


 そこで今回は、なぜこのような高い数値が観測されるのかについて考えてみることにします。
 原子力発電所の周辺で放射線測定値が上昇するというのは、原子炉から放射性物質が漏れているということに他なりません。ここで問題とすべきは、放射性物質がどのような漏れ方をしているか? ということです。

 機動隊や消防による放水が行われるようになって数日が経ちます。なぜこんなことをしているかというと、原子炉の中の燃料棒の過熱を防ぐためと説明されています。燃料棒の温度が上昇を続けると燃料を包んでいる被覆菅が溶けて中に入っている燃料が圧力容器の中に落ちていきます。これが大量に発生すると再臨界が起こるおそれがあること、さらに圧力容器を溶かしたり、原子炉格納容器を破損させることにつながりかねません。そうなると今までとは比較にならない量の放射性物質が大気中にまき散らされることになってしまいます。
 そのためには原子炉内部にある燃料棒を冷やさなければならないということは今まで政府・マスコミがさんざん伝えてきたことです。
 原子炉の冷却水というのは密閉された菅の中を循環していますから、そこで放射性物質が外に漏れ出ることは、よほどのことがない限り、ありません。しかし、津波により非常用電源が使えなくなってしまい、冷却水を循環させることができなくなったことにより、燃料棒の温度は上昇を続けています。そのことで原子炉の圧力が上がり、そのままでは原子炉圧力容器が破損するおそれが出てきました。これに対し、東京電力がとった対策は弁を解放し内部の水蒸気を逃がしてやることで、圧力容器内の圧力を減少させることでした。この時点で放射性物質が外部に拡散することになります。
 次にとった対策は、皆様ご存知のように、原子炉の内部に海水を注入することでした。これは、冷却水が蒸発したために、燃料棒が空気中に露出してしまい、さらなる温度の上昇を招く危険性があったからです、しかしながら、実際には圧力容器の水位が下回るという事態に陥り、また、それまでは盲点であった使用済み核燃料を貯蔵しておくための、格納容器内のプールの水温も上昇しているということがわかったのです。
 そこで次の方策として、水をつぎ足すことで圧力容器の中の水位を上昇させるという方法がとられました。これは原子炉内部の閉鎖系で循環する水とは違い、外気に面した開放系に水を大量に投入することを意味します。
 ものを冷やすというのは、そのものが持っている熱を奪うことによって行われます。そのために水が使われる場合。水が蒸発することによって大量の熱を奪っていきます。さらに、この水は外気に面した開放系の中の水ですから、原子炉の中から漏れ出た放射性物質は、放水によって注ぎ込まれた水が蒸発するのといっしょに大気中にばらまかれることになります。政府と東京電力の判断は、周辺に放射性物質が飛散したとしてもメルトダウンによって原子炉が破壊されるよりはましだという決断をしたものです。ただし、そのことを正直に発表すると、放射性物質を飛散させるとは何事だと猛反発を受けるおそれがあるので、そのことは伏せておいて、燃料棒を冷やすということだけを強調しているのでしょう。そのため、これまで原子炉の周囲でこれだけの放射線が測定されたという発表が行われていましたが、いつの間にかそれがなくなってしまいました。放射線の測定をしていないはずがない(作業員は放射線を測定してから作業を終了することになっている)ので、公表する材料がないわけではありません。
 現在、放水作業と並行して外部から電源を供給する工事が行われています。電源が供給されれば(まだまだ紆余曲折があるかもしれませんが)冷却水を循環させることが可能になり、これ以上放射性物質を飛散させることなく燃料棒を冷ますことができるようになります。
 残る問題は、そういう状態に落ち着くまであと何日を要するかというということです。それまでの間、放射性物質の飛散は止まらないので、その日の風向きによっては特定の地域で高い放射線量が観測されることになります(どれくらい高いかについては、先ほどご紹介した文部科学省のリンクをご覧になってください)。
 その際にいえることは、現時点で高い値を観測している地点でも、これから先ずっと同じ傾向が続くとは限らないということです。既に申し上げたとおり、放射性物質はその日の風向きによって流れていく方向が変わっていきます。今日高い値を示したとしても、明日もそうなるとは限らないのです。その証拠に、文部科学省の発表資料をみると、原発からの距離は同じでも方向によって観測値がまるで異なっていることがわかります。つまり、放射性物質は円状に拡散していくのではなく、どちらかというと帯状に拡散していくのであり、その方向はその日の風向きによって決まるのです(風に流される煙突の煙をイメージしていただくとよいと思います)。

 自分が住んでいる地域が安全かどうかについては、文部科学省が全国の県庁所在地(一部例外あり)でのモニタリングデータを公表しています(文科省のトップページから辿ることができます)ので、その数値がどのように変化してるかを観察すればわかります。21日の観測データを見る限り他の都道府県で危険値を示しているところはありませんし、今後福島原発において破局的な事故が起こらない限り、各地の観測値が急上昇するということもないと思います。


付記
 何日か前に、東京電力では原子炉圧力容器の内部に海水を注入すると同時にホウ素を投入するという発表をしました。ホウ素は中性子を吸収する性質があるため、高温によって溶け落ちた燃料が容器の底に溜まり、再臨界(連鎖的核分裂の開始)を引き起こすという事態を回避するための予防的措置であったと解釈することができます。
2.今回高い値が測定された地域の農産物は、当分の間放射線検査が欠かせないと思います。放射性物質が附着した食品を口にすることは体内被曝の原因となります。また、これらの地域では水道水の汚染も懸念されますから、その場合自治体は給水車でよそから水を持って来なければならなくなるでしょう。
by T_am | 2011-03-22 00:52 | その他