バイオ燃料とCO2を結びつけるのはいかがなものか
CO2は人間のあらゆる活動によって排出されます。したがってCO2の排出量を問題にするのであれば、燃料を燃やす過程だけではなく、その前の工程も考慮しなければなりません。バイオ燃料にかかる工程というのは大きく分けると次の通りとなります。
1)原料となる植物を伐採し、工場まで運搬する工程
2)運搬されてきた植物を工場で燃料を製造する工程
3)製造された燃料をエンドユーザーのところまで運ぶ工程
4)エンドユーザーがバイオ燃料を使用する工程
こうしてみると、NHKの解説では4)の部分についてしか述べていないことがわかります。4)のところでバイオ燃料を用いても、1)~3)のところで化石燃料(ガソリンや軽油、あるいは重油・石炭など)を用いればCO2の排出量は増えることになります。 将来、1)から3)の工程までもバイオ燃料でまかなうことができるようになるとすれば、CO2の排出量はプラスマイナスゼロとなります。しかし、そのために原料となる植物(シンガポールの工場の場合はパーム椰子)の収穫量を増やさなければなりません。ここで2つの問題が発生します。
ひとつは、現在食糧や資料として使っている植物を燃料製造にまわすのですから、食糧や飼料の価格高騰に結びつくおそれがあること(これはNHKでも伝えていました)。二番目に栽培面積を増やすために森林を焼き払い整地する(それも燃料を必要とするのですから、燃料と森林のダブルCO2を排出します)などしなければならず、新たな環境破壊に結びつくおそれが高いことです。
金になるとわかれば森林を破棄払うことに躊躇しない。人間とはそういうものです。途上国の人々が森林を焼き払うことを、自動車を乗り回し冷暖房に囲まれた生活を送っている我々が非難することはできません。
また、地球全体でみれば、耕作可能な面積というのは実は限られているということもあります。耕作可能な限界面積以上の収穫は期待できないのです。その収穫を食糧と燃料に配分しなければならないのですから、バイオ燃料が現在の石油の代替えエネルギーになるとはとても思えないのです。
地球上の化石燃料は、いつになるかわかりませんが、いつか必ず取り尽くすときがやってきます。そのときに備えて代替えエネルギーを確保しておきたいというのならば理解できますが、CO2の排出削減という論理は矛盾しています。「CO2削減」というスローガンがビジネスモデル創出のための大義名分に使われているように私には思えてなりません。
NHKを始めとするマスコミもそれに荷担しています。
大義名分というのは、それを唱えている人も実は信じておらず建前でいっているだけに過ぎないという意味を含んでいます。そういう人たちの「嘘」を真に受けて、CO2削減に取り組まなければならないと考えている人たちもいます。
「ゴミの減量につながるのだからゴミ袋が有料化されるのはやむを得ない。」「廃家電品のリサイクル料金を負担するのはしかたない。」「まだ使えるテレビや冷蔵庫をリサイクルに出して、もっと電気代の安い製品に買い替えよう。エコポイントという補助金ももらえるのだから。」
エコポイントの財源は税金です。財源が不足しているのだから消費税の増税は避けられないという議論も出てきています。CO2削減という大義名分のツケを払うのは結局は消費者であり、庶民なのです。