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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

中東の革命をみていてわかったこと

 チュニジアのジャスミン革命を発端にした反政府デモはエジプト、イエメン、イラン、リビア、バーレーンにも飛び火しました。共通するのは、貧窮に苦しむ民衆と権力者の腐敗です。この2つは革命の土壌になりますが、それだけでは革命は起こりません。

 腐敗した権力と抑圧された民衆の怒りという対立構造はマスコミが好んで取り上げていりところです。それは的を射ているといえますが、革命というのはそれほど単純なものではありません。革命に参加する人は誰でもその人なりの思惑を持っているのですから、政権打倒という共通の目的の下に一時的に結集することはできても、それが実現したときには主導権争いが起こるのが常です。フランス革命、ロシア革命、中共革命、どれをとっても革命後の主導権争いは血なまぐさいものがありました。そういえば、日本でも明治維新後に佐賀の乱、萩の乱、神風連の乱が起こり、最後に西南戦争が起こりました。革命というのは巨大なエネルギーを伴うだけに、そのエネルギーを鎮めるには政権を打倒するだけでは足りないのかもしれません。

 群集心理を操作するコツは、フラストレーションが溜まる状態にしておき、タイミングを見計らって「これだ!」というものを示してやることです。つまり、エネルギーが充分溜まった状態を見計らって、そのエネルギーに指向性を与えてやることだといえます。それは必ずしも真実でなくてもいいのであって、人々が信じ込むだけのリアリティーがあればいいのです。
 ベルリンの壁崩壊のきっかけは、東ドイツ政府のスポークスマンによる「東ドイツ国民はベルリンの壁を含むすべての国境通過点から出国を認められることになった」という軽率な発表でした。また、昭和金融恐慌も「東京渡辺銀行がとうとう破綻いたしました」という大蔵大臣の誤発表(実際には、東京渡辺銀行の役員が「何らかの救済策を講じてもらわないと今日にでも休業に至りかねない」と大蔵省に陳情に来ただけ。それが大臣に誤って報告された)によるものでした。
 これらは意図して行ったものではありませんが、火薬庫に火のついたマッチを放り込むような結果をもたらしました。
 なんでこんなことを書いているのかというと、いずれ人々を煽動しようとする者が現れれるだろうと思うからです。冷静に見ていれば、そのやり口は共通していることがわかるということを申し上げているのです。

 タイやモルドバでは以前から反政府運動が行われています。今回チュニジアとエジプトでは大統領を追い出すことに成功しました。それは両国の国民にとって慶賀すべきことなのだろうと思います。しかし、自分たちで政権を倒した以上、その責任は自分たちが負わなければなりません。その意味で革命というのは新たな困難の始まりであるといってよいと思います。

 チュニジアに始まった反政府運動は中東のほぼ全域に拡大しています。いずれもフェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアの果たしている役割が大きいと伝えられています。ソーシャルメディアは従来は想像もできなかったほど速やかに情報を伝えるツールとして、その機能を遺憾なく発揮しています。そのため政府はネット情報の遮断を試みるのですが、かえってそれが民衆の反撥を招くという結果に終わっています。
 したがって、チュニジアやエジプトの成功事例をもって、これはソーシャルメディアやインターネットによる革命であると評価する人もいます。けれどもインターネットやソーシャルメディアというのはツールに過ぎません。壁新聞やビラ、新聞などよりも情報の伝達力ははるかに強いのは事実ですが、大事なのはそこにどのような情報を流すかということです。
 当分の間、反政府運動は世界の各地で起こり続けるものと思います。チュニジアやエジプトのように成功するところもあれば失敗に終わるところもあるでしょう。見方を変えれば、人類は今決して小さくはない代償を払って貴重な実験を行っていると理解することもできます。
 興味深いのは中国と北朝鮮の動向です。どちらも強力な情報統制を行っており、しかも国民に向かって発砲することを何とも思わない軍隊を抱えています。特に中国の場合、そう簡単に反政府運動が成功するとは思えないのです。
 超大国というのは例外なく他民族国家ですから、(ソ連が崩壊したように)分裂のリスクを絶えず抱えています。それを抑えつけるのは強力な軍隊の存在です。軍隊というのは金と食糧を浪費する組織であり、政治が軍をコントロールするには、充分な金と食糧を提供してやらなければなりません。それが途絶えるとコントロール不能となり、超大国は分裂状態に陥ります。
 したがって、中国では経済成長を維持し続けることが国を維持する絶対条件であることがわかります。ただし、経済成長というのは歪みを国の至る処にもたらすものです。日本の場合、公害問題、核家族化の進行によるセーフティ・ネットの崩壊、高齢化による医療費と年金の増大と財源の圧迫、教育の混乱、格差の固定化などの問題が顕在化しています。
 誰もが去年よりも豊かになっていると実感できる間は、その歪みが問題となることはありません。しかし、経済成長が止まったときにそれまで溜まり溜まった歪みが一気に露呈することになります。
 中国もいずれそういう局面を迎えるはずであり、そうなったときにあれだけの超大国が分裂することは火を見るよりも明らかであるといえます。
 もちろん中国の指導者たちが腕をこまねいているはずがありません。国民に向かって発砲することも厭わないのですから、利害が対立すれば隣国に遠慮することはないと考えるべきでしょう。
 小国は比較的わずかなエネルギーで瓦解しますが、超大国が崩壊するにはそれだけ大きなエネルギーが必要となります。それが溜まるまで時間を要しますが、エネルギーが大きいだけに国が崩壊した後の混乱期も長引くことになります。

 中国でも反政府デモを呼びかける動きがあり、政府は厳戒態勢を敷いているとのことです。それを見る限り中国で反政府デモが拡大する可能性は低いように思われます。

 ところで、日本に反政府デモが飛び火する心配はないのでしょうか? 幸か不幸か、日本では総理大臣の在任期間が1年持たないのが当たり前となっていますから、特にデモを起こさなくても政府の方で勝手に倒れてくれるようになっています。国民にとって、不満が解消することはない代わりに、拳を振り上げる相手がいつの間にかいなくなっているというのが今の日本の状態です。
 見方によっては、これはものすごく不幸な状態であるといえるかもしれません。
by T_am | 2011-02-21 23:52 | その他